解毒
森を抜けたのでフランがみんなを集めに行ってくれた。私とゼインは近くの岩に腰を下ろして待つことにした。
「すまない……楽しい旅にはしてやれなかった」
ぽつりと呟く。
「でも目的は達成できたから来て良かったよ」
「そうか……?」
「それにゼインの小さい頃の話を聞くことが出来たし……」
「いつの間にそんな話を……」
フッと笑い立ち上がる。
「次こそは楽しい旅をしよう。な?」
そう言いながら手を差し伸べられる。
ようやく帰れる。みんなで国に。やっと終わったんだ。
私は「うん」と頷きながら、差し出された手を掴もうと手を伸ばした。
手が触れた瞬間、
ゴホッと言う音と共にゼインが膝から崩れ落ちた。
「ゼイン!?」
駆け寄ると、片手で地に手を付き、もう片方で口を抑えている。抑えている指の間から血がボタボタと流れ落ちている。
「何これ……」
「アハハハハ……!!」
振り返ると、カザミが兵士に支えられながら立っていた。
「あたしが投げた泥の中に毒を入れておいたのさ!
!!すぐに呼吸が出来なくなり死ぬだろう!!ハハハハ……」
そうか!魔力封じの石のせいで解毒が出来てなかったんだ!!
「ゼイン!大丈夫!?」
ゼインはゆっくり懐からケースに入った石を取り出した。
「大丈夫だ……これを俺からなるだけ遠ざけてくれ……」
私はそれを受け取りゼインから離れる。
その時、大きな翼の羽ばたく音が聞こえた。
カイトだ!!
カイトがカザミの隣に降り立った。
ひと目見て状況を察知したようだった。
「カイト様!見てください!!今がチャンスです!
今なら動くのもままならない!!」
カザミが目を輝かせる。
カイトがすっと剣を抜いた。
私は気づいたらゼインの前に手を広げて立っていた。
「やめて!」
違う……カイトはこんなこと望んでない。
「メアリーどけろ……」
背後からゼインの声がする。
後ろから服を掴まれる。
「もういいんだ……あいつが殺したいならそうさせてやってくれ」
「でも……」
違う、カイトはそんなことしたいわけじゃない。
「俺たちの事はほっといてくれ。
お前には関係ないだろう。あいつに殺されるなら本望だ。早くそこをどいてくれ……」
背中の手を振り払う。
「いや!!!」
ゼインを振り向かず手を広げたまま答える。
「兄弟の事情はわからないし、あなた達の気持ちもわからない!!
でも!!ゼインが殺されるのはいや!!
カイトが人を殺すのもいや!!
だからどかない!!」
「そんな子供みたいなこと言うなよ……」
カイトが強い風を吹かせながら空へ飛び立つ。
上空でこちらに狙いを定め、剣を向けて落ちてくる。
私は思わず目を瞑った。
カキーン!と音がしたので目を開けると、目の前にトニーとアーシュの背が見えた。
二人が剣でカイトの剣を受け止めている。
「ギリギリだけどセーフだろ」
とトニー。
「空から突っ込んで来るとかカラスかよ」
とアーシュ。
「トニー!アーシュ!!
良かった、二人とも無事だったんだ!」
「当たり前だろ」
「簡単にくたばってたまるかよ」
二人でカイトの剣を跳ね返す。
カイトはカザミの所まで下がった。
カイトが口を開く。
「今回は俺たちの勝ち目はない。引くぞカザミ」
「ですが……!あいつがこんなに弱ること今でなかったじゃないですか!!今がチャンス……」
カザミは何かに気づき、「ひぃっ」と声を上げその場にへたり込んだ。
目の前にはいつの間にかゼインが恐ろしい形相で立っている。
「ゼイン!毒は!?」
後ろから声を掛けた。
「もう消えた」
そう言いながらカザミの前にしゃがみ込んだ。
カザミの顔を掴み自分の手に付いている血をカザミの顔に塗り始めた。
「汚したな俺の顔を」
カザミの顔から絶望が漂っている。
「警告はしたよな。これは万死に値すると」
赤い瞳が燃えているように見える。
そして、剣を目の前に構える。
その時、ゼインのすぐ横でカイトがひざまずいた。
「申し訳ありません。ゼイン国王。
全て私の責任です。どうかこの者を許してはもらえないでしょうか。
この者はこれでも我が国の副団長です。これ以上戦力を失うのは痛い。
そしてもう我が騎士団は二度とあなた方に攻撃をしないことを誓います。」
ゼインが冷たい目をカイトへ移す。
「お前も言うようになったではないか」
くるりと剣の向きを下へ変え、一気にカザミの足を貫く。カザミが、がぁっと声を上げて後ろへ倒れた。
「これで許してやる。だが次はないぞ」
カザミを睨み殺す勢いだ。
カザミは恐怖のあまり動くことすら出来ず震えている。
「お心遣い感謝致します」
カイトが深々と頭を下げた。




