アーシュの恋愛論 in温泉
「ま、そんなうまくいかんよな……」
トニーが温泉に浸かりながらぽつりと言う。
混浴はあったのだが、動物専用だった。
動物の姿に変身してなら入れるそうだ。
もちろん、お馴染みメンバーは変身出来ないので入る事が出来ない。
アーシュが面白いほどがっかりしていた。
ゼインも浸かりながらしみじみと呟く。
「あれは女になったのか……」
アーシュがそれに答える。
「そうなんだよ〜可哀想に……」
「可哀想とは?」
「だって次の日姿消してるんだよ〜」
「え!?何の話?誰の何!?」
トニーの声は無視して二人は続ける。
「相手はあのフワフワなのか……」
「ま、状況的にそうだろうね〜」
「メアリーはそんなにあのフワフワを好いておったのか……?」
アーシュは湯船から上がり、岩の上に座って足だけ湯に浸ける。
「そんな感じじゃなかったけどな〜」
バチャバチャと足で水面を蹴っている。
「え!?メアリーとフランの話!?」
トニーはようやくわかり始めた様子。
「で、でもなんでそんなのわかるんだよ!」
動揺を隠せない。
「トニーは鈍感過ぎなんだよ、見てりゃわかるって」
ゼインも頷いている。
「では、そこまで好きではなかったのにどうして……」
ゼインが不思議そうな顔をする。
「流れもあるんじゃね?その場の雰囲気、条件とかさ……
例えば、目の前になんとも思ってない女がいて、
『今日までの命なの。最後に抱いて』って言われたら抱くだろ? そんな感じ」
「わからんでもないが……」
「同じ状況、条件だったらトニーやゼインが相手だったかもしれない。実際、ゼインとはキスしてるしね」
ゼインもトニーも湯船から上がり真剣に話を聞いている。
トニーが口を開く。
「え……てことは誰とでも……?」
アーシュが笑う。
「さすがにそれはないって。
初めまして、じゃあ抱かれましょう、とはならないから!
自然と人は限られてくるさ」
アーシュは偉そうに話し始める。
「俺は三人とも同率だと思ってた。
でも今はフランが一歩リードかな〜。身体から始まる恋愛もあるしね」
からかったように笑いながら二人に目をやる。
「でもあの別れ方はないわ〜。残酷すぎるだろ。
種を植え付けられるようなもんで、種が根を張るから上だけ引っこ抜いてもなかなか忘れられなくなる。ズルいよな〜」
「フワフワはどこに行ったのだ?」
トニーも考えている様子。
「俺たちにも何も伝えずいなくなったからな……」
「それがさ……」
アーシュが声をひそめる。
「俺、前に見ちゃったんだよね」
「な、なにを……?」
「街で女といる所。二人きりで結構密着してた」
「え!誰だよそれ!」
トニーが身を乗り出す。
「知らない女。トニーも知らないと思うよ。
俺たち行動範囲同じだから、誰と顔見知りかだいたいわかるけどあの女は知らなかった」
「興味深いな……」
ゼインが何か考えている。
「しかも嫌な雰囲気だった」
「嫌な?」
「女は黒いコート着てて闇の雰囲気を纏ってて……
それにフランも少し染まってるような……」
「黒いコート……!?」
トニーはブッチの件を思い出した。
「え?知ってる?」
「い、いや……」
憶測では語らない方がいいと察したトニー。
「ではその女の元に?」
「その可能性もあるってこと。実際どうかわかんないし。どんな関係なのかも」
「なんでそんな女の所に……メアリーの方が断然……」
トニーが遠い目をしている。
「まあメアリーが傷ついていることは確かだから、慰めてやればいいんじゃない?」
「な、慰めって……傷心につけ込むみたいで……」
「傷心につけ込むのってそんなに悪いことかな〜」
アーシュは座り直し話し出す。
「一般的に悪いイメージで言われるけど、傷ついている時って優しくしてもらいたいし、そばにいてくれたら嬉しいだろ? いいと思うけどな〜。
その結果、優しくしてくれた人に揺らいだとしても仕方ないと思う」
「そうは言っても……」
トニーは煮え切らない様子。
「まあ俺はやりたいようにやるから」
ゼインは特段気にしていない。
アーシュが真面目な顔になる。
「ただ今回のフランの失踪はわからないことが多すぎる。ピースを組み立ててパズルを完成したい所だけど、肝心のピース自体がないからどうしようもないんだよね」




