一日限りの彼女
少しキャラの紹介します。(年は2016年11月現在)
二本木 学:本文のセリフでは「二」と記している。
年齢は35歳。普段は真面目な性格だが、女の前だといやらしくなってしまう。
藤茂 雲雀:本文のセリフでは「狐」と記している。
山の奥で暮らす化け狐で、三人姉妹の長女である。年は8歳ぐらいである。
ちなみに、藤茂一家の狐の寿命は人間の二分の一ぐらい、すなわち犬より長生きする。
旭が丘 弥宏:本文のセリフでは「旭」と記している。
二本木さんと同じ年で、小学生の頃から知り合っている。
普段はカメラマンとアマチュア写真家を職業としている。
ここは、藤茂の朝陽。そこは、山と面している地域で、毎朝小鳥の囀る声がよく聞こえるところであり、そこで散歩をしている35才の彼、二本木 学さんもこの地域の住民である。彼の家は、一見どこにでもある普通の一軒家だが、中に入ると、それホそれは一面中に金の匂いが漂いそうなほどの高級ブランド品やアンティーク家具などがふんだんに置かれている為、近所の方からは「隠れた富豪」と呼ばれるほどである。そんな彼が通りを歩いていると、山の中から雌の狐がトコトコとやってきた。二本木さんは不思議な感じがして、
二「お嬢ちゃん、私のところへいらっしゃって、一体どうしたのかね?」
と雌の狐に問いかけるように話しかけると、
狐「いいえ、あなたが幸せそうに散歩していたので、気になってついてきました。」
と答えるように言った。二本木さんと雌の狐との会話は徐々に弾んできて、どちらも楽しそうでした。すると、雌の狐は二本木さんに相談するように言った。
狐「実は私、どんなものでも変身できる化け狐なんです。なので、もし良かったら、私が女性に化けて一日だけ貴方の彼女になりますが、どうでしょうか?」
二「ほほう、君が私の恋人になりますと?確かに、私は今まで一度も彼女を作ったことがないから、いい機会だし、悪くないと思う。しかし…一日だけという言葉がどうも引っ掛かるんだ。だが、人生で一度だけのチャンスだ。いいでしょう。私の家へ案内しよう。ついて来てください。」
雌の狐は二本木さんの後を付き、家へと向かった。そして、玄関に着き、二本木さんは雌の狐に対してニヤニヤしながら、
二「さて、どんな女に化けるのかね?」
と楽しみそうに言うと、雌の狐は赤面をしながらこう言った。
狐「ちょっと待ってください!ここで化けると大変なことになるので、洗面所に連れてってください…恥ずかしいので…」
二本木さんは泣く泣くと雌の狐を家の中に入れてもらい、洗面所の場所を案内した。そして、服を持ってくるように言われたが、
二「なぁ、男の服しかありませんが大丈夫?」
狐「大丈夫。何とかするから。」
二「そう。ならいいけど。」
二本木さんはスタスタとタンスから出したカジュアルな服を持ってきて、雌の狐の所へ向かった。そして、カゴに服を置き、
二「着替えを持ってきたぞ。さぁ、私の理想の女に化けて頂戴。」
と言いながらその場を離れた。そして、数分経って様子を窺うと洗面所から可愛く背の高い女性が現れた。二本木さんは嬉しさのあまり、口が開いてしまった。
二「なんでこった!私が望んていた女だ!」
狐「いえいえ…そこまででもないんですが、あなたが嬉しそうで何よりです。」
と照れていた。二本木さんは男らしいところを決めつけるように、女性に化けた狐に問いかけた。
二「お嬢さん、部屋を案内しましょうか?」
狐「はい!喜んで♪」と女性に化けた狐は嬉しそうに答えた。
そして、女性に化けた狐を連れて家の中を巡った。最初に連れてった先は、二本木さんの自慢の部屋だった。向かっている途中、二本木さんは女性に化けた狐に質問をした。
二「ねぇ、質問してもいいか?君って名前あるの?」
狐「あるよ。雲雀という名前なんだよ。」
二「なるほど、雲雀っていうんだ。なぁ、今からそう呼んでもよろしいかい?」
狐「うん!もちろんいいよ♪」
