フランとゼイン
トニーとアーシュは最後の一匹を斬り終えたところだった。
「あーーー疲れた!!疲れすぎてもう疲れないくらい疲れた!!!」
意味不明な事を言いながら草むらに倒れ込むアーシュ。
「何だよそれ……。」
笑いながら座り込むトニー。
「ほんともう鳥は見たくないな。しばらくは食べる事も出来なさそうだ……」
「それより大丈夫かな……」
アーシュが寝転んだまま話し出す。
「メアリーがどこにいるかもわかってないしな……」
アーシュに目を落とす。
「違う違う!」
ぱっと飛び起きるアーシュ。
「フランとゼインの方だよ!
あいつら仲悪いからうまくやってるかなって……」
「まあ仲悪いっていうか、フランが一方的に敵視してる感じだけどな」
「なんでゼインはフランを選んだんだろう〜
なんか話したいことでもあったのかな〜」
―――――――
山道に入りペースが落ちる。ゴツゴツした石の感触が靴を通して伝わってくる。
メアリーの魔力を感じとるために体力を温存したいとゼインが言うので一旦休憩することになった。
「早く助けに行かなくていいのかよ」
焦るフラン。
「恐らく大丈夫だ」
「なんだよ、さっきからたぶんとか恐らくとか……!」
「自分の目ではっきり見てないのだから予測するしかなかろう」
言葉に詰まるフラン。はあっと溜め息をつく。
夜空に三日月や無数の星が輝き、さっきまでの戦いが嘘のように思えた。
「結局、俺はメアリーちゃんにとって意味がなかったんだな……魔力を抑えてあげることしかできなかった……」
ゼインがフランを少し驚いた顔で見る。
「ああ、あれはお前だったのか。抑え方を教えたのは。」
そして静かに語り出す。
「あのやり方はその場しのぎで解決にはならない。
実際、その後も何度か発動しただろう。」
「うっせーな!わかってるよ!俺がやってきたことなんて無意味だったって言いたいんだろ!!」
「何を言う!」
ゼインがフランの肩をがっつり掴む。
フランが驚き顔を上げた。
「お前が抑えたお陰であれ以上被害が出なかったんだろう!?
あれだけの威力でメアリーが無傷だったのは奇跡としか言いようがない。水属性魔法できちんと中和が出来た証拠だ。
俺にはそれが出来なかった。
それに前回発動した時、ちゃんとお前から言われた通りに抑えようと頑張っていたぞ」
目を細める。
「ありがとうな。今までメアリーを守ってくれて」
「!!」
フランは何も言えず歯を食いしばりそっぽを向く。
顔が赤くなっているのをゼインに気づかれないように。
「メアリーに会えるだろうか……」
ゼインがぽろっと口にする。
「は!?」
意外な言葉に聞き間違いかと振り返る。
コイツがそんな弱気な言葉言うわけない、そう思ったからだ。
悲しそうな顔を浮かべるゼインを見て、聞き間違いではなかったと確信する。
「な、なんでそんなこと言うんだよ。
いつも完全無欠みたいな態度なのに……」
こっちの方が動揺してしまう。
「俺は今まで多くのものを失ってきた。人も物もだ。
話していた者が目の前で殺されたこともある。
得たものより失ったものの方が圧倒的に多い」
右手を空にかざす。
「この手が届く所にある時はいいのだが、見えなくなると途端に不安になる。大切なものであればあるほどだ。
もうその姿を目に映せないのではないか、触れることは出来ないのではないかと……」
「お前も人間らしい所あるんだな……」
フランは驚きを隠せない。
「本当は大切な物は箱に入れて誰の目も届かない所に隠しておきたいのだ。
もう失わないように。手の届かない所に行かないように。
メアリーもそうしたいが無理だろうな……」
そう言いながら下を向く。
大きいと思っていたゼインの背が小さく見えた。
フランがさっと立ち上がる。
「必ず会える。俺が保証する。不安を消すためにも早く助けに行こう。
国王がそんな弱気でどうすんだよ」
笑いながらゼインに手を伸ばした。
「ああ、そうだな」
笑みを浮かべながらその手をとり立ち上がる。




