魔力のコントロール法
翌日、レアンとアーサーに花畑に連れて行ってもらった。見渡す限りに花が咲いている。少し進めば違う種類の花があり飽きることがない。
寝転がると草花の匂いがすぐ近くでした。太陽が眩しくて目を閉じたが、太陽の存在や温かさがしっかり伝わってくる。
アーサーはライオンの姿でゴロゴロ寝転がっている。
レアンは私たちを微笑んで見守り、器用に花で冠を作っている。
「どうじゃワシの国は」
私は飛び起きて答える。
「素敵です。国だけでなくレアン様も」
お世辞でも何でもない。民への接し方や、民への思いなど見習うべき点が多くあった。
「そうか! それは光栄じゃハハハ……」
立ち上がり私の元へ来て、作った花の冠を頭に乗せてくれた。
「でもこんなに楽しんでばかりで良いのでしょうか?
魔力を早くコントロール出来るようになりたいのですが」
「それをこれから……」
レアンは言いかけたが、何かに反応したようで背後を振り返った。
花畑の向こうを見ているが何も見えない。
動物の目には見えているのか、それとも嗅覚で何かわかったのか?
ライオンアーサーも同じ方向をみている。耳がそちらの方に向けられ、鼻がピクピク動いている。
だが、悪いことではないようだ。レアンは目を細め穏やかな表情を見せているし、アーサーの尻尾も優しく揺れている。
突如、花畑の中から白いメスライオンが飛び出してきた。パッと花びらが飛び散る。
こちらに向かって来ており、走る度に花びらがライオンの周りを舞っている。
大きさはアーサーよりも小さい。
レアンはその場を動かずその様子を見守る。
レアンに触れる瞬間に人の姿に変わり、胸に飛び込んだ。
「父上!! ずっと会いかった!!」
白い髪のツインテール姿のドレスを着た女の子。
アーサーより年下のようで幼さが残る。
レアンの服にしがみついて幸せそうな顔をしている。
「私の妹です」
ライオンアーサーがその様子を見ながら教えてくれた。声が優しいので微笑んでいるのではないかと思う。
「母上がなかなか父上に会いに行かせてくれないのです。私はもう諦められて勝手に来てましたが」
と、アーサーが言う。
「兄上!!」
その女の子がこちらにも走って来た。
でもさっきとは違いかなり怒っている様子。
ライオンアーサーは耳を伏せ身体も低く構えている。
まるで猫のよう。
「何で何日も帰って来ないんですか!!
母上が心配していましたよ!!」
ライオンアーサーはますます身体を小さく丸めている。
「まあ……お陰で私が探しに行くという名目で父上に会いに来れたから良かった……けど」
ぷいとそっぽを向く。
「リリー、お前も見ていくといい」
レアンが女の子に声を掛けた。
「え? 何を?」
リリーは不思議そうにレアンを見上げている。
「さあ、始めよう」
私に手を差し伸べるレアン。
手をとると花畑の中心に連れて行かれた。
「さあ座って」
言われるまま腰を下ろす。
レアンも私の前に腰を下ろした。
「さあ、魔力を解放してごらん」
「え!? こんな湖もない、花が生い茂る場所で!?
暴走したらみんな燃えてしまうし、この服もゼインに作ってもらった物じゃないから燃えるし……」
レアンが首を振る。
「クロエが言っておったじゃろう、魔力は手や足を動かすように自然に使う物だと。
攻撃する為じゃない、この花畑に光を灯すために明かりを解き放て」
レアンに両掌を重ねさせられる。
「この手の上に優しい光を灯してごらん」
攻撃するためにばかり使うものだと思っていた。
「集中せず、無意識に近い状態で。手や足を使うのと同じように。呼吸をするように。想像してごらん」
レアンの声が身体に優しく染み渡っていく感じがする。
言われた通りに小さな優しい光をイメージすると、
掌にほんわりと小さな炎が現れた。
「熱くない……?」
弱々しい炎はそっと吹けば消えてしまいそうだった。
だが風に揺られても小さくなるだけで消えはしない。
「修行は終わりだ」
その一言を聞くと、パッと炎が消えた。
「え? 終わり?」
「力を入れず出す事が出来れば、後はそれを大きくイメージするだけ。出す事が難しいのにもう出来たということは完成だ」
「でも! 今はこの石のお陰で暴走しなかっただけで……」
レアンが懐が石を取り出す。
「それは偽物じゃ。こっちが本物」
「え!?」
驚いて懐から石を取り出す。
「これが偽物……? でもレアン様はライオンに姿を変えておられましたよね?
石を持っていたら出来ないのでは……?」
「ああ、それくらいなら出来る。多少力は吸われるが。」
ゼインでも魔力を発揮出来なかったのに、この人は石の力があっても姿を変える事が出来たのか……
どれだけ魔力が強いんだろう。
ふと見ると、アーサーとリリーが祈るような眼差しでこちらを見守っていた。




