TAKE ONE CHANCE
『剣の魔女』と『聖銀の女皇』。
二人の戦いは白兵戦においてまさに互角。
ストレーガの得意分野においてこの結果は、極めて苦しい状況であると言わざるを得ない。
だが、彼女が少しでも距離を離せば、強力な『詠唱兵装』による攻撃が飛んでくる。
さすがに詠唱時間のかかるものは使えないようだが、射出までが早い速射誘導弾による攻撃は、ストレーガの切り払いをかいくぐって、彼女へ確実にダメージを与えていた。
このままではじり貧だ。先にライフポイントが尽きるのが魔女であるのは、誰の目にも明らかだった。
(どうする……!?)
見守るジェット・バレルの心中では、焦りが募るばかりだ。
自分の仕事をしろと彼女は言っていた。だが、本来任されたガウェインを引きつけるという役目はすでに終わっている。だったらこの上、何をしろというのか。
何もしない──という選択肢はない。
何故この場に自分がいるのか? 魔女と手を組み、魔女を助けるためではなかったか。
それを忘れるような選択など、できるわけがない。
かといって、彼に出来ることは多くない。
見とれるほどに激しく戦う二人の間に、割って入るだけの勇気も技量もない。
下手に近付いて手を出せば邪魔になり、かえって魔女を不利にするだけだ。
悔しくとも、それが事実。
ならば、どうする。
ならば、持ち味を生かすしかない。
遠距離からの支援射撃──ジェット・バレルにできることと言えば、それだった。
しかし、目まぐるしく攻守入れ替わる二人の戦いには、彼の射撃精度をもってしても、容易に弾を撃ち込むことができない。
だが、やるしかないのだ。
このまま放っておけば、魔女は──魔女は、負ける。そう、負けるのだ。
(負けさせるわけには、いかないっ!)
彼は、覚悟を決めた。
本体に負けず劣らず傷だらけのロングライフルを構え、チャンスを待つ。もっとも効果的な支援射撃とは、何かを考えながら。
おそらくジェット・バレルの火力では、女皇を守る『頭首支援スキル』の一つ、自動防御フィルタを貫通するのは難しいだろう。
ジェット・バレルも彼女と同様にスキルの恩恵を受けている身だが、支配領域が増えるほど効果が強力になるという『頭首支援スキル』の特性上、その強化される幅が違うのだ。
悔しいが、もともとのスペックと技量までも考慮するなら、直接彼女を狙うことは無意味に等しい。
何より、ストレーガはそれを望まないだろう。
そしてまた、あくまでも主役は彼女であるべきなのだ。
たしかに自分を一人のアバターとして見ようともしない女皇や、買い叩くことができると無意識に軽んじていたガウェインには腹が立つ。
『白銀騎士団』に目に物見せてやろうと思った、その気持ちには嘘偽りなどない。
しかし、あくまでも自分は介添え役であるべきだ。
魔女を女皇に勝たせることこそ、自分という存在を知らしめる手段なのだ。
最後に魔女が勝ったとき、その横に自分がいればそれでいい。
彼女を助け、守ることができればそれでいい。
多くは望まない。ただ千載一遇の好機だけが、今の彼は欲しかった。
ストレーガの強いところはもっと書きたかった