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看護師が異世界の令嬢に転生しスキルを使って無双する話だったハズなのに!?  作者: VANRI


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疑惑

 最近は王政の仕事をするために書庫に通っている。

すぐすぐ政治のことは出来ないので、まずはこの国を知ろうと思い、産物や地形の特徴、昔話や言い伝えの本も目に止まった物は読むようにしている。


 書庫は壁一面に本が並んでおり、高い所は階段のような脚立を使って取ることが出来る。

 いつも本屋さんのような匂いが充満していた。

 机や椅子もあるが10人程度座れる位。ここで本を読む人はいないようだ。借りて自分の部屋などに持って行くことが多いらしい。


 私はこの脚立の上に登り本を読むのが好きになった。あまり人が来ないのでゆっくり出来る。

 高い所から下を見下ろすのも、なかなか経験出来ない事なので楽しかった。


 今日も脚立の上で本を読んでいた。


「あれ〜メアリーじゃ〜ん」

下を向くと手を振ってるアーシュがいた。


 アーシュの元へ移動する。

「アーシュも書庫とか来るんだね〜何読むの?」

持っている本を覗き込む。


「恋愛本」と、得意げに見せてくる。

「モテるためにちゃんと努力してるんだよ〜」


 そんなことしなくても充分みんなに好かれてるのに自覚ないんだろうな。

 でもすぐ調子に乗るので教えてあげない。


「あ!」

何か思い出したようで、突然声を抑える。

「ここ、気をつけろよ」

「え!? 何!?」


 不気味に笑うアーシュ。

「幽霊が出るらしいよ〜」

「は!?」

「夜な夜な女の幽霊が〜……」

「え!? え!?」



「……なんてな!」

じゃまたな〜と言いながら去っていった。


 なんなんだあいつ……

 結局本当か嘘かわからなかった。

その後、ミアが紅茶を持って来てくれたけど、無駄にビクッと反応してしまった。


 その夜、何も考えずに書庫に借りていた本を返しに向かっていた。

 近づいていくと風が吹いてきたので、書庫の窓が開いていることが予想出来る。

 ハッと昼の事を思い出す。女の幽霊……


 書庫から話し声が聞こえてきた。

幽霊ってしゃべるんだろうか……

 でも人がいるのって珍しいな、しかも会話しているなら最低でも二人はいることになる。


 怖いのでそうっと覗いてみる。


「!!」


 驚いて咄嗟に身を隠してしまった。

思わず自分の口を両手で塞ぐ。心臓がバクバクし始める。


 フランだ!女の人の腰に手を回して濃厚なキスしてた……!!


 その女は、銀色の髪で肩までの長さ、胸元がざっくり開いたシャツを着て短パンを履いていた。むっちりした太ももが見えていて、とにかくエロい。

 女の人ってミニスカより短パンの方がエロくない?など関係ないことを考えてしまった。


 そして!!! 黒のフード付きコートを着ていた。


 ブッチが死ぬ前に話してくれたことが思い出される。

 城の中にスパイ、黒のフード付きコートの女……


 まさか……



 速まる鼓動を感じながらも、音を立てないようにそっとその場を離れた。



―――――



 次の日、ドレスを準備しに来たミアにそれとなく聞いてみる。


「ねえ、トニーやフランって何年も前からここに住んでるの?」

「そうですよ! 通常、騎士の方々は城に住むことはないのですが、その……メアリー様に何かあった時のために、小さい頃からトニー様もフラン様も住んでらっしゃいます」


 そうか、私が暴走した時のために……

 ……じゃあ、あまり外部とは関わらないのかな? スパイとして雇われている線は薄い……?


「あ、そう言えば。」

「え? 何!?」

「二年くらい前にフランさんは行方不明になったことがありました。でも数カ月経ったら帰って来られて。

 その間に何があったか覚えていないって言われてましたね……」


「え……そんなことが……?」

「メアリー様とても心配してらして、トニーさんやアーシュさん達と馬であちこち探しに行かれてましたよ。

 でも突然帰って来られて、以前と変わりなく過ごされてたので、最近では誰もそのことに触れてなかったですね」


 疑惑が膨らむ。

小さい頃、この城に来る前からスパイをするのは難しいだろうし、他者との関わりがあまりないならその行方不明の時に何かあったとか……?


 あの女の人、妹とか姉パターンは……

さすがにないか、あのキスは。



「メアリーちゃん!」

 不意にフランに声を掛けられて心臓が跳ね上がる。

いつもどおり部屋に会いに来たようだ。花束を持っている。


「ほら見て!可愛い花を見つけたから買ってきたよ!」


 ミアがフランに近寄って来る。

「わあ! これはダリアですね!白い花が丸くて可愛らしい!」


「メアリーちゃん、どう?」

優しい笑顔で花束を差し出してくれる。


「綺麗だね、ありがとう……」

花束を受け取ろうとすると、フランが顔を近づけてきた。


「大丈夫? どこか具合悪い? 顔色悪いみたいだけど」

私のおでこに手をあてる。

「ん〜熱はなさそうだけど……」


「だ、大丈夫! 昨日、ちょっと遅くまで本を読んでてまだ眠たくて……」

とりあえず何か言い訳を言っておかなければ……


 ぱあっと顔が明るくなるフラン。

「良かった! メアリーちゃんが具合悪いと、心配で離れられないところだったよ〜」


 ミアが笑って言う。

「いつもメアリー様のこと心配されててお優しいですね」


「だって大好きだもん! ね?」

満面の笑みでこちらを見てくる。


 いつもと一緒の優しい笑顔。

本当にあれはフランだったのかな。見間違い……?




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