宣戦布告
頂上決戦。
目の前で繰り広げられている戦闘は、そう言ってしまっても決して過大評価ではないだろう。
かたや白兵戦最強とまで言われる伝説のアバター『剣の魔女』。
かたや『ペルソナクライン』最大のアライアンスの長である『聖銀の女皇』と、その腹心である『太陽の騎士』。
この三人のトップランカーたちが一堂に会し、丁々発止を繰り広げるなど、滅多に見られるものではない。
そして、只人である陸朗が手が出せるような雰囲気でもない。
自分以外もそうだ。
先ほどまでガウェインと共に槍先を揃えて、自分たちを囲んでいた騎士団員たちは、全員魅入られたように戦いから目を背けることができずにいる。
圧倒されているのだ、彼らもまた。
そもそも『白銀騎士団』においてガウェイン直属の部下として女皇の警護を行っているアバターは相当の手練れのはず。しかし、そのレベルのアバターですら、最強クラスの戦いには、気を呑まれてしまうのだろう。
ましてや一凡人である自分では、とても手が出せるような雰囲気ではなかった。
(……俺は、どうしてここにいるんだろう)
狂おしいほどの無力感が、胸の奥をかき乱す。
そういえば──あの時もそうだった。思い出したくないことを、思い出した。
それはずっと、ずっと前のこと。かつて彼にも『仲間』と呼べる者たちがいた頃のこと。彼は──仲間から見捨てられたのだ。
たった一つではあるが、幾多の偶然と幸運にも恵まれて、仲間と力を合わせて勝ち取った『城』。そこを守るための『領土戦』で、彼は絶望を味わった。
圧倒的な戦力を見せつける大型アライアンス──『白銀騎士団』の侵略が、彼から全てを奪い取った。
徹底抗戦を唱えた彼と異なり、彼の仲間たちは降伏を選んだ。それ自体は、責めるのは酷というものだろう。
戦力差は圧倒的だったし、組織拡大を目論んでいた敵アライアンスは有利な条件を付けて、吸収合併を申し出ていたのだから。
しかしそれでも陸朗は、ジェット・バレルは、力に屈するような真似はしたくなかった。今勝てずとも、己が折れることなければ再起できると信じていた。
しかし現実は──彼が思っているよりも、ずっと冷酷なものだったのだ。
彼に待っていたのは、アライアンスからの追放。
抗うどころではない。何かさせてすらもらえずに、彼は自分の居場所から追い立てられた。
『ペルソナクライン』はゲームだ。命まで奪われるわけではない。
だがその仕打ちは、対戦で受けたどんなダイレクト・フィードバックによるダメージよりも痛かったことを覚えている。
その後、所属していたアライアンスのメンバーがどうなったのかは知らない。『白銀騎士団』に吸収された以上、もしかしたら今この場にもいるかもしれないが、そんなことはどうでもいい。彼らのアバターの姿など、もはや覚えてすらいないのだから。
結局は見捨てる程度にジェット・バレルの存在が軽かったように、彼の中でもまた、かつての『仲間』は真の友ではなかったのだ。
(そうだ、あいつらのことはどうでもいい。どうでも良くないのは……こっちだ)
彼は『白銀騎士団』が嫌いだ。騎士団を統べる『聖銀の女皇』が嫌いだ。女皇を守る『太陽の騎士』が嫌いだ。吐き気がするほど大嫌いだ。
だが──彼は何もしてこなかった。逆恨みでしかないとうそぶいて、物分かりのいいふりをして、彼らから目を逸らし続けた。
なぜか? 決まっている。
一人で勝てるわけがないと、頭から決めつけていたからだ。
仲間など信じられないと、孤独に逃げ込むようになったからだ。
そんな身の上には、イケブクロ・エリアのカオスに浸っているのが心地よかったからだ。
しかし、その偽りの安寧は破られた。一人の魔女が混沌と堕落の渦巻くあの場所から、無理矢理ジェット・バレルを引きずり出した。
