新たな出会い
あれからみんなに気を遣われている。
あえてフランの話題をしないようにしてくれていることもわかってる。
なぜいなくなったかは誰も知らないと思う。
私が知っていると思っていても誰も聞いてこない。
窓から青空が見える。雲がゆっくり流れていく。
風が窓にあたりガタガタと音を立てる。
フランがいなくなっても、いつもと同じように朝が来てまた夜がやってくる。
この世界にとっては何の影響もない出来事の一つだった。
フランどこにいるんだろ……
結局、私よりモネって子を選んだってことだよね……
今頃あの娘と仲良く……ってあれ!?
ヤリ逃げ? ヤラレ逃げられ!?
枕に八つ当たりして何回も叩く。
そのうち疲れて枕に顔をうずめる。
「いいやもう……一瞬でも愛を感じれたから……」
一人で呟いてみた。
フランがいなくなったことでアーシュを副団長に、という話があったが、アーシュは「フランは絶対戻ってくる」と言って断ったらしい。
実質、副団長の業務はしているらしいが。
―――――――
そんな時、ゼインが突然やって来た。
「よう愚民ども! 暇だと思って来てやったぞ!」
王室でアーシュやトニーと王政について話していた時だった。
「久しぶりじゃんゼイン〜」
アーシュが手を振る。
「今日は何しに来たの?」
相変わらず大きなゼインを見上げる。
私に近づいてきてふわっと持ち上げる。
「お前に会いに来たに決まってるだろ」
ストンと床に下ろされ、頭を撫でられる。
少し前から思ってたけど、ゼインの可愛がり方って、恋人に対してでなく娘を愛でてる感じに思えるんだよね……心地はいいんだけど。
ミアが通りかかる。
「あらゼイン様。紅茶でも持ってきますね」
ミアは相変わらず落ち着いている。よく考えたらこの中で一番お姉さんだもんな。
ゼインはソファのど真ん中に腰を下ろした。
「旅に行くぞ」
「また!?」
トニーは嫌そうな顔を浮かべる。
「えー行く行く! こないだカラスだったろ?
次は犬か? 猫か?」
アーシュは乗り気だ。
「……惜しいな」
ゼインは何も言わず、すっと手を差し出した。手の上に小さな何かが乗っている。
その姿を確認した私とミアは一斉に声を上げる。
「うさぎだ〜!」
「可愛い〜!! しかもお洋服着てる〜!」
その手の上には小さくてピンク色のうさぎが乗っていた。鼻をヒクヒクさせている。
「これの国に行く」
ゼインの言葉にみんなが反応する。
「え! 可愛い可愛い! 行きたい!」
私はもちろん即答。
「こんな可愛いうさぎさんがいる所なんて可愛いしかないですね!」
ミアも乗り気。
「うさぎか……うさぎならいいか、襲われないだろうし……」
トニーが気にする所は正しい。
アーシュが尻尾をつまみ上げる。
「……いたいです……」
は……?
みんなで顔を見合わせる。
「尻尾引っ張られると痛いです」
ピンクうさぎがちょこんと座り顔を上げる。
「えええ〜〜!?」
「この子がしゃべったの〜!?」
開いた口がふさがらない。
「ますます可愛い!!」
私とミアは抱き上げて頬を擦り寄せたり可愛がる。
「あ! ミアずるい! 私もチューしたい!!」
「ほんと可愛いですね〜しかもピンクなんて珍しい!」
「あ……おい、あんまり触らない方が……」
珍しくゼインが動揺しているような……?
そして続ける。
「それは俺の国の騎士団長だ」
皆が一斉に吹き出す。
「こんなのが騎士団長なんてどんな国だよ!」
「いやあり得ますよ! 私ならこんな可愛い子から攻撃されても攻撃出来ないですもん!」
「可愛さで敵をイチコロ! みたいな?」
私は目を輝かせてゼインを見る。
「わかった! 次に行くのは言葉が話せるうさぎの国ね!」
「違います」
うさぎが立ったと思ったら、高く飛び跳ね一回転。
あっという間に人間の姿になった。
そこには、ピンクの短髪に小麦色の肌、筋肉隆々の男がポージングを決め立っている。まるでボディービルダーだ。
「動物が話す国ではなく、動物に姿を変えることができる人間の国です」
「ええーーーーーー!!!」
これまたみんなの叫び声が重なった。
「ど、ど、どうしましょうメアリー様……
私あの方のお尻にキスをしてしまいました……」
「ミア……私もよ……」
私たちは顔面蒼白。穴があったら入りたい。
穴がなくてもここに穴掘って潜り込みたい気分。
「だからあまり触らない方がって言ったではないか……」
言ってたね! 確かに言ってたよ!
でも理由は聞いてなーい!
私の前にずかずかと近づいてきてひざまずく。
「初めてお目にかかります。ドレイクと申します。
我が王がいつもご迷惑をおかけしております」
顔を上げニコッと白い歯の笑顔を見せてくる。
「失礼な。迷惑などかけておらん」
後ろからゼインの声。
なんだか楽しいことになりそうです。




