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記憶(1)


 奇跡や病気治しで有名な、いろいろな宗教の信者が、何度も病気を患ってそのたびに大金を支払って治してもらうのは、その根本的な原因……例えるならテレビやラジオのチャンネルを合わせるように、自分自身の中に病気や不幸を呼び込む心……を治していないからだ。


 彼にとってこれからの毎日が……普段の、あたり前の生活をするということそのものがお祓いなんだ。


 ……あたり前の生活をする。


 なんだかとてもお祓いには思えないし、つまらないことのように見えるかもしれないけれど、分かってもらえると思う。


 宗教どっぷりの生活と、ありきたりの日常……どっちが、人と人との関係がより苦しくて大変なのか。


 その大変さを乗り越えられることが、どれほど自分自身を大きく成長させるのか……。



 大変なほど自分一人では乗り越えられない。そのためにはたくさんの人たちの手助けが必要だ。

 ボクの言うお祓いは、その手助けのことでしかない。



「三の関くん……だったっけ? アイツをやっつけるのって、相当大変だったんじゃないの?」

 心配そうに彼が尋ねる。


「まあ……ね。もう体力も霊力もほとんど残ってないかな……」

「他の人は? 他の協力してくれた人の具合は?」

 自分よりも、ボクたちの様子を気遣ってくれている。


「ボクと似たようなものだけど、大丈夫だよ」

「そう……良かった。だったら、今度は邪魔されない……よね……コースケ、と……融合し、ても」

 岡村君はゆっくりと立ち上がった。

「な……に? 岡村……君」


 ヤ、ヤバイ!


 とっさに回避しようとしたけど、腕をつかまれた。

 彼の腕が服を破って、ズルズル伸びる。



「にが、さな……い、よ」

 岡村君の顔がドロリと崩れて行く。


 顔だけじゃなく、ボクをつかんでいる腕も体も、足も……。


「この……体は、もうと、っくに……死んで、た……んだ。融合……に、耐えれ、ずに……」

 巨大化しながら、ソイツは正体を現わした。


 先端が噛られ、垂直に立てられた生茹での巨大なソーセージのような胴体。

 噛られたところからは骨のような外殻を守るべきものが折れて突きだし……同じように内臓も少しはみだしている。


 ブヨブヨの腹は半分透き通り、中のモノが蠢いている様子がグロテスクにうつしだされている。


 毒グモのような数十本も生えた足の何本かは喰いちぎられた痕がある。


 ダラリと垂れ下がる触手も、腹から伸びる管のような尻尾? も、多くが引きちぎられていた。


 これが……。


 コレが……ヒズミを呼び込んだ原因……。



 融合……。

 頭の中に声が響く。


 融合……融合……ゆう……ごう……ゆう……ご……う。



「う……うわああああ……!」



 悲鳴を上げていた。


「角! しっかりしろ!」

「うわああ! うわああ!」

 分かっていながら、声が止らない。


「どうしたんだ皓介!」

 隣にいたとかきが激しく揺さぶる。


過去と今とこれから


「うわああ! うわああ! うわああ!」

 とかきがソレの腕を振り払い、ボクを抱えてソレから離れた場所に移動した。


 でも向こうからズルズルと音を立てて、ソレが近づいて来る気配がする。


「しょうがねぇな……」

 ボクの記憶の中にとかきが入って来る。


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