彼のために? それは違う。
彼女は彼女自身の目的のために、ジェット・バレルというアバターを必要とした。それだけの理由だ。
彼のためにという気持ちなど、一ミリだってありはしないはずだ。
(……ホント勝手な人だよな)
二対一、押されつつあるとはいえ、堂々と渡り合う彼女の戦いを見ていたら、思わず笑みが浮かんでいた。
ああまで身勝手にこちらを振り回してくれると、むしろ清々しいくらいだ。
奸智に長けた彼女のことだ。おそらく今、自分がこんな風に考えていることも、きっとお見通しなのだろう。そしてこれから、自分がどうするのかも。
魔女の『毒』はもう、すでにこの身に回っている。
差し出された手を振りほどかなかったときから、それは分かっていた。だからもう、こうするしかない。
「……恨みますよ、会長」
一瞬、戦闘中の彼女と目があった。やるなら早くやってくれ──そんな風に言っているように思えた。
アイテム・インベントリを開き、愛用のロング・ライフルをロード。実体化した瞬間、射撃モードをスナイピングにセットし、引き金に指をかける。
(どうせ、元から後戻りなんかできないんだ)
ここに来る前、ストレーガに言われたことを思い出す。
ならば、躊躇の必要はない。
周囲のアバターは皆、魔女と女皇たちの戦いを注視している。今なら一歩、先んずることができるはずと確信した。
「……撃ち込むのは、一撃っ!」
ワン・ショット・キル。
狙い澄ました銃弾が、ロング・ライフルから撃ち出される。
空を切り裂く、超音速の殺意が牙を剥いた。
「ッ!?」
炸裂音がして、巨大な『重戮槍』を取り落とすガウェイン。
動作したままの可動刃が床を引き裂き、鉄柱のような槍が狂ったように暴れ回る。何が起こったのか理解できないといった雰囲気が、ガウェインの巨体から感じられた。
「ガウェインッ!?」
「問題ない。損傷は軽微だ」
片腕を押さえながら、ガウェインが答える。
肘だった。
ジェット・バレルは高速で動き回る三人の乱戦のさなか、動きを予測し、タイミングを図り、肘という一点に銃弾を叩きこんだのだ。
朝飯前──とまではいかないが、本気になればそのくらいの芸当はこなしてみせるのが、ジェット・バレルというアバターだった。
「ははっ! 当てた、当ててくれたか! どうだい。すっごいだろう、僕の相方は?」
動きを止めたストレーガが、まるで我が事のように誇らしげに胸を反らす。
気に障ったのだろう。遠目からでも分かるほど不機嫌そうにそれを一瞥すると、女皇はいまだ肘を押さえたままのガウェインに尋ねた。
「あのアバターは?」
「……魔女のパートナー。以前吸収したアライアンス、『インペトゥス』の残党だ」
「なるほど……まつろわぬ者というわけね」
「それは、あんたらにってことか?」
ゆっくりと歩きながら間合いを詰めていくジェット・バレル。
周りにいた『白銀騎士団』たちアバターがざわめいているが、気にも留めない。来るなら来いという開き直りの気持ちで、悠然と歩みを進める。
彼の雰囲気に気圧されたのか、騎士たちは誰ひとりとして手を出そうとはしなかった。
「……その通りだ」
『重戮槍』をゆっくりとした動作で拾い上げながら、ガウェインが彼の前に立ち塞がる。
「まつろわぬ者。仲間に捨てられ、居場所を失い、なおも女皇に膝を屈さなかった者よ。魔女の手を取り、何を為す気だ?」
「……何をしてほしい?」
引き金に指をかけたロング・ライフルを弄びながら、逆にたずねる。極めて挑戦的、挑発的なその言葉に、ガウェインの肩がぴくりと動いた。
「失せるがいい。我らと魔女との戦いは、卿のような者が首を突っ込むべきではない」
「できれば俺もそうしたかったんだけど、そこな魔女にはめられてね。一人じゃ逃げ出すことすらできやしない。後退って選択肢は、もうねぇんだよ」
