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恋時雨
女性の視点です。
土砂降りの降りやまない日々
私はこの雨が好きでした
あなたは雨に打たれながら
傘を貸してくれました
「ありがとう」
その詞〈ことば〉を言う前に
あなたは雨に打たれながら
全力で
走っていきました
後日の学校帰り
びしょ濡れになっている
寒そうなあなたを見掛けました
大きな体を丸くしてる
そんなあなたがいました
「この前はありがとう」
私はあなたに
傘を返そうとしました
「次からお前、傘持ってくるなよ」
「どうして?」
「俺が毎日差しに来てやるから」
あれから
雨が恋しくなりました