化け物(1)
まずは近くの神社に行くことにした。
ここはボクの産土神様……自分の生まれた土地を護って頂いている神様のおられる神社。
お稲荷さんだ。
子供のころからこの空間が好きでよく遊びに来ているし、小さかったころ、ここでよく遊んだ友達や親切にしてもらった大人の人のことは今でもよく憶えている。
……ただ、近所にはボクのいう子供や大人は実在してはいなかったけど……。
今でも初詣はもちろんのこと、毎月一日にはお参りしている。
朱に塗られた鳥居をくぐって本殿に向かい、二拝二拍一拝……。
……今夜、彼とマツリあわせることができますように。
社務所で御守りを買うことにした。
「商売繁盛と交通安全と家内安全がありますが」
「……じゃあ、家内安全」
美人の巫女さんがニコニコしながら尋ねてくれて、少し迷ったけどそれに決める……違う気がするけどこの際ぜいたくはいえない。
産土神様の御守りが一番ご利益があるんだ。
境内の休憩処に座って、ぼんやりと景色を眺めていると、木の葉を揺らす風の囁きや、鳥達のさえずりが聞こえてくる。
時々参拝や散歩に来る人も、のんびりとしている。
時間が止っているような錯覚にとらわれる。
いつの間にか眠り込んでいた。
気がつくとあたりはうす暗くなり始めていて、夜泣きソバの軽トラックも行き過ぎている。
起き上がって、もう一度本殿に向かって頭を下げて神社を出る。
時計を見ると7時40分……ちょっと寝過ごしたかな。
クラブをやっている者はまだ残っている時間だ。
学校に着くと校門入口の目立たないところで彼は待っていた。
あれ、カバンを持ったまま。
ひょっとすると帰ってなかったんだろうか。
「……ックックック……きタナ」
負のエネルギーを隠そうともしないで、『ソレ』が笑った。
「まだ人が残っているけど、ここでやるの?」
「……イイヤ」
ニタリと笑って、ノロノロ歩き始める。
ソレが案内したのは、この間来たばかりの葬祭会館だった。
式の予定がないためか、建物の中にも灯りはない。
広い駐車場には車だけは何台も駐車してある……たぶん近所の人だろう。
曇り空で月も出ていないからほとんど真っ暗で、遠くの街灯の明かりだけが頼りだ。
やはり場所がらだけあって、あちこちに霊が浮遊している。
でもボクとソレが近づくと、みんなあわてて離れて行く。
どうして?
今ソレから出ている怨嗟の波長は、霊場一個分に丸ごと相等するくらいなのに……離れたところからでも、わんさと集まって来るのが普通だけど。
「……コこでイイ」
ソレが足を止めて振り返る。
負のエネルギーがますます大きくなって行く。
ボクも霊力を開放する。
「……シカし、ほんトウにワシとやれルダケのカチガあるカ、タメしてヤロウ」
ニタァと笑って手印……召喚印を組んだ。
「……ワシノかうニヒキノバケものよ、『テイライ』ならビに『ホウエン』よ、《ツ》のモノをタオせ」
目の前で爆発が起きたかのような錯覚とともに、負のエネルギーが傾れ込んだ。