そうして話をしている間に目的の部屋に着いた。二本木さんは雲雀さんに小バカするように言った。
二「ここが私の自慢の部屋だ。ご覧になって失神するなよ。」
二本木さんが扉をゆっくりと開けると、女性に化けた狐は中を見て目を丸くした。
狐「おお!!なんですがこれは!!」
二「へへっ、驚いただろ。」
そこには、棚や机などが沢山置いており、その上には二本木さんが大事にコレクションしているアクセサリーがズラリと並べてあった。すると、女性に化けた狐は早速質問をした。
狐「ねぇねぇ、この腕時計ってどこの会社のどうゆう物なの?」
二「これは、ロレックスというスイスの会社が作っている『ヨットマスターⅡ』というやつなんだよ。」
狐「へぇ~、なんか変な王冠のマークがついているのはロレックスという会社のロゴなんだね。んで、これっていくらぐらいだった?」と聞くと
二「うーん…これは確か、百五十万ぐらいだったはず…」
それを聞いて女性に化けた狐は大変驚いた。と同時に、気になったものを指さした。
狐「それじゃあ…このネックレスについて詳しく教えて!」
二「…仕方ないな。いいか雲雀さん、これはルイ・ヴィトンというフランスの会社が作っている『パンダンティフ アンプラント』というやつなんだ。まぁ、穴の形が花になっているのが特徴的かな…」
と言ったが、女性に化けた狐は満足していなかった。
聞くと、値段を聞いていないと機嫌を損ねていたが、自分でも分からなかった。だが、雲雀さんのためにと思い、急いで他の部屋から領収書を探し回った。そして、やっとの思いでタンスから領収書を見つけ、女性に化けた狐のいるところへ戻り報告した。
二「ハァ…ハァ…。に、二十万だった…。」
しかし、女性に化けた狐は表情を変えずに頷いてすぐに言った
狐「フーン…それじゃあ、あの時計について教えてくれる??」
二本木さんは女性に化けた狐が怖い顔をしていることに怯えてしまい、震えた声で
二「雲雀さん…さっきから打って変わって怖い顔をしているけど…いったいどうs…」
狐「いいから、教えてっ!!!」と強く怒鳴った。
二「はい!これは、カルキェ…失礼しました。これは、カルティエというフランスの高級時計ブランドが作っている『カリブル ドゥ カルティエ クロノグラフ ウォッチ』というもので、私が買った時は百数万ぐらいでした。それからですね…これは、6時当たりのところに…」
狐「うん、十分だからいいわ。それよりも、あなたの鍵ってどうゆう物なんだ?」
二「………………普通のやつだが。」
狐「へぇー。んで、どんな風に普通なのが見たいよー!」と強請った。
だが、二本木さんは流石に見せちゃ駄目だと思い、すぐに
二「おっと、それは防犯上無理なんだ。ちなみに、金属で出来ていて市販のものだから、そこまで期待しなくでも…」と言った。
しかし、女性に化けた狐はそれでも強く強請ってきたため二本木さんは、
二「あー!あともう一つ見せたい部屋があるんだった。一緒に行こう。」
と言いながら、女性に化けた狐の腕を掴み、無理矢理リビングへ連れて行った。
そして、ついた後に二本木さんは何がを気にして
二「ここの家具は一段と違うぞ。何せ、ここにあるものはイタリアのブランド『シリック』だから結構金食ったわ。」と自慢げに言った。
すると、女性に化けた狐は機嫌を直し笑顔が戻った。しかし、二本木さんは疑問に思った事があった。
二「(雲雀さん、なんで金の話しか耳に貸さないんだろう…今までの来客の中では滅多にご覧にならないぞ。もしかして…いや、そんな訳が無いよ!なぜなら、一回だけ人に化けた狸を招いた事があるが、その時金の話はそこまでしなかったぞ。…まさか、私が気にし過ぎているだけなのかな…)」すると
狐「ねぇ…どうした?」と心配そうに声をかけてきた。
二本木さんは壁に飾ってあった振り子時計を見て、午後6時になっているのを確認して
二「ああ。そうだった!夕飯の事を考えていたのです。私はキッチンに行くので、テレビを見るなり好きに寛いでください。」と言いながらキッチンへ向かった。
