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看護師が異世界の令嬢に転生しスキルを使って無双する話だったハズなのに!?  作者: VANRI


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少年

「この子、どこが死にそうなの……?」


 少年を振り返ると、手に小さな剣を持ちこちらを睨んでいる。瞬時にその刀を振り上げ私をめがけて振り下ろしてきた。

 咄嗟に避けたが、右腕に軽い痛みが走る。

少年はパッと後ろへ下がり距離をとった。


 右腕に数センチの傷が見えたが血が出るほどではない。

私はふうっと息を吐き、右手から炎の刀を出した。


「魔力が使えるのか!?」

少年の目が泳ぎ始める。


 魔力を使えるようになってから、毎日コントロールの練習をしていた。もちろん剣術も。

 その中で炎を己の好きな形に変えることができるようになっていた。

 一番闘いに向いていたのは剣の形だ。

炎を握ると熱さも感じず、振り回す際に固定されるので普通に剣を持って動かすのと同じ要領で扱うことができた。


 それがまさかこんなところで役に立つなんて。



「その刀を捨てなさい」

今まで出したことのない低い声で牽制する。


「す、捨てるわけないだろ!!」

また私の方へ刃を向けた。


 外からキンキン! と刃同士のぶつかる音がしている。

水流音も聞こえるので魔力も使っているのかもしれない。

 ここで足止めされるわけにはいかない。

外の状況を早く把握しなくては……


「じゃあ仕方ないわね」

少年に向けていた刃の向きを変える。

 

 ……少女へ。


「この子を殺されたくなかったら言うことを聞きなさい」

もはやどっちが悪かわからない。

少女は怯えた顔を見せ、できるだけ離れようと壁に背を付けている。


「卑怯者!」

少年が苛立ちを露わにする。


「卑怯はそっちでしょ。嘘ついてここまで連れてきて。ほらさっさとその刀を捨てなさい。

 さもないと……」


 少年は舌打ちしながら刀を地べたに投げ捨てた。

それを足で蹴って遠くへやる。

 大人の剣の半分しかない小さな刀は、この少年にとってはとても使い勝手が良かったことだろう。


 少女はまだ幼く人質には適してないと判断した。

泣きだされたり、恐怖でしゃがんだり立ち止まられては外に行けなくなる。

 少女に向けていた刃を少年に向け直し言った。

「外についてきて」


 少年は抵抗する様子ない。諦めたのだろうか。

外へ出ると、小さめの剣を持った20人近くの少年少女が馬車を取り囲んでいた。


 トニーやアーシュ、そして御者も剣で子供たちの刃を跳ね返しているが数が多く、また子供相手で傷つけまいとしているため苦戦している様子。


 ミアは両手で水柱を出し少年たちが近付かないようにしているが、魔力の消耗が早そうで余裕のない表情をしている。


「剣を捨てなさい!!」

精一杯の声を上げた。


 一度に全員には伝わらなかったが、気付いた者が手を止めるため、それを見た少年少女たちもそれに続いて手を止め始めた。


 トニーたちが唖然とした顔でこちらを見てくる。

そうだろう、もう悪役のやり方だよ、これは。

子供に炎の剣を向けて脅しているんだもの。


 とりあえず最初の少年以外の子供たちに小屋の中に入ってもらう。

 最初に馬車にやってきた子供に話を聞かなくては何も始まらない。


 私は炎の剣を消し、少年に座るよう誘導。その横に腰を下ろした。

 他の子供たちはこの少年を人質にとられていると思っているから変な真似はしないだろう。


 少年の周りを取り囲むようにみんなで腰を下ろす。

一人は小屋の方を向いていないと、何かあった時に対処が遅れてしまう。


「話をしてくれない? なぜ襲ったか教えてほしいんだけど」


 少年は目を下に向けたままボソッとこぼす。

「お前たちから金や金品を奪って、女は売りに出すつもりだった」


「何でそんな事……!?」

ミアが思わず言葉を発する。


「そうしないと生きていけないからだ」

「親は? 大人が見当たらないようだが」

トニーも口を開く。


「いない」

「死んだの?」

表情を全く変えない少年に疑問を抱く。


「違う。俺たちは捨てられた子供だ」

「そんな……」

私が言葉を失うと、アーシュが代わりに口を開いた。

「聞いたことがある……。子供を捨てる村があるって。でも迷信や噂レベルだと思ってた……」


 少年は淡々と話す。

「ここに捨てられた子供を他の子供が育てるんだ。

赤ん坊が捨てられることもある。

救えることができなくて死ぬこともある。」

「それで何で人を襲うの?」

「ここでは金は意味がない。この村に金があっても買いに行くことが出来ないから。

でも盗賊がここを通った時に金や金品があれば食料を置いていってくれる。なかでも女は高くで買ってくれてたくさんの食料をくれる」


「……そんなことして罪悪感ないの……?」

「罪悪感?」

少年が私を不思議そうな顔で見上げた。






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