表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
仮面の魔女と黒い銃  作者: 桂樹緑
死闘、太陽の騎士
19/31

分断作戦

「おのれ、魔女め……!」


 縦深陣を回り込み、女皇の近衛へと戻ったガウェインは、心の底から悔しそうにうめき声をあげた。

 無理もない、今のところ魔女とその協力者に、いいように引っかき回されているのだから。

 そんなガウェインとは対照的に、女皇は顔色一つ変える様子なく、魔女と交戦する自軍を見つめていた。


「焦っちゃダメよ、ガウェイン。数ではこちらが勝っているのだから問題ないわ。事実、騎士団は少なからず魔女を足止めできている。このあいだに、できることをやるべきよ」

「しかし……」

「物事は順番というものがあるのよ。まずは……あの小うるさい狙撃手を黙らせるべきじゃない? 支援と前線を分断する。戦の基本だと、私は思うのだけど」


 ちゃりん、と法杖を小さく鳴らし、ビルの上を指す。

 その天辺には、物陰へ巧妙に隠れているが、確かにアバターの姿が見えていた。

 あれをまずはなんとかせよ、というのが女皇の作戦というわけだ。


「とはいえ、参ったわね、情報ノイズが出た時点で、もっと伏兵を警戒すべきだった……いえ、警戒が足りなかったのとは少し違うか。あの狙撃手の能力が、こちらの想定以上だったというだけかしら。どちらにせよ、その齟齬っていうのは修正が必要よねぇ? 手っ取り早いのは、即時排除ってことになるかしら」

「しかし、誰があそこまで? 中から攻めるにしても外から攻めるにしても、あの徹甲爆裂弾アーマー・クラッシャーの狙撃は厄介だ。あれに盾抜きで耐えられるのは、我くらいなものだが……」

「だったらあなたが行けばいいのよ。当然でしょ?」

「そ、それは」


 虚を突かれたような言葉だった。

 たしかにあの狙撃に耐えうるのが自分しかいないのであれば、自分がやるしかない。

 だが自分には女皇の近衛を統率するという役目もある。

 自分の身は一つしかないのだ。どちらが今、重要であるか──にわかに判断はつきにくい。


「我が女皇のそばを離れるわけには……」

「もっともな意見だわ。私とあなたの分断こそ、敵の目的だものね。でも、ここは相手の思惑に乗ってあげましょう」

「なぜ?」

「あなたの力ならば、上にいるのが誰であれ、軽々ひねり潰せるでしょう? そうしたら、とんぼ返りで戻ってくればいいのよ。可能な限り早く。上手くいくかどうか、じゃないわ。やるのよ、勝機とはそうやって掴むものだわ」

「……たしかに、これ以上戦力をすり減らされるわけもいかん。そこまで言われたなら、やってみせよう。だが、護衛は……」

「大丈夫よ。『頭首支援スキル(マスター・バッフ)』が効いてるもの。今の私なら、あの子とだってやり合えるわ」


 女皇の身体には、ぼおっとした光のエフェクトがかかっていた。

 これこそ城を持つアライアンス・リーダーのみが恩恵を受けられる、『頭首支援スキル(マスター・バッフ)』による特殊支援効果だ。

 ステータスの底上げや、自動防御フィルタなど、この恩恵によって頭首の戦闘能力は大きく引き上げられる。

 たしかに豪語するとおり、今の彼女ならば魔女と本気で立ち合うことも可能かもしれない。


「……了解した」


 ガウェインもそれで納得したのだろう。

 首を動かし、重々しくうなずく。

 そして鋭い目付きで、シタデル尖塔を見上げた。決然としたその雰囲気は、今までどこか違っている。

 ビリッと、空気が帯電を始めたような錯覚を覚えるほどだ。


「……待っていろ、すぐそこまで行ってやる」


 ガチャリ、と音を立てて愛用の『重戮槍(ミンチ・ランサー)』を構える。風を巻き込みながら槍の可動刃が回り始め、それと連動するように、先端部より赤黒い光が球状に集束していく。球状の大型エネルギー弾だ。


「フッ!!」


 気合いとともに、槍ごとエネルギー弾を撃ち出す。

 狙いは上空、もちろんさきほどの狙撃を行った者がいたあたりだ。

 もちろん、この攻撃で対抗しようというのではない。射程や威力こそ十分だが、いかんせんガウェインの砲撃はチャージに時間がかかる。使い方次第とはいえ、専門のガンナーと撃ち合いをやれるほどではない。

 そう、つまりこれは威嚇であり、宣言だ。今から貴様を討ちに行くぞと、ガウェインは()()()()()()、すなわち『敵』に向かって宣言したのだ。

 一度腹を決めれば行動は早い。ガウェインは手近な味方に向かって命令する。


女皇警護騎士クローム・センチュリオンを四人抜く! 上空へ向かうぞ、機動装備で我に続け! 全員で両翼を固めろ!! 頂上の狙撃兵を囲んで一気に撃滅する!!」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