女性に化けた狐はチンプンカンプンになっていたが、ソファに座りテレビでニュース番組を見ながら夕飯が出来るのを待った。一方、二本木さんはキッチンで
二「私があんなこと言ったからには、料理しないと…炒め物でいいや。」と呟いた。
そして、冷蔵庫からキャベツと玉ねぎを取り出して切り始めた。七時半頃に夕飯が出来て、おかずをダイニングテーブルへと運んだ。出てきたのは、キャベツと玉ねぎともやしと松阪牛と舞茸の炒め物だった。そして、一緒に食事を済ませた。その後、浴室を貸してもらい、女性に化けた狐は気持ちよくシャワーを浴びた。そして、二本木さんが用意してくれた服に着替え、リビングで彼を来るのを待った。キッチンの片付けを終えた二本木さんが来ると、一緒に寝室へと向かった。中に入ると、大きなベッドがあって向かいには16inch(40.64㎝)ぐらいのテレビが台に置いてある配置になっている。女性に化けた狐は寝具について問いかけた。
狐「ねぇねぇ、このベッドもリビングと同じシリックのもの?」
二「いいえ、これはアメリカのベッドブランド『シモンズ』のものだよ。」
狐「シモンズ?なにそれ?」
二「そうか、知らないか。なら説明しよう。シモンズというのはな、1870年にザルモン・シモンズという人が創業した最高級のベッドブランドで、代表的なのはコイルスプリングが一つ一つ独立していて、円筒形のポケットの中に入れられているものが隙間無く並べられているマットレス『ポケットコイルマットレス』というもので、一台でも三十万円ぐらいになるんだ。このマットレスの利点は体を『点で支える』から寝返りを打っても響かずに済むんだよ。」
狐「へぇー」
二「後、シリックというのはロココ調が特徴でベッドもそうゆう風なデザインになっているんだよ。分かったかい?」
女性に化けた狐はベッドの事について納得した。その後に眠気がしたため二本木さんに少しおねだりした。
狐「ねぇ…私眠いの。先に寝てもいい?」すると、
二「もちろん、一緒に添い寝しよう。」
狐「ウン♪」
その後、女性に化けた狐と二本木さんは添い寝をするように眠りについた。
翌日、午前七時ごろにむっくりと二本木さんが目覚めると横で寝ていたはずの女性に化けた狐の姿はなかった。
二「(あれ?雲雀さんはもう帰っちゃったのかな…)」
と思いながらリビングへ向かうと、ソファに腰かけて朝の番組を見ている女性に化けた狐がいました。二本木さんはコーヒーを飲みながら質問をした。
二「あら、雲雀さん。早起きしたんですね。いつもこんな時間に起きるんですか?」
狐「いいえ、今日は特別なんです。私、夜行性なんで、いつもは夕方ぐらいに起きます。」
二「フーン、そうなんだ。」
その後、二人っきりでテレビを見ながら、二本木さん特製のフレンチトーストとカフェオレを食べた。そして、朝食を済ました後に女性に化けた狐は普通の狐に戻り、トコトコと玄関のほうへ向かった。二本木さんも玄関に行き、別れの挨拶をした。
二「今日は本当に楽しかったよ。まだ会えますよう心から申し上げるよ。」
狐「いえいえ、こちらこそありがとうございます。」と頭を下げて、お礼を言った。
雌の狐はそのまま山のほうへ帰って行った。
二本木さんは最後まで見送った後、自家用車のベンツGクラスに乗り、同じ町の中にある篠桝という地域に住む旭が丘 弥宏の所へ向かった。
彼の住んでいる篠桝という地域は、藤茂町の南にあり、特に二丁目は団地になっており、彼はその二丁目のところに住んでいる。そのため、家の中は少し狭いものの、3LDKになっているので広々に使える部屋になっている。
そんな彼の部屋は、少しスタイリッシュよりになっていて、話によるとブランド品を少し持っているという。二本木さんが乗る車は旭が丘さんの自宅のところに着いた。そして、彼のいる部屋に行き、インターホンを押した。
二「おーい、居るかーい?」