「手を出さなければ、見逃してやったものを」
「冗談じゃない、哀れみなんざまっぴらだ……ったく、気に入らないぜ、その傲慢な口振り。あんたら、いつもそうだ。自分たちの都合ばかりを押し付けて、何もかも踏み潰して飲み込んでいくんだ。よく知ってるよ、あんたらのやり方、考え方ってやつは」
腹が決まれば、言葉はすらすらと出てきた。どれだけ相手が強大だろうと、そんなの知ったことではない。今この場でしか言えないことを全て吐き出してやる。そんなつもりで言葉を重ねる。
「全ては卿が、卿たちが弱かったからだ。弱い者は奪われる、それが世界の摂理というもの」
「……っ!」
言葉に詰まるジェット・バレル。
冷酷な意見だったが、それは事実で真実だ。
確かに『ペルソナクライン』というアプリケーションは、奪うか奪われるかを前提にして設計されたシステムを持っている。プレイヤーならば誰もが知っていることだ。
だからこそ、プレイヤー個々人のモラルが問われるのだ。
「まったく……何も変わってない、成長がない、度し難い」
「魔女……!」
だらりと剣をぶら下げた魔女が、いつの間にかジェット・バレルの隣に立っていた。その視線は、ガウェインと女皇をしっかりと見据えている。
パートナーを従え、睨み合う魔女と女皇。因縁、確執……本来無形であるはずの感情が形を持ったかのように、四人の間で雷光と火花を散らす。
「変わらないのは、あなたのほうよ。私は変わった、変われた。だからこそ今、ここにいる。『白銀騎士団』がある」
「こんなお山の大将に、何の価値がある? 見かけばかりが大きくなっても、中身が力と恐怖で従えた有象無象じゃ意味がない」
「……彼らは私を慕ってくれる、大切な人たちよ。従えているつもりはないわ。守ってくれているのよ。私のために、彼らはある」
「ふぅん……大した信頼だね」
そう皮肉げに言って、ストレーガは続けた。
「だいたい、この僕を前にして彼らがものの役に立つとでも? 十人二十人、いや百人やそこらいたところで、僕を止められるものか」
圧倒的なまでの自信。だが、彼女の言葉に嘘はない。
乱戦で百人を討ち果たすというのも、ストレーガであればやってのけるだろう。
そういう存在であると、その佇まいこそが雄弁に語っている。いくつもある魔女の恐怖を語るための形容詞は、決して大仰なものではない。
しかし、そんなストレーガを前にして、女皇はいささかも心を乱した様子がない。
彼女の力をよく知りつつも、確信を持ってその前に立っているように見える。
「ガウェイン以下、私のための近衛騎士たちよ。あなたがどれほど強かろうとも、彼らが食らい付いている間に、私があなたの急所を討つ。忘れたの? 二年前、あなたはそうして私たちに敗れたことを」
女皇は言葉を切ると、己を両腕で抱き、マント状装甲をを翻しながらくるりと楽しげに回る。
挑発──というわけではない。心の底から楽しげに、楽しいから回っているのだ。
「二年前とは、もう違う」
ぎしっと魔女の指が音を立てた。鋭い鉤爪にも似た、金属で出来ているはずの指が、握り込まれて悲鳴を上げている。
すぐ分かった、彼女が計り知れないほどの怒りをそこでせき止めているのだと。彼女に少しでも自制心が欠けていれば、後先考えず、すぐにでも女皇に斬りかかっていたであろうということを。
「何が……違うと?」
「僕も知った。一人では、できないことがあると」
「ふぅん……それで、そのアバターを?」
冷ややかな言葉、射貫くような鋭い視線。女皇が放つ敵意そのものが、ジェット・バレルに叩きつけられる。
「分からないわね。何もかもを失い、スピット・ダンプに逃げ込んだ負け犬に、あなたは何を期待しているの?」
「……『怒り』だよ」
