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とある貴族の成長記録  作者: 安芸紅葉
第1章 幼年期・修行
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第12ページ

ドサッ

「いてっ!?」


ゲートを潜り抜け、地面に投げ出された俺はすぐさま体勢を立て直した。

師匠のことだから猛獣の巣に投げ出されていても不思議ではない。


警戒するように辺りを見た俺は、辺り一面が木々に覆われていることを認識した。

王都の中にこんな森のような場所はなかったので、少なくともここは王都とは違うようだ。


「ここはどこなんだ…?」


辺りに危険な獣が発する気配はなく、警戒しつつもとりあえず構えを解く。

そのタイミングを見計らったように俺の前に再度ゲートが開き、そこから短剣と封筒が落ちてきた。


「…」


なんとなく嫌な予感がしつつもそれらを拾い、封筒を開ける。


『そこはバレルアン島という無人島だよ。君にはこれから一月(ひとつき)そこで生活してもらう。精霊魔法を使うのはいいけれど、サラ君はその島に行けないようにさせてもらった。一人で頑張ってね。そんなに危険な魔物はいないから安心してね。師匠より』


にこやかにほほ笑む師匠の姿が見えた気がして、俺はその手紙をくしゃくしゃに丸める。


「あんの師匠ぉぉぉぉぉ!!」


なんの説明もなく無人島に放り込んで一人で生活しろとはどういうことなのか!

そんなにってちょっとは危険な魔物もいるってことじゃないの!?


「はぁ…」


いつまでも文句言ってても仕方ないか…

師匠や母さんから一応サバイバル術なんかも教わっている。

一ヶ月程度なら生き残れないことはないだろう。

もっと過酷でなかっただけマシと思うべきなのかもしれない。


「そうと決まったらまずは住処の確保だ」


今の季節は秋。

気温的に凍死したりすることはないと思うけど一ヶ月も外で寝るなんて無理だ。

簡易的な家を作るか、どこかに洞窟でもあればいいんだけど…


「よし、やってみようか」


目を閉じ魔力を集中する。

俺はまだ師匠のようにすぐ空間魔法を発動できない。

魔力を練って魔法を構築するのに時間がかかってしまうんだ。

普段はその集中している時をサラが守ってくれるんだけど今はいない。

どうやって精霊が視えない筈の師匠がサラを封じているのかまったくわからないけれど、危険なことはしていない筈だ。


むしろ危険なのは俺だ。

現在俺は魔法を構築している為、無防備な状態。

もし今何かが襲ってきたら反応が遅れることは必至だ。


俺には<危険察知>や<気配察知>のスキルはないけど、<空間感知>によって察知系スキルの代わりはできているのであまり支障はない。

ただ、<空間感知>は魔物の居場所や地系把握なんかはできるけど魔物や人の悪意を感じたりはできない。

それに詳細な動きも把握できているわけではないので遠距離攻撃なんかされると困る。

非常に困る。


だからこそ、そこを魔法で補うんだ。


「『サーチ』」


使った魔法は下級空間魔法『サーチ』。

その名の通り辺りを調査する魔法だ。

この魔法によって<空間感知>ではわからなかった情報まで手に入れることができる。

魔物の生態や今の動き、より詳細な地形情報がわかる。

地中に使えば水脈や鉱脈を知ることもできるらしい。


俺にはまだそこまでわからないけれど、一度発動してしまえば<空間感知>の精度が上がり、まるで地形マップのように頭に浮かぶ。

その結果、少し行ったところに洞窟のようなものがあるとわかった。

中には魔物がいるみたいだけど感じる力から判断するとまぁ大丈夫。


それとわかりたくないこともわかった。

今はまだ距離が離れているけど、俺が勝てるか勝てないかギリギリの魔物が何体かいる。

絶対に勝ち目がないという魔物は…いや、一体だけいるな。

うん?これって魔物?猿系の魔物かな?

いや、でも…うーん師匠は無人島って言ってたしなぁ。


まぁとりあえず放置。

人でも魔物でも今の俺では勝てない相手に近付く必要はなし。

むしろ逃げないといけないね。


というわけで、俺はその気配から遠ざかりつつ目星を着けていた洞窟を目指す。

程なくして山?丘?のふもと辺りにあった洞窟を発見。

中にいたのはグランドスパイダーだった。


その名の通り蜘蛛型の魔物で、バスケットボール程の大きさがある。

グランドスパイダーの糸は頑丈で切れにくく燃えにくいという性質を持つ。

その為人気があり希少価値はそれほどないものの高値で売れるとジェームズに聞いたことがある。

師匠と母さんが戦う力を教えてくれると同時に、ジェームズからは色々な知識を教えてもらっている。

ジェームズと戦って勝てる気もまるでしないけど。


と、話が逸れた。

ただ、グランドスパイダー自体はまったくと言っていいほど強くない。

お尻から射出される糸にさえ気を付けていれば問題なしだ。


さっさと排除した俺は巣の撤去にとりかかる。

グランドスパイダーの糸のもう一つの特徴として粘着性がないことがあげられる。

なので素手でも除去できるけれど、ついでだから土精霊にお願いした。

糸を回収し、同時に洞窟で生活できるように補強し整えて貰う。


土精霊が頑張ってくれてるのを眺めながら、これからどうするか考える。


『サーチ』で調べたところこの島自体の大きさはそれほど大きくない。

一ヶ月もあれば島全部回れそうだ。

この洞窟より良い場所が見つかればそちらに移ることも考えよう。


持ち物は師匠が持たせてくれた短刀と『アイテムボックス』に仕舞ってあるポーション類だけ。


『アイテムボックス』は中級空間魔法。

師匠が便利だからと始めに教えてくれた魔法だ。

よくあるゲームのものと同じだけど中級だから容量に限りがある。

ちなみに上級には『ストレージ』、特級には『イベントリ』があって容量が増えていく。

『イベントリ』になるとほぼ無限に入るそうだ。

まだ『アイテムボックス』しか使えないけど今はこれで十分だ。


さて、その『アイテムボックス』の中にはポーション類が何本か入っている。

師匠がこれだけはいつも持っておくようにと言われたからだ。

保存食を入れておけばよかったと後悔しているよ。


当面の問題はやっぱり食糧。

それと正体不明の俺より強い人型生物。

同じくらいの強さの魔物3体。


この島で生活するにあたってこの三つはどうにか解決しておかないといけない。

あまり生態系を乱すのもよくないとは思うんだけどね。


さて、どうするかな。

とりあえず食糧は確保しないといけないからここを生活できる環境に整えたら狩りに行こう。

……あれ、でも待てよ?

俺料理できない…よ?

え、ご飯が一番の問題かもしれない!!

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