それぞれの夜
ゼインに次の日に火の女神伝説の場所に行くと言われたので、今日はこのまま宿屋へ行くことになった。
私とミアとクロエさんの三人部屋だ。
「やっぱ旅の夜はわくわくするね〜」
「はい!日常じゃない感じがいいですよね〜」
私もミアもベッドに寝転んで話をしていた。
クロエも一緒に話そうと誘うが、
「私は国王様の元で寝ますので」
と、さっさと部屋を出て行ってしまった……
「え!? 一緒に寝るってこと!?」
「そういう関係ってこと!?」
私とミアは顔を見合わせた。
気になるが聞ける訳がない。
試しにゼインとクロエがベッドに寝ているのを想像してみる。
……美男美女ですっごくお似合いじゃない!?
違和感が全然ない!!今頃部屋で……
キャー!!今日はドキドキして寝れそうにない!!
―――――
トニーは宿屋の外で一人夜空を見上げていた。
無数の星が煌めいていて、時々流れ星が落ちていくのも見ることが出来る。少し肌寒いが心地はいい。
集中して考えたいのに同じ部屋に賑やかしのアーシュがいては考えがまとまらなかった。
ブッチが言っていたスパイ、薔薇園の庭師、王女殺害を依頼した黒いコートの女、その女と繋がっていたかもしれないフラン。
メアリーにとって一番危険だったのはフランだった……?
子供の頃からそばにいたのに何も感じなかった。
不信感さえなかったし、むしろ安心して警備を任せていたのに。
あいつは何を考え何の為に動いていたのだろう。
「フラン……どこに行ったんだよ」
思わずこぼしてしまう言葉さえも虚しい。
アーシュが言うように鈍感過ぎるのかもしれない。
こんな俺がこれからメアリーを守っていけるのだろうか。
―――――
アーシュはドレイクと部屋でくつろいでいた。
「いいなあ、動物に変身出来て」
アーシュが言った言葉にすぐ反応するドレイク。
「そうか!? アーシュは何の動物になりたいんだ?」
「うーん、鳥がいいかな〜あちこち飛んで行くの気持ち良さそうだし。
カイト格好良かったもんな〜……モテそうだし」
もう暗くなった夜の空に目をやる。
「そうか!カイト様に会ったか!!」
ドレイクが喜びの顔を見せる。
「元気にされていたか!?幼い頃はドミナー王国によく来ていたから会えていたんだが最近は全く会えなくなってしまって……」
「色々あったけど、元気にはしてたよ」
「そうかそうか!!それは大変嬉しい事を聞けた!
ありがとう教えてくれて!!
騎士団も連れて行かず一人で鳥人の国へ行かれると聞いて心配だったが、無事に戻って来てくれて本当に安心したのだ!」
「ゼインとカイトは昔から仲が悪かったのか?」
「そうだな……喧嘩は時々されていたが、今ほどではなかったな。
国王様……、お二人の父上が亡くなられてから今のような関係になってしまわれて……」
「え?その時に何が?」
「それは俺の口からは何とも……」
言いたくないのか、言ってはいけないのかわからなかったがそれ以上の詮索はやめることにした。
必要な事であれば自然とわかる日が来るだろうとアーシュは思った。
寝ようとしていたら突然ドレイクが「我が王と寝る」と出て行った。
え……てことは……!?
ゼインとドレイクってそういう感じ!?
ゼインとドレイクが裸で……
ヤバい!想像したら二人とも筋肉隆々過ぎて笑える!
現実味ないな……
でも帰って来ないってことは……
わーーー!今日は寝れそうにない!!
――――――
ゼインはベッドに横向きになり寝転んでいた。
うさぎになって丸まっているドレイクを撫でている。
クロエが部屋に入って来るとすぐ口を開いた。
「勘付かれてはいないだろうな」
「はい、それは大丈夫かと。ですが……」
「なんだ」
「少々焦り過ぎではないでしょうか……」
クロエが申し訳なさそうに言う。
ゼインは撫でていた手を止める。
「嫌な予感がするのだ。胸が落ち着かない感じが。
あまり時間がない気がする」
「そうですか……メアリー様がどう思われるか……」
「まあ、あれはあれで強いからなんとかなるだろう」
フッと笑う。
「わかりました……」
そう言い終わると、ゆっくりとヘビの姿になり床にとぐろを巻いて寝始める。
二人とも動物の姿で寝る方が落ち着く為、ゼインの元で寝ることにしたのだ。
クロエは二人が怖がらないように、ドレイクは小さいので二人に踏み潰されないようにと。




