神力 (1)
「『とかき』……どうしてここに?」
ボクはまだ死んでいなかった。
目の前がまっ白になったのは、とかきが使った『いぬい』の能力……光のせいだったんだ。
彼はボクと違い、ふたや最強。
ただ1人『ししん』様に匹敵する能力を持っている。
今の『あみ』を連れてきて、その後、次元バランス修正中に亡くなった『とかき』の息子さんだ。
「これ持っていけって」
何かを差し出しながら、気を送り込んでくれると、みるみる体力と霊力が回復した。
大事そうに布で包まれた物に、布越しに触れると……!
あわてて、でも注意深く布をほどく。
……八握乃布留那岐の薙部分。
持っていた玉が薙に応呼して輝き始める。
「どうしてとかきが……いえ、それよりヒズミを」
ヒズミはゆるゆると再生し始めていた。
「うわ! なんだアイツ。俺の攻撃が直撃したのにまだ動いているぞ、気持ちわりぃ」
「あれがヒズミですよ」
「ヒズミ? なんだそれ?」
「『ヒズミの書』の最後に出てくる最強の魔物です。知ってますよね?」
「おう、そういえば……聞いたことはあるが、読んだことないから知らねぇ」
とかきらしい。
「次元生命体じゃないので、ボク達の能力では倒せないんです」
「なにぃ~!! だったらどうするんだ?」
「しばらくの間でいいですから、ボクをあいつの攻撃から守っていてくれませんか」
玉を薙にはめ込みながら頼んだ。
「おう、まかせとけ」
とかきがボクの前に立ちふさがる。
玉と一体となり、完全なものになった那岐を握り、真言を唱えようとすると……。
「たかあまはらに かむつまります かむろぎ かむろみの みことをもちて……」
思いに反して、天津祝詞が口をついで出る。
那岐自身がそれを望んでいるんだ。
「うおお! なんだコイツはぁ!」
とかきの叫び声が聞こえてきたけど、祝詞に集中した。
那岐が少しずつ反応を強める。
玉の輝きが強まっていくけど、決して眩しい光じゃない。
その光はよく知っている……長から発せられる世界の、自然からの厳しくも優しい光だ。
「ひふみ よいむなや こともちろらね……」
天津祝詞に続き、ひふみ祝詞を唱えていた。
「す! まだなんとかならねぇのか?」
悲鳴のようなとかきの声。
かなり時間を取っている。
早くしないと!
「……のますあせゑほーれーけー……」
唱え終わるころには、那岐それ自身に、強い生命力を感じる。
でも完全じゃない。
もう少し、もう少し力が足りない。
完全なら、ボクの意思に関わらず那岐が動きだすはずなんだ。
でもボクの霊力ではこれで目一杯だ。
どうしよう……とかきも、もう限界だ。
その時、ポケットから温かい波長を感じた。
取り出すと、出かける際に神社で買った御守りだった。
これは……。
御守りからほんのかすかに、微妙で繊細な波長が感じられる。
そっと那岐に触れたとたん、那岐は跳ね上がった。
これだ!
この薙は生きている。
魂の輝きに満ち溢れている。
「ごめんなさい! もういいです」
「おう、まかせた!」
血まみれのとかきが視界から避けた。
八握乃布留那岐にヒズミは怯えていた。
「……ックックック……マサカ、マサカ……」
薙の思うがままの動きに合わせると、クルリと玉を下にして両手が薙を振り上げる。
「……ックックック……」
ヒズミが隠していた圧倒的な負のエネルギーを開放した。
まだあんな力を持っていたなんて……もしここでヒズミを止めることができなかったら、日本が……地球全体が負の磁場に取り込まれかねない。
頼れるのはこの薙しかないけど、あんなやつが倒せるのか……。
でも信じるしかない!!




