事前準備
「ねーミアって何歳?」
髪を結ってもらいながら鏡越しに聞く。
見た目は13か14歳かな。あどけなさが残ってるし。
「23です」
は?今なんて?体重?いや体重にしては少なすぎか。
「え!23!?」
「はい。13で来たのでもう10年ですね。
来た時メアリー様は6歳でしたよ」
「え……ミアちゃんじゃなくミア姉さんじゃん!!
今度からミア姉さんと呼んだ方が……」
「いえいえ!今でどおりミアで大丈夫です」
とニッコリ。
背が低い子って若く見えるもん……ね
どうりで化粧や髪結いが上手いわけだ。
さあ本格的に準備を始めよう。
「手袋ってある?」
とりあえず聞いてみる。
「はい、どうぞ」
……これ綿だね。木綿だね。
こんなのでオムツ変えたり血液触ったら中まで浸透して余裕で感染だな。
何かないか……水をはじく素材。
何があるんだこの世界。プラスチックは無さそうだし……
「何してんだメアリーは」
部屋を通りかかったトニーがミアに聞いている。
「さあ?何か探してらっしゃるようですが」
トニーが目に入ったので頭から足先までゆっくり観察する。
「なんだよ、なんなんだよ」
「!!コレだ!!!」
トニーの足元にうずくまり革靴を持ち上げる。
「これだよー!!」
「は?」
「え?」
呆気にとられるトニーとミア。
その後、ミアに頼んで革の手袋を手配してもらう。なるほど、少し分厚いが手を動かすのには問題ない。
でもこの状態で細かい作業は自信ないな。そして現代と違うクオリティの低さ。も少し薄かったらな……
これだけじゃ足りん。マスクはスカーフみたいなのでもいいけど、身体はどうする。
考えながら城内を歩き回る。
王様の使っていた部屋に入ってみた。そのまま保存されており、王冠や高そうな服が飾られている。
金持ちは違うな。一つ一つに豪華な宝石が飾られているし、杖も立派だ。
「!!これ!!」
急いでミアのいる部屋へ戻る。
「ミア!!マントが欲しい!!」
ミアは特に理由も聞かずマントを用意してくれた。
最近好き放題しているので大して驚きもしない。
また病舎に行くと言うと怒られるのでミアを部屋の外へ出し、ドアに鍵をする。
よし。道具は揃った。
髪は仕事でいつもやってた一つまとめに。髪が長過ぎて巨大だんごが出来上がる。その上にスカーフを巻く。
マスク代わりにもスカーフを使い、鼻と口を見えないように。
靴は革靴を手配してもらった。
洋服は先日街で買った、長袖長ズボンのような物。その上からマントで覆い尽くす。
見えているのは目だけ。
さすがにゴーグルはないよな。まいっか。
よし、完璧だ。
鏡の前に立ってみる。
変態じゃん!!!
今まで美人って何着ても似合うと思ってた。
こんなに綺麗な顔でスタイル抜群の人が着ても変態にしか見えん!!
「コントでも見ないよ、こんなの」
思わずつぶやいてしまう。
「ヒャッ」
あーしまった。
ルナはドアなんか関係なかったんだった。
「ルナ!あたしあたし!!メアリーよ!」
「え?なにその格好……」
かなり驚かせてしまったようだ。
「女の人はズボンなんて履かないから、変な男の人がいると思ってビックリしたーー!!」
「でもちょうど良かった!!ルナに頼みたいことがあるの!!」
「え……なに……?」
変な格好をしていることもありルナが怪しがっている。
ルナは重症になれば治せない。
つまり軽症なら治せる。そこを利用する。
感染したからといってすぐに重症化するわけではない。
だから、あの治癒魔法を治す時とは違い、弱い力で全身に与えてもらう。その状態のまま病舎に入る。
すると、感染したとしてもその場で治せる。
ただ、万が一のことがあるため私は完全防御で挑む。
「どう?この作戦」
「うん……考え的にはいいと思う。けど……」
「けど?」
「あたしそんなに長い時間は守ってあげられないと思う……」
「短時間なら大丈夫ってこと?」
「うん、少しの時間なら何とか」
少しでも入れば中の環境がわかる。
今回は施設内がどうなっているかを調べることに集中しよう。そして改善点を見出してまた入ればいい。
「少しで大丈夫!もう危ないと思ったらすぐ教えて」
「わかった。そのかわり私が無理って言ったらすぐに出てね。メアリーを病気で失いたくないから」
「わかった。約束する」
ルナが珍しく真剣に言うので事の重大さが思い知らされる。
とりあえずやらねば。動かねば。ゼロでは何も変わらない。




