101話 プロローグ 【挿絵あり】
本日2話目
次は間違いなく『黒の2』に来る。
あのボールの速度と盤のまわり方、俺の動体視力が完全に『黒の2』を予言している。
この直感は間違いなく当たる。
チップを2枚『黒の2』に置く。
いや…………もしかすると万が一だが、隣の『赤の21』『赤の25』にぶれる可能性もあるかもしれん。
念の為チップを2枚『赤』に置く。
…………おっと? 『赤の21』の隣は『黒の4』か……コレはもうひと押し念のために『赤の1』『黒の2』『黒の4』『赤の5』の島にも賭けておくか、さらに念の為チップを1枚『4目賭け』で置く。
ふふふ……これで絶対当たる。
完璧な布陣だ。最強だ。
予想通りに『黒の2』に落ちたら2×35倍と、1×8倍で78枚の勝ち、最悪ずれて赤に落ちても2×2で4枚の勝ち……5枚賭けてるから、1枚損になるのか…………じゃあ、赤に最後の切り札の1枚だな。
赤にもう1枚チップを加算し、合計3枚賭ける。
これで黒の2に落ちれば大勝、ちょっとずれて赤に落ちても負けは無い。
ふふふふ……我ながら抜け目のない完璧すぎる布陣。自分の才能が恐ろしいぜ。
「あら。黒髪のお兄さん。その賭け方だと随分自信がありそうね。」
「まぁな……この髪の色は幸運の色なもんでね。」
「へぇ、じゃあ私も黒に賭けちゃおうかしら。」
声をかけてきた冒険者風の女が黒に5枚のチップを賭ける。
へへっ、さっきから俺の髪をチラチラ見てた女がようやく声をかけてきやがった。
予想通りに黒に落ちれば……今日は楽しい夜になりそうだぜ。
「のーもあべっと。」
ディーラーが締め切りの合図らしい謎の言葉を放つ。
毎回思うが、どこの言葉なんだろうな。この「のーもあべっと」
っと、そんなことはどうでもいいっ!
この言葉が出たという事は、もうすぐ球が落ちるという事だ!
さぁ、頼むぜ幸運の色っ!
スピードが落ちはじめ、当初想像した通りの動きをしている。
いいぞ。そのままだ。
そのまま落ちろ。
その時、ボールは銀色のでっぱりに弾かれ、予想と違う方向へと動き出す。
「なっ!?」
ボールは『緑の0』に落ちて止まった。
「何が幸運の色だい。全然じゃないか。」
女が悪態をつきルーレットから去り、ブラックジャックへと向かっていく。
だがそんな事はもうどうでもいい。
切り札の一枚は最後の一枚だったのだ。
俺のチップが全部なくなった。
「ああぁ~~~~~~! マジかよぉッ! 有り金全部スッちまったーー!!」
これじゃあ、もう酒場に飲みにも行けない。
慎ましく生活して、また給金がもらえる日、遠い給料日を待たなくてはいけない。
……実は今日が給料日だったのだ。
給料として出た金貨4枚。 今日だけで、その半分金貨2枚を使ってしまった。
残りの金貨2枚はどうしても家賃だの食費だの生活費で使う訳にはいかない。
「……こうなったら……奥の手しか…………ねぇ。」
--*--*--
「ご主人様。ギャビィさんから伝言があるみたいです。」
エイミーが淡々と俺に内容を読み上げる。
『兄弟。ヤケ酒飲みに行こうぜ!』
「あぁ、また全額使っちゃったんだ……あの人ほんと懲りないな」
無能系衛兵は見事にカジノにハマってしまっていて、給料日の翌日に伝言が残っているのが通例になりつつある。
ちなみに今回の伝言の真意は『負けがこんで、もう酒を飲みに行く金もないから奢ってくれ』という催促だ。
日本の騒動からは既に2ヶ月が過ぎ、オークションも2回行われ、その2回で剥奪も3件も出た。
しかも仲介業者を挟む『強制』の出品も多くなってきており、俺は目に付いた物は落札し続けている。
俺のスキル出品を増やしたいという思惑があったが、その思惑通りにカジノが出来てからというもの出品件数が確実に増えてきていて俺のスキルも増えた。
基本的にあまり落札しすぎても反感を買うので、既に得ている能力の底上げを考えながら使えそうな能力を買うようにしている。
もちろん剥奪に関しては全力で落札に行く。
結果
【剥奪】
『気配察知 敵勢発見』
『防御結界 矢を通さない』
『火の魔法 火の玉20連発』
【強制】
『魔物調教 オーク意思誘導』
『剣術 そこそこ剣や短剣を扱える』
『俊足 短距離早い』
『防御結界 矢を止めれる』
『念話 目が合った人に意思を伝える』
『土の魔法 土の弾飛ばし』
『風の魔法 移動力向上』
