メアリーという人間
「体はどうですか?」
ミアが心配そうに全身を見渡す。
恐る恐る手や足を動かしてみるが、痛くない。
「すごい!!痛くない……」
「それは良かったです!!
早速ですが、包帯を外して綺麗にお身体を洗いたいので湯殿に行きましょうか?」
うんうんとトニーもフランも頷いている。
「じゃあ私も一緒に行くわ!女用の湯殿でしょ!」
トニーとフランが、がっしりとアーシュの腕を掴む。
「お前はダメだ」
と、トニー。
「やめときましょうね」
と、引きつり笑顔のフラン。
「なんで??いいじゃない一緒に入って」
ダメな理由がわからず尋ねる。
トニーから大きな溜め息が出た。
「こいつは男だ」
……え?こんなに可愛いのに??
目もくりくりで睫毛バサバサでピンクの口紅まで似合ってるのに??
三人の口喧嘩が始まった。
「クッソーあと少しで行けそうだったのに!!」
「お前ってやつは!記憶喪失につけ込みやがって!」
「メアリーちゃんの裸見に行こうとしたのかよ!!」
「バカか!誰が姉貴の裸見て興奮するかよ!他の女に決まってるだろ!」
アーシュはそこまで言うと、
「ね?ミアちゃん」
とウインクを送った。
ミアは驚き、顔を真っ赤にして私の背後に隠れる。
ああ本当可愛いこの子。私が食べちゃいたい。
どうか悪い男に捕まりませんように…
ミアと一緒に湯殿に行き、鏡を見てビックリする。
「な、な、なにこれ……」
「ぁあ、一週間寝込まれていたので、少しお痩せになっておられますが、美しいままですよ。」
違う違う、痩せたとかそんなのわからない。
顔はアーシュとよく似ているがアーシュより女顔だな。以前から思っていたが、外国の人はなんであんなに美形揃いなのだろう。
そしてスタイルが良すぎる。モデルかこれは。
胸は大き過ぎず小さ過ぎず、ウエストは細い。腕や足もほっそりと言ったところ。
これは、私が求めていた理想のカラダ……!!
何よりこの瞳が好きだ。深い緑色。自分で見てて吸い込まれそうで目を離せない。
「メアリー様、風邪を引きますよ!」
裸のまま鏡に引きずり込まれそうな勢いだったのでミアに声を掛けられた。
腕や足をじっくり見たが、傷跡一つなさそうだった。痛みはもう感じない。さすがルナ。
ルナと言えば、フェアリーはいつもいるわけじゃないらしい。自分の気の向いた時に来るのだとか。
お礼を言ったら照れながら何処かに消えていった。
またすぐ会えるといいな。
ミアは片付けてから戻ると言うので一人で部屋に戻っていたところ、廊下にトニーとアーシュを発見する。アーシュはドレスから着替えておりシャツとズボン姿で新鮮だ。
何やら難しい話をしていそうだったので会話が途切れるのを待つことにした。
トニーが難しい顔で尋ねている。
「メアリー、どう思う?弟の目から見て」
疑われてる??
「本当に記憶喪失だと思う」
と、うつむき加減のアーシュ。
「理由は?」
アーシュは、指を四本立てて説明する。
「まず一つ、俺が最初に腕に触った時。あれは本当に痛がっている反応だった。
そして二つ、姉さんって呼んだ時何も反応しなかっただろ?メアリーは、姉さんって呼ぶといつも怒ってた。
そして三つ、父上と母上のことをお父さんお母さんって言った。あんなこと今までに一度もない……」
そこまでで言うのを止めようとするアーシュ。
「四つ目は?」
「四つ目……メアリーはあんな泣き虫じゃない。」
「そうか、いつも強かったもんな」
「違う!」
アーシュの声が大きくなる。
「強かったんじゃない!強がってたんだ!!
いつも歯を食いしばって泣かないようにしてただけだ!!」
「そうか……」
トニーは、「ありがとう」と言いながらアーシュの背中をさすった。それから二人は別々の方へ歩いて行った。




