99話 お仕置き(される側)
本日3話目
「うっ、えぐっ、うっ……ぎょ、ぎょべんなざいっ!」
「うんうん。あぁ可哀想なイチ。
ごめんね。私だってしたいわけじゃないのよ。でももう一回♪」
「あぎゃああああああああああああああっ!!!」
俺は今日。アデリーはSなんだと確信した。
アデリーに『クワシクっ!』された後、それはもう正座しながら洗いざらい喋った。
日本で起こっていた事とか俺がしてきたお仕置きの事とか、スキルカードハイで調子乗った事やサリーさんや伊藤さんにした事もすべて話した。
脚色や事実の差引、虚偽は一切無い。
「女の人2人にお風呂に入れられた」って言ったら「イチ? いま嘘ついたでしょ?」とか言われてジっと見られたので「あ、すみません。3人の記憶違いでした」と訂正もした。
記憶違いだから嘘じゃない。本当に記憶違いなんだ。
記憶違いなのに、しばらくアデリーが無言で俺を見つめるもんだから冷や汗だらだら。
「浮気はしてません! 向こうで誘惑がありましたがアデリーの顔が思い浮かんだので踏みとどまれました!」
そう必至に伝えていると、ため息ついて表情が崩れたから『おっ、許してくれるのかな?』と思ったら甘かった……。
「イチはスキルカードを使っちゃうと調子に乗っちゃうみたいだし……ちょっと怖い思いをしておいた方がいいと思うの。今後の為にも。」
そう言いながらいい笑顔でニッコリ微笑むんですよ。
で、俺が何に絶叫しているかというと……ここって城壁都市じゃない?
街を壁で囲ってて場所によってはかなりの高さがあるの。
本当に高いのよ。下を見ると腰が引けちゃうくらい。
その城壁を利用した強制バンジージャンプの刑。
アデリーにお姫様だっこで城壁まで「えっ? えっ? 何? 私をどうするつもり?」状態で運ばれてから、足を糸でグルグルに縛られ、タロットカードの『吊られる男』みたいな状態で、城壁の外で一番上からプランプラン。
俺、もうその時点でタマヒュン。
アデリーニッコリ笑顔で
「行ってらっしゃーい。」
って落とすのよ。
目の前は壁スレスレ。
もう怖いどころじゃない。
そりゃあ涙も出ますよ。
泣きますよ。
だって俺、高所恐怖症だぜ?
で、
バンジー1回目で超謝罪。
バンジー2回目で号泣謝罪
で、3回目に至る。
流石に3回目叫びながら
『あ。もう俺ニアワールドに二度と来ない』
と思い始めたよ。うん。
そしたら3回でバンジー終わった。
なんとなくその後『もーどーでもいーや』状態で不貞腐れました。
だって、俺頑張ったじゃん。
全部俺原因だけど頑張ってたじゃん。
触りたくもないゾンビ使ったりしてさ。
くそうくそう。何だよう。ですよ。
お姫様抱っこされよーが、もう好きにするといいよ。何回でも落としやがれ。ですよ。
……いや、出来れば落ちたくないけど。
なので、アデリーの店に帰っても『もうしらねーよ』状態です。
アデリーなんかガン無視してやるんです。しらねーよ。
さすがにこれまでこんな不機嫌を露わにしたことなかったから、アデリーもちょっと戸惑ったみたい。
ただ『まったく仕方ないわねぇ』的に、
「ほらほら、イチ。頑張ったご褒美もちゃんとあげるから、ね? こっちむーいて。ね♪」
だって。
しらねーよ。
ぺぺぺーだ。
と思ってたら、面倒になったのかアデリー、俺の口に指を突っ込むんです。
「あっ」
……と思った瞬間にはもう遅かったですわ。
そう。
とうとう俺。
アデリーに毒盛られた。
媚薬って毒。
…………
アレってすごいのね。
攻撃的になるっていうか、もう衝動の抑えが効かなくなるっていうか本能に歯止めが効かなくなる感じがあったよ。
ええ。もうアデリーの手の平の上でコロンコロンですわ。
いいの、もう仕方ない。
なんだかんだ言っても嫌じゃないし。
それにアイーシャも混じって……かなり気持ちよかったし。
『く、悔しい! でも、らめぇぇぇぇ! ビクンビクン』は素敵ですた。
なんだかんだで、スッキリしちゃって
「あ~~。俺も悪い所あったな~」
って思ってたら、ここでまた、アデリーが衝撃の一言発するんです。