すると、ドアが開き、旭が丘さんがやってきた。
旭「おう、二本木さんじゃん。一体どうしたんだい?」
二「いえ、それほどではありませんが、少しご相談がありましてね。昨日招いた女性についての事なんですが…」
旭「ふーむ、んじゃ家に上がって詳しく聞こうが。」と言って
二本木さんを家に入れてもらい、リビングで話した。
旭「んで、どんな困り事なんだいそれは?」
二本木さんはありのままに昨日の事を話した。すると、旭が丘さんは首を頷いてアドバイスを言った。
旭「なるほど、それは簡単に解決できる。今日から厳重に戸締りをするといいだろう。出来る限り、補助鍵をつけたほうが身の安全です。」しかし
二「フン、そんなこと私はしないよ。今までに似た事があったが、なんも起こってないし、この町は治安がいいからそんなこと起きる訳が無い!」
旭「……………はぁ、そうですが…」
二「なぁ、話逸らすけど、君の腕につけている腕時計ってシヂズンのやつですが?」
旭「ああ、そうだぁよ。プロマスターのBY0084というやつなんだぜ。」
二「…どうして明確にわかるんだ?」
旭「語呂合わせで覚えたんだぁよ。BY0084ってね。…あ、俺からも聞いてもいいか?今度君んちに行きたいんだけど住所が分かんなくてな。教えてくれるかい?」
二「藤茂町朝陽1996-6に私の家がある。」
旭「おう、ありがとう!」
その後、二本木さんは車に乗り家に帰った。旭が丘さんは車が見えなくなるまで見送った。しかし、旭が丘さんは心の中で心配そうに思った。
旭「(あいつ、大丈夫かな…『この町は治安がいいからそんなこと起きる訳が無い!』って言ってたけど、つい最近、子供が知らずの人からもらった飴を舐めて気が狂う事件があったばかりだから心配だよ…)」
その夜、二本木さんはいつもの時間に家でぐっすりと寝ていた。すると、お腹に何が重いものを乗っているような感覚があった。気になって目覚めるとそこには、黒い服を着た男がいて、手には鈍器らしきな物が握っていた。二本木さんは恐る恐ると声をかけた。
二「…ねぇ、私をどうするつもりなのかね…。」
すると、突然、大きく振りかぶって顔面を殴った。二本木さんは痛みを耐えながら苦しそうに喚いて助けを求めようと試みたが、すぐに意識を失ってしまった。それを確認すると黒い服を着た男は家の至る所で隅々まで金目の物を探り出し、ブランド品を山ほど盗んだ後、何処がへと消えていった。
翌日、現場には警察官が捜査をしていた。その周りには、野次馬がわらわらと集まっていた。そして、数日後だった頃にあるものが殺人未遂と窃盗の疑いで拘束された。そのある人こそが、二本木さんが散歩をしている時に出会った『雌の狐』である。そして、裁判で分かったことは、犯行の動機は夫である雄の狐が病に倒れ、一刻も早く夫の命を助けるために動物病院に行き、手術費を払うための百万円を手に入れたくて二本木さんを標的したということだった。その後、雌の狐は有罪判決を言い渡され、終身刑となった。
一方その頃、旭が丘さんの自宅では、ソファーに腰かけながらテレビを見ていた。そこには二本木さんが巻き込思われる事件についての報道が流れていた。旭が丘さんはそれを見ながら呟いた。
旭「ハァ…。物騒な事件だな。まぁ、あいつは何とか命だけは助かったし…。でも、まさか狐が犯人だなんで、前代未聞の事件やな。」
そして、月日が経ち、退院した二本木さんにあの事件の事を話した。すると、
二「ちょっと待って、まさか…黒い服を着た男の正体ってあの狐だったのが?」
旭「つまりそうゆうことだ。」
二「う、嘘だろ…」と激しく動揺していた。
あれ以来、二本木さんは狐の事が苦手になり、彼の玄関前にはライトをつけるようになり、旭が丘さんがアドバイスしてくれた補助鍵もつけるようになった。しかし、あの事件が起こったにも関わらず、今だ客を招き入れているという。旭が丘さんは呆れた顔をしながら呟いた。
旭「はぁ…あいつ懲りないね…。(笑)」