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看護師が異世界の令嬢に転生しスキルを使って無双する話だったハズなのに!?  作者: VANRI


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フランの葛藤

 やっと愛を確かめ合えたのに離れなければならなかった。


 メアリーにバレてしまったとわかった日、モネに王女殺害は無理だと伝えに行った。


「じゃあいいよ。別の奴に頼むから」

笑顔だが目の奥が笑っていない。


「何? 情でも湧いた?」

ぐいと顔を近付け覗き込まれる。

「そういうわけじゃ……」

「そうよね、私たちは捨て子で修道院で育てられたんだから。あんなお姫様とは別の世界だもんね」


 俺の様子を見ながら少しの沈黙を置いてモアが口を開いた。

「まあ、どうしても王女を殺害して欲しくないなら、ここに帰って来てよ」

フフッと笑う。

「そしたら諦めてあげる」


 モネは暗殺者とのやり取りもあり、脅しではない事は明らかだった。

 その日は何も答えず城に帰った。



 問題は誰が王女殺害を依頼しているか、だ。

そこを絶たなければ、もしここでモネを殺したとしても他に依頼されるだけだ。調べる必要がある。


 メアリーと離れ自分の心を殺し城を出た。

モネの所に戻ると大層喜んでいた。

 それからモネとの生活が始まった。仕事を手伝い、身体を求められればそれに答えた。

 だが、その度にメアリーを思い出す。思い出さない日はなかった。


 モネに買い物についてこいと言われたので市場に行った。花屋に行くとまたメアリーを思い出した。

 俺の匂いを太陽の匂いと言ってたが、あいつは花の匂いだった。


 ダリアの本当の意味は伝わっただろうか。

ミアは花に詳しいので教えてくれていたらいいのだが。少しでも愛を伝えたかった。


 花を見ていたらこちらに駆けてくる足音が聞こえた。見るとトニーが険しい顔で走って来ていた。

 この後、トニーが何をしたいかはすぐにわかった。


 それを甘んじて受け入れようと思い、構えもしなかった。思いっきり殴られ頬に激しい痛みが走った。

 そう言えば今までトニーに殴られたことは一度もない。

 そしてこいつはメアリーの事が好きだったな。


 メアリーがどれだけ傷ついたか、と怒鳴られる。

何も知らないくせに、と頭にきて言ってしまった。

「嫉妬だろ」と。

 こんなこと言いたかったわけじゃない。

 いいよなお前は。メアリーの側にいれて。

嫉妬しているのは俺の方なんだよ。


 その時遠くにメアリーがいる事に気づいた。呆然と立ち尽くしている。

 そうだ、トニーとアーシュとミアがいるんだからいるに決まってる。そんなことすら頭に浮かばなかった。


 一瞬背を向けたようだったが、一気にこちらに走って来た。殴られると思った。

 いいんだ、殴られていい。むしろそうして欲しい。

 目を閉じた。


 思っていたのと違う衝撃に驚き目を開ける。

メアリーが懐に飛び込んできたのだ。

 手を伸ばせばすぐ届く所にいる。花の匂いも一緒にここにいる。


 触れたい。髪を撫でたい。抱き締めたい。

 一気にあの夜が蘇る。重なる吐息、柔らかい肌の感触さえまだこの手に残って離れない。

 愛してると何回言った?これ以上の言葉を知らないからそれしか言えなかった。


 この時が永遠に続くようにと、夜が明けないようにと何度祈ったか。

 陽の光が少しずつ入ってきた時は絶望すら感じた。祈りなんて届かない。意味がない。

 寝ているメアリーの頬にキスをして、起こさないよう静かに出て行ったあの日……




 顔を上げた笑顔の瞳は潤んでおり、頬は少し赤かった。

 可愛いどころじゃない。理性も決意も吹き飛ばされそうになる。今すぐ抱き締めたい。


 拳を強く握る。ダメだ、今ここで抱き締めると離れた意味がなくなってしまう。

 まだ終わってない。

 メアリーを守るために戻ったというのに。


 目頭が熱くなる。

殴ってくれたら良かったのに。文句の一つでも言ってくれたら少しは楽になっただろう。


「会いたかった」なんて言われたら揺らぐじゃないか。俺だって戻りたいよ。あの楽しかった日々に。あの生活に。

 幼い頃からだ。ずっとずっと好きでやっと気持ちが重なったのに。


 なんでこんな事になったんだろう。




 気づくとメアリーの前から逃げるように走り出していた。



 俺はいつかまたこの手で君に触れる事が出来るのだろうか。

 いや、やめよう。「いつか」なんて悲しい言葉使うのは。虚しくなるだけだ。





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