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マツリの意味(1)


「皓介よ、1人で行動するのは危険じゃ。何かあってからでは遅い……」


「すみません。ボクもまさか彼の家まで行くことになるなんて」


「まあよい……それもまた必然なのかも知れぬ」

 かいりん様はそういって笑った。


「ところで、彼のいった《ツ》の者とはなんのことなのでしょうか?」

「……あたしも驚いたよ。ずいぶんと昔に1度だけ聞いたことがある」


「ずいぶん昔?」

「ああ……ずうっと昔じゃ。

 あたしがまだ20歳くらいの……まだ、ふたやのあみじゃったころじゃ。

 あたしもあたしら自身を考える時、どう呼べばいいのか迷うてな……当時のかいりん様にうかがったことがあったんじゃ……ホッホッ。

 今考えるとなんとも青いことじゃ」


 かいりん……おばあちゃんがふたやで、当時かいりん様が他にいたなんて、ちょっと想像できないな。

 かいりん様はボクが生まれた当時からかいりん様だったし。


「ホレ、ちょっと目を閉じてみい」


 おばあちゃんが笑いながら、記憶の中から当時のかいりん様の姿を伝えてくれる。

 今のかいりん様より少し小柄だけど、やっぱり優しそうなおばあさんだ。


「樋沼ゆゑさんというてな。

 そりゃあええ人じゃった……。

 働き者で優しゅうて。次元バランス修正中じゃのうて天寿をまっとうされたんじゃ。

 まさかその後をあたしが引き継ぐなんて考えもせなんだ」


 ふたやの1つ亢は、前のとかきがあの子を連れて来るまで長い間空いたままだった。


 まさか、8歳の女の子がふたやになるなんて誰も想像していなかったけど、その子が開放した能力は、当時からふたやの中でも一番弱かったボクよりはるかに大きかったんだ。



「……それでゆゑさんに尋ねるとじゃな……『名を付けることは命を与えることじゃ。

 与えられた命は、いつか必ずお返しせなならん。

 わしらがおらんようになったらこの世が困りなさる……どうしてもというんなら《ツ》と呼べばええ。

 この世のマコトを釣り合わすマコトの奉りの《ツ》じゃ』と教えてもろうた」


 釣り合いの《ツ》の者……なぜそんなことを岡村君が知っていたんだろう。


 彼にはあの負のエネルギー以外にまだ何かあるのかな……ボクは彼に勝つことができるんだろうか?



「皓介よ……勘違いするでないぞ。

 勝ち負けではない。

 あたしらが《ツ》の者なら、相手は魔物……《マ》の者じゃ。

《マ》と《ツ》が理にかなってマツリ……奉りとなって祀り合わせて、釣り合うのじゃ。

 憎むでない、恐れるでない」


 ……彼と釣り合う?

 そうか。


「そうですね。勝ち負けじゃない……結果的に勝ち負けはあるでしょうけど、初めからそれを意識していたんじゃ、釣り合わせるなんてできませんね」


「そういうことじゃ。それはあたしらの役目、バランスを護ることと同じじゃ」


 かいりん様の言葉で、なんとなく引っかかっていた気分がスッキリした。


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