鳥人騎士
馬車の中で今後の作戦会議をすることにした。
御者二人にも参加してもらう。御者の中年男性たちは昔から城に勤めているベテランらしい。
ゼインが口を開く。
「まず、メイド、お前にはここを守ってもらいたい。
馬車とこの御者二人だ。剣術は無理だろうが、カラスを追い払う位の魔力はあるだろう」
「わかりました。不安ですが……」
ミアがうつむき加減で答える。
御者二人が口々に声を掛ける。
「ミアさん、我々も多少は役に立ちますよ!」
「騎士団長たちには及びませんが、以前は騎士団に所属していた時期もあるので剣術は使えます!」
そう言って馬車に隠してあった剣を取り出してみせる。
「城の馬車は何かと盗賊に狙われやすいもの」
「そのためにある程度剣術が出来る者しか御者にはなれないのです」
「そうなのですか……!?」
ミアの顔がぱっと明るくなる。
それを確認しゼインが話し出す。
「俺はメアリーを連れて石を取りに行く。
本当は危険な場所には連れて行きたくないのだが、
俺がいない時に何かしら攻撃を受けて力が暴走することが無いとも言えないからな」
ミアや御者を守る最善策だ。
これから魔力封じの石を取得し、トニーたちを助け出し無事に国に帰らなくてはならない。
……大丈夫だろうか。ちゃんと帰れるだろうか。
みんなで無事に国へ……
「またそんな不安そうな顔をする」
ゼインが顔を覗き込む。
「お前は気づいていないかもしれないが、お前の顔は鏡のようなもの。お前を愛する者たちはいつもお前と同じ表情をしているぞ」
顔を上げると、ミアや御者たちが不安そうな顔でこちらを見ている。
……そうだ。しっかりしないと……!
王女として!私を慕ってくれる人たちのためにも!
深呼吸をして気持ちを切り替える。
「皆で無事に国に帰ろう!」
三人が返事をしながら笑顔になり、ゼインも頷く。
―――――――
「どこに石があるかわかるの?」
山道を登りながらゼインに聞く。
「俺は魔力がわかると言ったろ?
あれと同じ要領でだいたいの場所はわかる」
ゼインから手を引っ張り上に引き上げてもらう。
山道を登りきると開けた草むらにたどり着いた。
「この先にあるはずだ」
木々の間の獣道が奥まで続いている。
だが何か気づいたようで、突然足を止め背後に行かされる。
唐突にブオッと強い風が吹いた。
慌ててフードを押さえる。
「みいつけた」
女の声。声をする方を見上げた。
緑の羽根を広げ、長い緑の髪を高い位置で一つにまとめた女が木の上に立っている。目が黄色に光っていて不気味さを醸し出している。
怖い。直感的にそう思った。
カイトは人間の体に羽根が生えていたが、この鳥人は違う。腕は羽根と一体化しており、足も鳥のように3本の指である。それを使い木の枝に捕まっている。
カイトは人間と鳥人の子だから一般的な鳥人とは外見が違うのだろうか。
「お前を殺してカイト様に喜んでもらうんだ」
嬉しそうに笑う。
「なんだカイトの女か?あいつ趣味悪いな」
「聞こえてるぞ!私は副団長のカザミだ!!」
カザミが手を上げると、羽根を持つ騎士が木々や上空から続々と現れる。
「国王に手を出す意味はわかってるんだろうな」
ギロリとカザミを睨み上げるゼイン。
「あら怖い。でもどこにでも不慮の事故ってありますからね〜。
この森の中でどんな死に方したとしても不慮の事故で片付けることができるのでご心配なく」
と、不気味に笑う。
私はゼインの背後からその様子を見守る。
ただただ息を潜めることしか出来ない。
「やれ」
カザミの声を合図にして、騎士たちが斬りかかってきた。
ゼインは素早く剣を抜き、一人また一人と剣をはじいていく。
その時、カザミが何かを取り出し地面に投げつけた。地面にぶつかった瞬間、凄まじい閃光が放たれる。
眩しくて目を瞑るゼイン。目を閉じてもまだ眩しさが残る。
気配を感じ辺りを注視すると、メアリーが兵士の一人に足で胴を捕まえられ、兵士が空へ飛び立とうとするところだった。
即座に手を伸ばす。指が触れ合うが掴むことが出来ず、すぐに引き離される。
「メアリー!!」
ゼインの叫び声も虚しく、あっという間に空高く羽ばたかれ、メアリーの姿が小さくなっていく。
「国王、あれは私たちが後から骨まで美味しく頂きますので無駄にはなりませんよ。
あれを守りながらは戦いにくいでしょう。親切ですよ」
フフッと笑う。
その時、空の遠くに黒い大きな羽根が羽ばたいているのをゼインは目にした。
「そうか……それは気を遣わせたな。
礼をたっぷりしてやろう」
ゼインの冷徹な赤い瞳が輝き始める。




