第10ページ 師
気付けば一ヶ月以上も更新していなかったんですね。
大変申し訳ないです。
教会に行った日から数日後、俺はいつものように庭で精霊魔法の練習をしていた。
精霊が直々に教えてくれるとはいえ、覚えることはたくさんある。
練習をサボることはできない。
「やぁ、がんばっているね」
そんな俺のところに、一人の男の人がやってきた。
声をかけられるまで気付かなかったよ。
「あの、どちらさまですか?」
「これは失礼。エイブラハム・ピオニエーレと申します」
そう言ってピオニエーレさんは綺麗に一礼した。
男の人だとはわかる。
けど、中世的で綺麗な顔立ちをしていて、金色の長髪。
胸には緑の宝石がついたペンダントをしていて、右腕に青い宝石のついた腕輪をしている。
直感でわかる。
この人は魔法師、それも高位な使い手だ。
魔法師と魔導師という二つの分け方があるけど、その境は曖昧だ。
一定以上の実力を持つ者を魔導師と呼ぶらしいけど、その一定以上が明確に定められていない。
人々が思えば魔導師になる。
なら区別なんてしなければいいのにとは思うけど、言っても仕方ない。
もう一つ、魔術師というのがある。
これははっきりしていて、魔術を使う人のことだ。
魔術とは魔法陣や魔法が刻まれた杖、魔導書などを用いて行使される魔法のことで、自分で魔法を構築・展開することができない人がこれになる。
そういう意味で僕は精霊魔法師ということになる。
精霊魔法を使うからだね。
もし空間魔法を使えるようになれば空間魔法師と言われるかもしれないけど、空間魔法はちゃんとした師につくまでは絶対使うなって言われている。
基本七属性と言われる魔法よりも遥かに危険度が高いからだって。
基本七属性は、火・地・水・風・氷・光・闇の七つ。
それ以外にも希少属性と呼ばれるものと、固有属性と呼ばれるものがある。
僕の空間魔法は希少属性だね。
「あ、あの、まほうしさんですか?」
「うん、そうだよ」
ピオニエーレさんはそう言うと、キョロキョロと辺りを見回して、大木を発見。
ちょうど木陰になっている所に入り、幹によりかかるように腰を落とした。
「ん?続けていいよ?」
手を止めていたこちらに向かってキョトンとした顔でそんなことを言ってくる。
続けていいよって言われても…
まぁいいかと思い俺は練習を再開する。
基本は魔力の受け渡しと、俺のイメージを正確に相手に伝える練習だ。
サラとは言葉であれこれ話せるから楽なんだけど、下位精霊相手だとイメージを魔力と一緒に渡し、俺のイメージ通りに魔法を行使してもらう必要があるから大変だ。
簡単なものだったら大丈夫なんだけど、複雑になると難しい。
サラにアドバイスを貰いながらなんとか頑張っている状態だけど今日はアドバイスをくれない。
「サラ?」
不思議に思ってそちらを見ると、サラは何やら考えているような顔をしていた。
サラがこんな顔をするのは珍しい。
というか初めて見たなぁ。
「どうしたの?」
『あの男、魔力量はそれほどないのに尋常ではない程研ぎ澄まされているわ。人の身でありながらどういう訓練を積めばあの域に到達できるのかしら…』
ゴクリ
精霊のサラが真剣に言う言葉に、俺は思わず喉を鳴らした。
「精霊魔法は難しそうだね」
「は、はい!」
突然かけられた声に声が裏返ってしまった。
面白そうに笑われてしまう。
「そんなに緊張しなくていいよ。私はそんな大層なもんではないからね」
「は、はぁ」
ポンポンとピオニエーレさんが自分の隣りを叩く。
こっち来て座れということらしい。
ちょっと迷ったけど、てててと小走りで走ってちょこんと座る。
ふふ、とまた笑われた。
何かおかしかっただろうか?
「あ、あの…今日はどうなされたんですか?」
「うん?君に会いに来たんだよ」
「おれ、いや、ぼくにですか?」
なんだろ?と思って一つしかないことに気付く。
この人は空間魔法師なんだろう。
「君はこの世界をどう思う?」
ドキッとした。
一瞬俺が前世の記憶を持っていることを知っているのかと思ったけど、そんなことはあるわけもなく。
純粋にどう思うか聞いたようだ。
「綺麗だと思います」
俺がこの世界で感じたことはそれだった。
もちろん前世でヨーロッパに行ったことなんかない。
けど、歴史の授業なんかでやった中世ヨーロッパより明らかに利便性が高く、街も綺麗だ。
研究され発展していった科学とは違って、昔から使われていた魔法の力なのだろう。
これからの発展はあまりないかもしれないけれど、今の状況で不便を感じないのだから凄いと思う。
そして、排気ガスがなく、人の手で汚染されていない環境というのはとても綺麗だ。
初めて夜空を見た時、輝く星の多さに涙が出てしまったくらいだ。
「そう…君はこの世界が好きなんだね」
「はい!」
そうかい、と呟くピオニエーレさんはどこか寂しそうだった。
「君は空間魔法の才能があるそうだね」
「はい」
「使えるようになりたいかい?」
「はい!」
「そうか。では、君に空間魔法を教えよう」
こうして俺は、一生の師と仰ぐことになるエイブラハム・ピオニエーレと出会った。




