第6ページ 精霊契約儀式
今夜は、精霊と契約する儀式を行う。
場所はお馴染みの裏庭。
朝からセレナ先生が来て、魔法陣を描いたり、物を配置したりと準備をしてくれている。
本来、エルフが儀式を行うときは、森にいる多くの精霊や、森そのものが力を貸してくれるためこんな大仰な準備は必要ないそうだが、生憎ここらへんに都合よく森はない為、セレナ先生が古い文献を漁ってくれた。
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そんなこんなで夜。
満月が頭上に輝き、星が瞬くきれいな夜。
「さて、ベン君。準備はいい?」
「はい、せんせい!」
儀式の概要は説明を受けている。
魔法陣に魔力を流し、精霊界へと呼びかける。
そこで誓約を口にし、精霊たちがそれを了解したら契約となる。
「その歳で精霊と契約する者は、通常おらん。じゃが、お主ならば大丈夫じゃよ。しっかりの」
「はい!」
どういうわけか、リィーエン協会長まで来てくれた。
これは失敗なんてできないな。
協会長の横で、リーンさんも手を振っている。
だがその顔は何かを憂えているように元気がない。
父さんや母さん達も見守りたいと言っていたのだが、エルフ以外の人が多くいるのは好ましくないそうだ。
精霊はシャイなんだと言っていた。
絶対そんなことはないと思う。
「では復唱を」
「はい!」
セレナ先生の顔が真剣になる。
俺も気を引き締めて、セレナ先生の言葉を復唱することだけを考える。
「「月の力を借り、自然の力を借り、我ここに世界の力との契約を求める。我が名は、ベンジャミン・ハイリッヒ・フォン・シュレルン。大いなる力よ、友として我に力を貸し給え。ここに誓約する。我は決して其方らを裏切らぬ。我は決して悪しきに堕ちぬ。この願い、聞き届け給え」」
複雑な文字と模様が描かれた魔法陣が光り始める。
このタイミングで魔力を通せと言われている。
俺が指示通りに魔力を流すと、世界が揺らめいた。
「これは!?」
「なんとっ!」
『やはりこうなりましたか…』
「え!?え!?」
先生と協会長が驚きの声を上げ、リーンさんが嘆息した。
俺はふつうでないことが起きているとだけわかる。
『はっはっはっ!私だ!』
親しみのある声が響く。
厳かであるにもかかわらず、どこか軽薄さを感じさせるという不思議な声を聞いた瞬間。
セレナ先生とリィーエン協会長、それにリーンさんも膝を付いた。
俺もわけがわからないまま同じようにする。
『楽にせよ、友たちよ。久しいなリィーエン』
「お久しぶりにございます、精霊王様」
「……えぇぇぇ!?」
声に驚いて顔を上げると、一人の男性が立っていた。
色んな色が重なり合うように乱立する服を纏い、まるで虹色に輝いているかのように見える男性。
リィーエン様の言を信じるなら、彼こそが王。
精霊界を統べる存在。
すべての精霊の頂点。
精霊王メルウェノフィルー。
『其方が新しき友か。ふむ、人の子と契約するのは久しぶりよな』
「よ、よろしくおねがいします!」
とりあえず頭を下げる。
聞いてない。
精霊王が出てくるなんて聞いてないよ!?
『して、精霊王様。本日は如何なされたのですか?』
『何、珍しい波長を感じたのでな。出てきたのだ』
『…仕事はよろしいのですか?』
『固いことを言うな!お前は昔からそうだっ!』
『放っておいたら仕事をなさらないからでしょう』
リーンさんが言葉を発するごとに、精霊王の威厳が消えて行っている気がする。
もともとあまりなかったが。
精霊王思っていたキャラと違うぞ!?
『仕方ない。もう戻る。ああ契約は成った。安心せよ。それとこれはおまけだ。ではな』
そう言うと、精霊王様は俺の頭の上に手を翳してからその姿を風に溶かすように消えた。
嵐のような人だった。