「怒り?」
「そうだ。お前が今日まで踏みにじってきた者たち……ジェット・バレルはその一人だ。彼の持つ『怒り』こそ、僕は欲しかった」
「逆恨みじゃないの? さっき、ガウェインが言ったはずよ。弱いのが悪いのだと」
女皇は微塵も心を動かされた様子がない。
彼女もまた、ストレーガとは別の意味での圧倒的な強者だ。
己に従う者への慈悲はあっても、敵対する者には容赦がない。切り捨てる。切り捨てて、進むことができるだけの力を持っている。
「そうして全てを踏みにじり、お前はどこまで行くつもりだよ」
「……無論、『この世界が終わる日』までよ。私は勝ち続ける。勝ち続けて、守るの。私がここで得た、全てのものを。その中にはもちろん……」
意味ありげにストレーガを見る女皇。絡みつくようなそれを斬り伏せるがごとく、ストレーガは愛剣を彼女へと突き付ける。
「やめろ。僕はお前の『所有物』じゃない。お前と僕は道を違えた。交わることは、もうない」
「……言い方が悪かった? 別にあなたのことを『物』だなんて思ってないわ。あなたは私の大切な『親友』……私は今でもそう思っているのよ?」
朗らかで穏やかな意味を持つその言葉。
だが陸朗は、そこから言いようのないおぞましさを感じた。何か得体の知れないものに包み込まれるような、そんな恐怖が背筋を駆け上る。
ストレーガの側にいるだけでそうなのだ。直接向けられているストレーガの感情は、察するに余りある。
エフェクトのかかっていない素の声からして、女皇は現実でのストレーガと大差のない年齢だろう。
高校生──子供ではなく、大人にもなりきれない。まだ少年とか、少女とか、そういう言葉で語られる年齢のはずだ。
にも関わらず、その言葉から感じられるのは『母性』に似た、それでいて負の情念のこもった『何か』だ。
演技ではない、心の奥底からわき出る、包み込むような『何か』。
欲してやまない、飢えて求めるような感情が目に見えるようだった。
「……残念だが、僕はもうそう思っていない。お前とは親友だった。過去形だ」
「寂しいことを言うのね。私はあなたが戻ってくるのは、ずっと待っているのに」
「お前がお前のやり方を変えない限り、それはあり得ない」
「どうして?」
心底、何を言われているのか分からない。そんな様子で、女皇は首を傾げる。
これまでの彼女の言動、そのベクトルは全て「ストレーガのために」という方向で一致している。その反応も、納得はできる。ただし、それはこの上なく独善的だった。
今、女皇はストレーガと会話をしている。
しかし、彼女の言葉を聞いているようで聞いていない、聞く気がない。
言葉が交わされているわけではなく、魔女の言い分はすり抜けていき、ただ一方的に女皇が自分の意志を告げているだけだ。
「悲しいわ、私の友情を疑うなんて」
「僕は真面目な話をしているんだ!」
芝居じみた女皇の態度が、よほど癇に障ったのだろう。彼女らしからぬ──そう言い切れる剣幕で、声を荒げる。
「私はいつも真面目よ。こんなことで冗談は言わないもの」
「なお悪い。冗談でないのならね」
彼女たちにかつて何があったのか。ジェット・バレルはそれを知る由もない。しかし、二人のあいだに横たわる溝は、とても深く広いものだということは分かる。
「僕たちはもう道を違えたんだ。お前の元に戻る理由も、意志も、僕にはない!」
そう答えたストレーガの言葉に揺らぎはない。それは完全なる決別の言葉だ。
二人の会話から察するに、何度もこの種の会話は交わされてきたのだろう。
だが、女皇は彼女の翻意を願い、魔女はそれを否定し続けている──といったところか。
こういうものは、どこまでいっても平行線で終わる。話の前提がすでに違うのだ、普通に考えれば、歩み寄ることなどあるはずがない。