「サリーさんを紹介して。イチの母親代わりなら挨拶しておかないと。」
って。
ニッコリ。
……俺に選択肢なんてあるわけないじゃない。
夜遅かったけどアプリで日本に戻ったら、サリーさんからの着信が山のように入ってたんで怖がりながら連絡したら…………超説教された。
ニアワールドに続き……日本でも平謝りですよ。はい。
で、怒られに怒られ終わった後、ニアワールドの事とかちょっと話してアデリーが会いたがってる事を伝えたら二つ返事で「朝一に行く!」とOKの返答が出ました。
ようやく寝れると思って布団に入って現状に気づいたね。
…………俺日本でも八方塞がりじゃね?って。
ちょっと枕を濡らしました。
--*--*--
翌朝サリーさんが本当に朝一番にやってきて出会いがしらにゲンコツを貰ったので再度
「昨日はおかしかったんです。ごめんなさい。」
と、平謝りしつつ超痛かったので回復魔法で治した。
もちろんサリーさんの手にも回復魔法をかける。
「さっさとおし!」
ってサリーさんがアデリーとの会談を催促するけど、その間に中村君が来ても困るので、
『中村君へ。ただいま会議中。終わったら声かけるので待機』
と玄関に張り紙をしておく。
案内した大画面テレビの前で仁王立ちするサリーさん。
アプリを起動し首を突っ込んでアデリーを呼ぶと、アデリー普通にやってきて、大画面テレビを通して二人が初めて顔を合わせる。
二人とも見えない壁に邪魔されて通る事はできないけれど、普通に話す分には問題が無く、アデリーとサリーさんによる会談が始まった。
「初めまして。サリーです。」
「ご丁寧にどうも。初めましてアデリーです。突然お時間を頂いてゴメンなさいね。」
「いいよ。アタシも話したかったからね……しかし、本当に目が4つあるとはね……どこ見ていいのかわかんないよ。」
「ふふ、あまり驚かないんですね。
こっちでもビックリする人はいるんだけどね。」
「まぁ目が4つあっても見惚れちまうくらいの美人だからね。」
「あら、お上手。」
「で、早速本題なんだけどアンタの話もこのバカについてだろ?」
「ふふ。そうね……ん~、どこから話そうかしら。」
「全部話しな。アタシも全部話すから。」
二人して俺を置き去りにして双方向での俺の事を擦り合わせはじめてんの。
ただ傍から見てて、この二人が気が合う事だけはわかった。
打てば響くというか話のテンポが合うというか。
良関係の嫁姑というか……嫁? いやいやいや、アデリーは蜘蛛だし。
流石に蜘蛛の嫁は…………うん?
二人の話は結構長くなった。
が、俺はゲートが勝手に閉じないようにテレビに触れておかねばならないので動けないのだ。
「じゃあ、そっちでのことは任せたよアデリー。これからも宜しくね。」
「ええ。任されたわ。そっちでの事は宜しくね。サリー。」
二人のやり取りは一部始終、否応なく俺の耳にも届いていたので俺は白目を剥きながら卵をアデリーに渡してゲートを閉じる。
「あ~~、安心したわ~。
アンタちゃんといい人捕まえたじゃないか。
アデリーならアタシも安心だわ。」
サリーさんが伸びをしながら安心したような笑顔になる。
二人が出した結論を関単にまとめると。
・ニアワールドで俺が変な事をしたら、アデリーがしばく。
・日本で俺が変な事をしたら、サリーがしばく。
・日本で俺が能力に任せて抵抗するようならサリーがアデリーに報告して、アデリーがしばく。
・むしろサリーが俺をしばけるように準備を進める。
(どうやら俺がサリー用にスキルカードを買う事になるらしい)
・週一で嫁姑報告会を開催する。
(会社に小型PC持って行くかサリーが来る形で会談するって。)
「じゃあ、イチ。
あっちとこっちの生活の為に今日もしっかり働きなよっ!
後、午後になったら団体の本部に顔だしなっ! 後始末が山ほどあるんだから!」
サリーさんが少しだけスッキリした様子で家を出て行き、戸が開いた事で入れ替わりで中村君が中の様子を見に来た。
「せ、センパイっ! また違う女を家に連れ込むなんて!
パネェっす! マジパネェっス! パイセン!」
……今のは君も知ってる女の人だよ……中村君。




