入国歓迎
コルボ国に入った時には日が落ち、薄暗くなっていた。しばらく進んだ地点でゼインが急に馬車を停めさせた。
「お前たちはここにいろ」と言い、御者も中に入れ自分だけ外へ出た。
トニー達は何事かと馬車から降りてきてた。
バサバサという無数の羽音が聞こえ、薄暗い遠くの空を埋め尽くすほどの黒い鳥の群れが見える。
「なんだあれ……」
トニーが目を凝らしながらその様子を観察している。
近くになるにつれその一匹一匹の様子が鮮明に見えてくる。普通のカラスの三倍ほどある大きさ、ギャアギャアと威嚇する鳴き声がどんどん大きく聞こえてくる。
「これ……やばくないか?」
アーシュが剣を構え始める。
それに続きトニーやフランも手に剣を持ち始める。
ゼインが馬車へ手をかざすと、緑色の光が馬車を包みだす。
トニーがそれに気づく。
「結界!?」
フランがゼインへ叫ぶ。
「国王!こっちにもそれを!」
ゼインはフンと鼻を鳴らす。
「自分の身ぐらい自分で守れ」
それだけ言い残すと馬車の中へ入って行った。
「ケチ国王〜!!」
「やるしかないな」
嫌そうにつぶやくトニー。
「ちょうど退屈してたしな」
アーシュは笑っている。
ゼインが少し扉を開けて声を掛ける。
「フードは絶対外すなよ」
カラス達が鳴き声を上げながら一斉に突っ込んでくる。ゼインの馬車に当たったカラスたちは感電したように地に落ちていく。
「すごい……こんな事が出来るなんて」
思わず言葉が出てしまう。
「この位ならこの弱い結界で大丈夫だ」
「トニーたちは助けなくて大丈夫かな……?」
「メアリーは心配性だな。あいつらを少しは信用してやれ」
ゼインは腕組みをし足を組んで目を瞑った。
私は心配でたまらず三人の様子を目で追った。
そう言えば三人の戦う姿って見たことない……
カラスのギャアギャアという声が四方八方から聞こえて耳を塞ぎたくなる。
トニーは、カラスの攻撃を避けながら素早く剣を振り、振ったかと思えばすぐ次の標的にとなめらかに攻撃している。
フランは小柄な事を活かし、低姿勢から上に振り上げる。一匹だけでなく数匹が重なる線を見つけ一振りでいっぺんに仕留めている。
アーシュは足取り軽く、ダンスでもしているような動きでヒラヒラと剣を振っていく。
すごい……!こんな風に戦うんだ。
「さすが三銃士ですね……」
ミアさえ言葉を失っている。
「くそっキリがないな……」
剣を構えながらトニーがつぶやく。
「どこまで続くんだよ」
斬りながらアーシュが答える。
フランが何かに気づいた。
「あれ?ゼインが……」
ゼインがゆっくり扉を開け外へ出て来た。
カラスが突っ込んで来るが見向きもせず剣を振る。バサバサッとカラスが落ちていく。
「カイト!!!」
ゼインの怒りを纏った大きな声が辺りに響き渡った。
その声で馬車の窓がビリビリ揺れる。
カラスたちの動きがピタリと止まり、攻撃をやめたかと思うと一羽一羽、地に足を付けていく。
突然、強い風が吹き馬車がガタガタ音を立て揺れ出す。トニーたちは倒れないよう身体を踏ん張っているようだ。
カラスよりも大きな翼をもつ生き物がくるくる回転しながら空を舞い高く上昇したかと思うと、勢いよくゼインの背後に着地した。
大きな真っ黒な羽根を広げひざまずく鳥人がそこにいた。
「申し訳ありません。ゼイン国王様でしたか。まさかあなた様だったとは。」
顔を上げてゼインの背後を見上げている。
黒い髪に橙色の瞳。
ゼインは振り向かず答える。
「荒い歓迎だな。国王のもてなし方も忘れたのか」
「滅相もありません。カラス達が侵入者だと思ったのでしょう。しつけが行き届いておらず申し訳ありません」
「そうか……」
顔を傾けカイトを睨み下ろすゼイン。
「カラスはお前の指示でしか動かないはずだがな」
カイトが小さく舌打ちする。
「まあそういうことにしてやろう。さっさと城まで案内しろ」
「かしこまりました。今日は我々の好物の人間の肉を持って来てくださったのですね」
フフッと不敵に笑うカイト。
ゼインは何も答えず馬車に戻った。
「あの人は誰?知り合いみたいな話しぶりだったけど。」
気になったので聞いてみた。
「あれはこの国の騎士団長のカイトだ。
そして、俺の弟でもある」
「え!?弟!?そう言われるとなんか似てる……」
「まあ腹違いだがな。俺が国王になったことを良くは思ってない」




