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ロンドベルの見習い冒険者  作者: きたくま
冒険者学校を目指して
11/15

2年6組デガンクラス

今回から2章に入ります。


ライル視点からの書き方に変更してあります。

「ふっふ、はっはっ、ふっふ、はっはっ・・・ドーリスさん!おはようございます!」

「おお、もう折り返しまでは余裕だね。ユニベルセまで走って帰れるようになったかい?」

「ええ、なんとか。」

「あ、ライル君おはよう!レモネード用意したから飲んでいってね。」


 銀髪が朝日に輝いて、妖精のようにも見えるラクアちゃんが、運動会の次の日からずっと、門番のドーリスさんと一緒に、門の横で待っていてくれている。


「ラクアちゃん、いつもありがとう。でも、明日からはコースを変えるから、待たなくていいからね。」

「え?もうここは通らないの?」

「いや、通るけど、ちょっと遅くなるよ。大通りを南に行ってから外壁沿いにこの道に戻ってくる予定なんだ。」


 僕はライル=ユニバース。

 1年間雨の日以外は続けている朝のジョギングは、領主の館までは折り返し走り続けられるようになった。

 明日から2年生になるため、ジョギングのコースを領主の館折り返しコースだけではなく、南の水路沿いを南大門まで走り、外壁に沿って領主の館へ出るコースへと変更することにした。

 正直、領主の館折り返しコースでは、もう物足りなかったのもある。


「じゃあ、ここの前は通るんだね!私待ってるからいいでしょ?」

「遅くなると思うから、ゆっくりしていていいよ。最初のうちは、走れるかどうかもわかんないしね。」

「うん、わかった。じゃあ、学校でね。」

「うん、学校で!これありがと、おいしかったよ!」


 ライルちゃんにコップを返し、ちょっとアキレス腱を伸ばして、ダッシュする。

 今はユニベルセまでダッシュしても、なんとかたどり着けるようになった。


 幼馴染のパックとリリアンは、いまでも登下校を一緒にしている。


「ライル君、背が伸びたよね。そんなに私と変わらなかったのに。」

「そうかな。でも大きくなりたいから、そう言ってもらえると嬉しいな。」


 リリアンはいつも僕の右腕を抱きかかえているが、歩きにくくないんだろうか。

 パックはさすがにもう手をつないで歩くことはしないけど、いつだって僕の親友だ。


「リリアン、2年生なんだからもうライルを自由にしてあげたら?」

「べーっだ!パックがそんなこと言っても、私はライルと結婚するからいいの!」


 リリアンとパックはほとんど去年とかわらないと思う。でも、さすがに8歳にもなると、恥ずかしい気持ちも出てきてしまう。

 リリアンが可愛いのは認めているからいいんだけどさ。

 ラクアにも、ギフトを使ってリリアンを疎外するのはやめるように、しっかり言ってあるしね。


 初等学校は、希望する進路によって、2年生から教室が変わる。

 僕の家族はお母さん以外商業学校出身だけど、僕は冒険者学校に行きたいと思っている。

 商人の子息はほとんど商人学校だけど、僕は末っ子だし、両親も好きな道へ進むことを望んでくれている。

 お母さんは元冒険者だから、僕も冒険者になりたいんだ。

 それに、冒険者学校と言っても、軍や近衛隊に入りたい子も冒険者学校を選ぶから、初等学校の体育で習う護衛術とか剣術は、冒険者学校の選抜試験を受けるためには必須の授業になる。


 商業学校と冒険者学校の他には、農工業学校と政経学校がある。

 鍛冶師や製造業を目指している子と、農家の子供達は農工業学校、役人や貴族の子息はだいたい政経学校だ。

 ちなみに姉のリンダは、商業学校ではなく、政経学校へと進んだ。

 ギフト『魅了』の能力を買われ、すでにロンドベル市役所での席を用意されるほどだ。


 このロンドベル自治領では13歳が成人として認められるため、そこまでは領主様の方針で無料で学校に通うことができる。

 他の都市や国家に比べて、識字率と教育水準は比較することができないほど高い。


 クラス分けの掲示板の前に来ると、熊族のドッコと豹族のチノという二人の親友が僕を待っていた。二人ともとんでもない運動神経の持ち主で、人族の僕なんて足元にも及ばないけど、ドッコより僕は足が速いし、チノよりは持久力があるんだ。


