最後の偶然(2)
次の日は、なくなった葬祭会館のことで、日本中からマスコミが集まったような騒ぎになった。
あまりの騒ぎに授業は午前中で途中で打ちきられ、うちに帰ることになったけど、岡村君が来ていないことには誰も触れなかった。
帰る前に神社に立ち寄ることにした。
あの時、この御守りがなかったら……。
本殿に深々と頭を下げる。
感謝の気持ちでいっぱいだった。
かすかな雅楽の音色に顔をあげると、正面に懐かしい顔が並んでいる。
やっぱりそうだ。
あの時、御守りから感じた気配……一番中のよかった男の子を中心に、みんながボクを見て微笑んでくれている。
ボクも微笑み返し、もう一度深々と頭を下げる。
複雑な思いが吹き出して、ただ、涙が出た……。
「熱心だな、何をお願いしてるの? 三の関くん」
背後から声をかけられて、振り返るとそこには……。
「岡村……君?」
ペッキーに融合されて死んだはずの彼が、子犬を抱いて立っている。
そうか……世界はもう1つ偶然を起こしてくれたんだな。
もう彼からは、ヒズミやヒズミを呼び込んだペッキーのような波動は何も感じられない。
そして彼がペッキーを呼び込むことになった理由も分かった。
ボクと融合できなかったペッキーは、固有の霊波長がボクと似ている彼を替わりに選んだんだ。
結局、何もかもボク自身がまいたタネだったんだな。
「学校に行く途中で、こいつ見つけてね。
捨てられたんだと思うけど、ケガしていたから放っておけなくて」
「どこにいたの?」
「小学校近くの河原だよ。
ボクんちマンションだから飼えなくて。
こっちのほうなら人も多いから、誰かもらってくれるんじゃないかと思って」
その子犬は左の耳が半分ちぎれていて、体のあちこちも擦り切れたように傷ついていた。
「だったら、ボクが飼おうかな。
うちのマンション建て直してからペットを飼ってもいいようになったし、親とも犬を飼おうかって相談していたところなんだ」
「だったら助かるよ。
ほんとは、どうしようかと思ってたんだ……でもその前に獣医さんに連れていって、手当てといろんな予防注射打たないといけないよ。一緒にいこうか?」
「へえ、詳しいんだね」
「むかし犬飼ってたことあるから。
あ、獣医さんに行くと、受付ですぐこいつの名前聞かれるけど、どうする?」
「それならもう……」
決まってる 了