フラン
翌日からもフランはいつも通りに接してきた。
でも時折冷たい目で見られている気がする。
怖いのでなるだけ二人きりにならないように気をつけた。一人になるのも怖いので常に誰か人がいる所に行く。だから書庫には全然行けない。
そんな時、久しぶりにルナが現れた。
「メアリー聞いて!! フェアリーの木にまた卵が増えたの!」
「そうなの!? あれ?
ということは……誰か亡くなったってこと……?」
「ううん! そういうわけでもなく、自然と実ることもあるの!」
ルナはとても嬉しそうだ。時々フェアリーの木に行って卵の様子を見たり卵の汚れを拭いたりお世話をしているらしい。
以前、ゼインの城で捕まえられたことがあるのでゼインが来るとしばらく姿を現さなくなる。
「なんか元気ない?」
「え!?」
ルナの一言にドキッとする。
「そう? 疲れてるのかな?」
ルナが頬にくっついてくる。
「私はメアリーのフェアリーなんだからいつでも頼ってね」
ルナは私が具合が悪かったり、怪我したりすると離れていてもなんとなくわかるらしい。
ただ他の国には行けないとのこと。フェアリーの木がある国でないと魔力が弱り飛ぶ事も出来ないと言っていた。
みんなに心配されてばっかりだ。しっかりしないと!
フランの事を考えてみた。
よく考えれば知らないことが多すぎる。
どこで産まれた? 兄弟はいる? 何の食べ物が好き?
休みの日は何をしているの……
何も教えてくれなかった。
……いや違う。
私が知ろうとして来なかったんだ。
知る努力なんてしていない。
いつも助けてもらってばかりで私から何かしてあげたことがあっただろうか。
フランの目的はなんだろう。
ブッチが言うように王女殺害?
だが、これまで機会がなかったとは思えない。
そして、殺そうとする者を命をかけて守るだろうか。
周りに怪しまれないためとしてもそこまでするのか?
考えれば考えるほどわからなくなる。
そして結局答えは出ない。
きっと、このままで終わることはないだろう。
その日の夜、寝支度を整えているとノックする音が聞こえた。開けようと扉の方へ向かうが先に開けられる。
不敵に笑うフランが入って来る。
「メアリーちゃん。来てくれないから来ちゃったよ」
しまった!! 鍵をかけてなかった!!
フランはゆっくり扉を閉め、後ろに回した手でガチャリと鍵を閉める。
「この間の続きをしようか」
この間とは違う。腰に剣を装着している事にすぐ気づいた。
またトニーが助けに来てくれる……?
「トニーさんなら来ないよ」
「え?」
私の考えを読み取ったのか答えられる。
「あとアーシュとミアも来ない」
そうだ! ミアは家に帰ると言っていたし、騎士団は遠くに演習に……
「僕は具合が悪くて演習に行けなかった」
「じゃ、じゃあ寝てた方が……」
途端に見下したような目になり声も低くなる。
「嘘に決まってんだろ」
どうする……何か武器とか……魔力?
発動出来る? したとして暴走したら城ごと燃え尽きてしまわないだろうか。でも今は魔力封じの石があるから大丈夫?
ずりずりと後ずさりしながら考える。
窓が見える。窓から飛び降りる? 三階から?
窓を開ける前に捕まるだろうし、この高さから落ちたら無事ではいられない。
背中に壁が当たる。もうこれ以上は下がれない。
でも棚の引き出しならなんとか届くかもしれない。
フランはテーブルの花瓶に飾られているダリアの花を一本手に取り、私の目の前に持って来た。
「知ってるか? ダリアの花言葉」
私は首を横に振る。
「『裏切り』だ」
そう言うと花を手でぐしゃっと潰し床に投げ捨てる。
確か引き出しの中に……
バレないように片手で背後を探る。
突如、勢いよく首を押さえられた。
呼吸がしづらい……声も出せない
「わかるか? この首にいくらかかってるか」
押さえている手に力が入る。
「城ひとつ建てることができる金額だ。
それだけ貴重なんだよお前の首は」
咄嗟に引き出しから取り出したナイフをフランの腕に向かって振る。
首元の手がパッと離れたので、床に倒れ込んだ。
ゴホゴホッと咳を出した後、呼吸を整えようと試みる。
呼吸が荒いままフランを見上げると右腕から少し血が流れていた。
「やるじゃん」
不敵な笑みを浮かべる。
ナイフを持っている手の震えが止まらないので左手で手を添えた。
そしてフランに向かって刃先を向けた。
心臓がドクドク鳴っているのが聞こえてくる。
呼吸も整えることが出来ず苦しくなってくる。
「そんな震える手で何が出来るんだよ」
フランはナイフを見ても全く動じず淡々としている。




