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記憶(3)


 そこへ『おさ』が能力に目覚めたものを感じ取り、次元バランスを護る仲間を迎えにやらせ皓介を『むうの地』に移した。


 そこで気がついた皓介は仲間となり、最弱のふたやとして役を担うことになった。


 この記憶は長によって、彼の記憶の奥の奥に封じ込められていたものだ。





「ペッキー! くるな! くるな! くるな!……」



 恐怖で思考が退化している。

 あの時の精神状態そのままだ。


「皓介!」




 皓介の頬を平手で殴りつけた。


 とかきに平手で頬を殴られた。



「コイツの正体は分かっているんだろう!

 俺達が担っている使命そのもの……キャヒルグ・スナッフォンとの生存競争に敗けた『絶望の敗者』ミャヒルプ・グルラトじゃねぇか!!

 自分の意思で、次元バランスを崩壊させることのできる次元生命体だ!

 おまえの手で、ケリを着けないといけねぇヤツなんだろうが!」



 とにかく正気に戻さねぇと。


 とにかく正気に戻らないと。


「アイツをなんとかしねぇと、この世界のバランスが崩れるんだ。

 友達みたいにまた喰われるやつが出るんだ。俺らの役目を思いだせ」


 ……あいつをなんとかしないと、この世界のバランスが崩れる。

 ペッキーに食べられる人がでる……それに融合される岡村君みたいな人も……。

 ボクら《ツ》の者の役目は……。


「聞いているか! 皓介!」



 今度は両手で皓介の頬を挟んだ。

 記憶を見たのは一瞬だが、そろそろこいつに構っているヒマはねぇ。

 ヤツがそこまで来ているんだ。


 今度はとかきに両手で頬を挟まれた。

 記憶が見られたのは一瞬だけど、そろそろ構ってもらっている時間はない。

 ペッキーがそこまで来ている。



 《ツ》の者としての自覚……。



 『目に見えぬ ことを求める 時来たり 己信じて 真実まこと見つけよ』

 ……長のおっしゃった言葉が思いだされた。


 頭が正常に戻っていく。



「聞こえているよ、とかき!」

「やれるか?」


能力(ちから)が続く限りね」

「おっし、上等だ!」



 ニヤッと笑って、親指を立てる。

 ボクもそれに答えて親指を立てた。

 完全に回復はしていなかったものの、さっきのことで気力が湧いてくる。



 ここにペッキーが戻るべき次元の入口はないのなら、取るべき行動は1つしかない。

 ペッキーを……その存在をこちらの世界に影響が出ないよう、『おさ』に封印して頂いて戻るべき次元が開いた時にそれを戻すしかない。



 ペッキーの周囲に乱気流が荒れ狂う。

 空間を限定しているから体液が周囲に飛び散らず次元が乱れることはないけど……。



 衰弱しているペッキーには、ボクの弱い能力にさえ抗う力は……もうなかった。


「コースケ……我、おま、えと……ゆう、ごう」


 苦しげな声だった。


 姿はグロテスクだったけどマンションでペットが飼えなくて寂しかったボクは、ペッキーとは犬や猫と遊ぶような気持ちで遊んでいたんだ。

 言葉を憶え始めてから、いろいろなことを話した。

 だんだんまだ教えていない言葉も使い出したけど、それでもボクの友達だった。



 ペッキーが次元生命体じゃなかったら……。

 ボクが《ツ》の者じゃなかったら……。



 いや、それ以前にボクに霊力なんてなかったら、あの時ペッキーを見つけることもなく、こいつは死んでいた。

 そして多くの人が犠牲になることはなかったんだ。


 ペッキー。


 自分で吹かせている風で飛び散った埃りのせいで……涙で姿がよく見えない。



「皓介、長引かせるのはコイツにとっても苦しいことだぜ」

 ボクの気持ちを察して、とかきが淡々とつぶやく。


 ペッキーの姿を目に焼き付けるために涙を拭う。



「コース、ケ……ゆ、ごう……コー、スケ。ゆうごおお……コースケ、コースケ……」


 何度もボクを呼ぶペッキー。

 目的はどうあれ、こいつはボクを慕ってくれていた。

 それは今でも……。


「……俺が、やろうか?」

「いえ……」


 これだけはボクがやらないといけないことなんだ。


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