「どうしても?」
「くどいよ。何度繰り返させる気だ。お前の時間は、あの二年前から止まっているのか?」
「くどい……?」
女皇の声色が変わった。
今までの、どこか譫言めいた現実感のない言葉ではない。そこには包み隠していた、生の感情が少しだけ透けて見える。
「そこまで言うの? そんなにも、私の元には戻りたくないの?」
「当たり前だ。お前がやっていることは、ただのアライアンスの拡張じゃない。ペルソナアバターの、プレイヤーの駆逐だ。そんな奴のところに戻る気などない!」
ここ一年半で一気に最大勢力へと踊り出た、トーキョー・スフィア最大のアライアンス、『白銀騎士団』。その手腕は強引かつ悪辣だ。
ジェット・バレル自身とてイリーガル・プログラムを使う者だ。けっして褒められることをしている存在ではない。しかし騎士団は、そんな彼が思わず眉を潜めてしまうほどのやり口を使うのだ。
「僕はあれほど言ったはずだ、強引で卑劣なやり方はやめろと! アライアンスを大きくするのはいい、だが……正々堂々とした手段でやれと!」
とにかく使えるものはなんでも使う。
あらゆる手段を使って、自分たちの勢力を大きくする。それが『白銀騎士団』の基本理念だという。
敵の主力を通常対戦で『活動臨界』へと追い込み、『領土戦』に参加させないなど、ゲーム内で完結するものはまだ序の口。
嘘か誠か、暗号取得プログラムによるアカウントハックや、あまつさえ運悪くリアル割れしていたとあるアバターが拉致監禁スレスレの行為まで受けた、などという都市伝説めいた話すらある。
滅多に運営が動くことがないという『ペルソナクライン』の特殊な事情もあいまって、深層は闇の中だが、かようなほどにダーティーな手段を活用している──『白銀騎士団』というアライアンスに、そういう噂は数え切れないほどあった。
「何が『騎士団』だ、聞いて呆れる。プライドのないやり方で、一体何が得られるっていうんだ!?」
「……私には、私の居場所を守る義務と責任があるの。そういう私のやり方に、ガウェインたちも付いてきてくれているのよ? 大アライアンスのリーダーというものはね、その『場』を維持するため、どんな努力だって惜しむことは許されないの」
「しかし……!」
諭すような女皇の言葉。
だが、それでストレーガが納得できるはずもないのは当たり前だ。
きっと二年前から、ずっと同じことで意見を戦わせてきたに違いないのだから。
「ガウェイン! お前たちはそれでいいのか!?」
「……我は、いや我らは女皇の言葉に従うまでだ。二年前に、我はそう決めた。そうだ、貴様が騎士団を去ったあの日からな」
憮然とした態度で、ガウェインが答える。どうやらこの巨体の騎士も、二年前の事情を知る者の一人ということか。
「そうか……じゃあ僕から言うことはもう何もないね。後はこの剣で示すのみだ」
「あら、何をする気なのかしら?」
「言わなくちゃ分からないのかい?」
小馬鹿にしたような女皇の台詞にも、魔女は動じた様子がない。
誰にも、何にもはばかることなく、ただひらすらに自分の意志を示す。それが『剣の魔女』のあり方だ。
傲岸不遜に胸を反らし、この場にいる誰よりも尊大に振る舞う。文句があるなら勝手に言えとばかりに、とりつく島もない。
ふふんと鼻を鳴らすと、ジェット・バレルの腕を取り、己の腕に絡ませる。そのままぴたりと女皇を指差して、高らかにこう宣言した。
「決まってるだろ。僕がやることなんて、二年前からたった一つきりだ。お前と、お前の騎士団を叩く……叩いて潰す! 僕と、この『黒い銃身』とでね」
冗談を言っている様子はない。彼女は真剣だ。そしてそれが可能であると、間違いなく信じていた。
「宣戦布告だよ、『聖銀の女皇』。お前と、僕の……僕たちの戦争だ」