「ライル!俺達は6組だぞ!早く行こうぜ!」

「ライル、一緒にがんばりま・・・頑張ろうぜ!」


 チノはいつだってせっかちで、ドッコはどうしても地の丁寧さを隠しきれていない。

 まあ、二人とも最高に気持ちのいい奴だってのはわかっているから、僕も自然と笑顔になる。


 商業学校に進みたいパックとリリアンは3組になる。ここでお別れになるけど、帰りには一緒に帰るから、半日の辛抱だよと言い聞かせ、リリアンをパックに預ける。

 掲示板を確認すると、ラクアはやはり政経学校に進むため、1組になっていた。ラクアの友達である猫族のプラージュも1組に行くみたいだ。

 2年生から、1組と2組は政経クラス、3組は商業クラス、4組と5組は農工業クラス、6組が冒険者クラスとなる。


「うわ・・・男しかいないじゃん・・・」


 チオが教室の中を眺めて、落ち込んでいる。

 まあ、両親が冒険者でもない限り、魔物と戦いたいなんて女の子は少ないだろうと思っていたけど、さすがにほとんど男の子だとちょっとがっかりするなあ。

 まだ半分くらい席が空いているけど、女の子は本当に少ない。


「チオ、委員長がいま・・・いるぞ、挨拶しよう。」


 ドッコが委員長に手を振ると、委員長もこちらを認めて、暗かった顔がぱっと明るくなった。


「よかったあ!男の子ばっかりで、少し不安になってたんだ。2組からは、女の子が二人しかこないんだよ!」

「あ、委員長・・・シエラちゃんだけじゃないんだね。あとは誰?」

「掲示板見なかったの?エムルちゃんだよ!」

「「「げ・・・」」」


 3人で顔を見合わせ、悲しい気分になる。

 エムルは両親が領主軍でも結構な身分らしく、休み時間にライル達3人が暴れているといつもちょっかいを出してきていた。

 今だって、後ろから僕達を押しのけて真ん中に陣取って意地悪く言うんだ。


「そこの3人、邪魔よ。さっさと自分の席に行って大人しくしていなさい。」


 こんなふうに、いつも僕達の間を無理に押しやり、楽しい時間を壊してくれる。


「シエラちゃんおはよう。だめよこんな3人を相手にしていたら。女の子が少ないんだから、しっかりしなさい。」

「エムルちゃんおはよう。でも、2組の仲間だったんだから・・・」

「だめよ、ドッコ君はともかく、チオとライルは不真面目の塊りなんだから、無視しなさい。」

「ちょっと待てよエムル!だれが不真面目だって?酷いよ!」

「チオ、ここにはあなたをかばう可愛い子はいないの。真面目にしていないと、冒険者学校に進めないわよ。」


 確かに計算の時間なんかは、あまりの簡単さに寝てたりしてたけど、悪いことは・・・あまりしてないぞ!

 といっても、エムルに口で敵うはずもなく、僕達は席について、他のクラスメイトを眺める。

 エムルの後ろで、両手を合わせてごめんのポーズをしているシエラちゃんに癒されたから、まあいいんだけどね。


 このクラスには男の子が多いって言ったけど、そのほかには獣人が多いことも特徴になっている。

 大体が人と変わらない姿形をしているんだけど、耳や尻尾、角や牙が生えている子も多い。

 ドッコと同じくらいの背をしている子も2,3人いて、そのうちの一人は、顔も鱗に覆われた竜人族の子みたいだ。小さな角も見えている。

 チオだって、顔にも毛が生えて豹の斑点も見えているし、爪も結構鋭いけど、ほとんど人と変わらない姿だ。

 この自治領には、多くの冒険者がいるけど、冒険者は獣人が多いってのは本当だったんだな。


 始業時間が来て、担任の先生が教室へ入ってくると、騒がしかった教室は波が引くようにシーンとなった。

 いつも厳しいと思っていたリモーネ先生が、急に懐かしくなってしまった。


 ランニング姿で教壇に立ったのは、立っているのに床まで届きそうなぶっとい腕をした大熊猿の獣人デガン先生だった。


「ようこそ2年6組へ。このクラスに来たということは、みんな強くなりたいという気持ちを十分に持っているということだろう。その気持ちをしっかりと私が育ててみせよう。頑張ってついてこいよ!」


 デガン先生は、生徒を丸呑みにできそうなほどに、口を大きく開けて笑いかけてきた。

 えっと・・・魔獣じゃないんだよね?

 シエラちゃんが小刻みに震えているけど、少ない女子の中には泣いちゃった子もいるみたいだ。

 大丈夫なのかな・・・。



「ライル=ユニベルセ!」

「はい!」

「ん?ユニベルセ?え?剣姫?」


 なんか僕の顔を見て、点呼を取っていたデガン先生が固まったぞ?

 それに剣姫?なんのことだろう?

 みんなもざわついてきたけど、すぐに再起動したデガン先生は、点呼を続けているからざわつきも減っていった。




「剣姫?なつかしいわねえ。ああ、担任はデガン君なの?ママの後輩よ、あの子。ちょっとは強くなったって聞いたけど、冒険者を引退して、学校の先生になったのねえ。」


 デガン君?後輩?あの子?って、ママは冒険者だったけど、デガン先生のことを話したら、弱虫のデガン君がねえ・・・とか、あの子ったら、ちょっと強い魔獣を見ると、私の後ろに隠れていたのよ・・・とか恐ろしい話をしてきた。


「ね・・・ねえ、ママってもしかしてかなり強い冒険者だったの?」

「ん~。いま自治領にいる冒険者で、私よりランクが高い冒険者っていたかしら?」

「えええ!?なにそれ!」

「冒険者向きのギフトをもらったから、結構LVも上がってたからね。迷宮も40階までは踏破したから、時間ができたら引率者を引き受けようかしら。」


 そう言いながら出してきたパイオニアカードには、ギフト『剣舞』と、LV45の文字が燦然と輝いていた。


「えっと、ママ?なんでこんなとこで店長なんかしてるの?」

「それはね、旦那様を愛しているからよ!」


 うん。ごちそうさま。


ライルとリンダのママはラギョースキの後妻になります。

他の4人の兄弟を生んだ前妻は、ママのお姉さん。

病気で早逝してしまいました。

ちょっとした設定です。

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