『怪力 ドワーフ並』
後……
『性技 性感帯発見』
いや……最後のスキルは別に深い意味はなく、参加者のみんなが照れて落札しなさそうな感じだったから可哀想に思った俺が落札しただけだし。
俺が手をあげたら色々手を上げ始めて思いのほか競った気もするけど、ほんと全然興味なんてなかったし。マジだし。むしろそんな弱点発見できたからどうだって話だし。うん。
ちなみに俺のスキルカードハイ抑止の為に、スキルカードを使う時はアデリーの店で使う事になっているので何を落札したのかはアデリーに現物を確認される。
落札した中にあった『怪力』のカードは、アイーシャがめちゃくちゃ欲しがった。
でも、アデリーの鶴の一声『このカードはサリーのね』で決着。
……俺だって怪力欲しかったのに。
後、その時あった『防御結界 矢を通さない』もなぜかサリーさんの下へ。
それ以外は俺が吸収した。もちろんテンション上がりそうになったけど、アデリー謹製ハングドマンを思い出して直ぐに冷静になれたから失敗はしていない。もう怖いもの。タマヒュンなんだもの。
…………面白かったのは、サリーさんだ。
俺は『気をつけろ、ハイテンションはマジで前後不覚になるから。なんなら監禁手配するけど?』と口を酸っぱくして伝えたんだ。本気で。
「大袈裟だねぇ。アタシャそんなにアホな事はしないさ。あぁ。気を失うんなら、寝る前に吸収するわ。」
と、かるーくサリーさんは二日かけて『怪力』と『防御結界 矢を通さない』を吸収したのよ。
ちゃんと1つ目のカードを吸収した翌朝は注意深く様子見したよ? 俺。2枚目を吸収した翌朝も半日付き添ってさ。
で、なんとなくテンション高いけど自制できてそうな感じに見えたのよ。
「流石サリーさんだわ~。よっ! できる50代!」
って茶化したら、凄いやばそうな鉄拳が飛んできたから思わず応用してできるようになった土魔法で壁作って防御。
俺の作った土壁、サリーズワンパンでパキョリと割られたよ。こえぇ。
そん時のサリーさんの目が怖かったから、すぐニアワールドに逃げちゃった。
これが甘かった……
そう。テンション壊れているように見えないだけで、実は超テンションあがってたの。サリーさん。
しかも誰も止める人がいないから1週間くらいずっと。
結果。
『50代から始まる恋の為に』
これ……ネットの化粧品の広告。
今、物凄く流れてるの。
出てる人は、もちろんサリーさん。
テンションあがっている間に広告の契約結んじゃって撮影までポンポン済ませちゃったんだって。
で……大反響。
しかもネットで『あの若さの秘密は、新世界の風って宗教団体らしいぜ』と、噂半分でリークされて信者も激増しててヤバイ。
もちろん箝口令は敷いてあるけれど信ぴょう性は徐々に増してきている感がある。
本当に監禁しておけば良かったサリーさん。
あ、もちろんその後に正気に戻って滅茶苦茶凹んでたよサリーさん。
「だから言ったじゃなーい。」って笑ったら、「もっとちゃんと止めなさいよ」って怒られた。
マジ理不尽。
スキルはこんな感じ。
ニアワールドの方は、さらに事業が拡張していてこっちも金回りが良くなってる。
なんせカジノの近くの家を買取って飲み屋やカレー屋、ラブ……簡易宿屋を作ったりして、そのどれもが儲かって困る。
もうその気にならなくてもスキルカード全部落札余裕です。ってくらい儲かっちゃってる。
ゴードンも物品の売買じゃなくてカジノ周辺の開発メインにする? と冗談半分、本気半分で話したりするくらい儲かっている。
いやぁカジノって怖いね。まさに欲望の遊びだわ。
ただ『俺たちが儲かる』という事は『損をしている人が沢山いる』という事だ。
善人が多いニアワールドにも、自分の失敗を他人のせいにしてしまうような人間はいる。
だから、カジノ近辺ではケンカや事件が多くなりつつあり治安が悪化し始めているのだ。
周辺に子供は寄りつかなくなり、ギャンブル依存症のような人間も出始め、カジノを中心とした負の連鎖が目に付き始めていた。
そして、とうとう開業間もないというのにも関わらず、事態を重く見始めた『ギルドマスター』と『衛士長』の連名でゴードン商会へ会議の打診が来るのだった。
【サリーさん イラスト】
もじゃ毛 様
http://www.pixiv.net/member.php?id=3344017




