地獄の意味とは
夜になると扉が開かれゼインが現れた。
でも今回は何か違う。
扉が開くや否や剣を抜き私の元に走ってくる。
その勢いのまま頭上から剣を振り下ろされる。
早すぎて微塵も動けなかった。目をつぶるのがやっとだ。
ゼインが投げた剣の鞘がカラカラ音を立てている。
何が起こった……?
そっと目を開けてみる。
目の前に剣先。心臓が跳ね上がる。鼓動が速くなる。このまま殺されるのか……?
顔を上げると、ゼインは冷たい目でこちらを見ていた。
「違うのか……」
ボソッとつぶやいたかと思うと鞘を拾い上げ剣を戻している。
……違う?何が?
「国王様……!!」
何か言ってほしい。この意味を、私がここにいる意味を。
「国王と呼ぶな、名前で呼べ」
そう吐き捨てるように言い部屋を出て行った。
翌日の夜、ゼインが不敵な笑みで何かを持って来た。
「今日は良い物を持って来た」
ゼインの手には小鳥が握られている。
この状況を知ってる……
皆から聞いた子供の頃の話。
私じゃない、メアリーの身体が怖がってる。
やめて。お願い。
手を伸ばしたが、小鳥は私の手に届く前に剣で首を切られた。血しぶきが顔に飛んでくる。小鳥の首と胴が切り離された状態で床に落ちていく。
あまりにも一瞬の出来事だった。
驚き過ぎて涙すら出てこない。
「なんでこんな……」
転がっている小鳥の首を体を拾う。手が血だらけになった。
頭上から舌打ちが聞こえた。
ゼインが出て行くのを確認し、ミルクがどこからか出てきた。すり寄って来たかと思うと床の血の匂いを嗅いでいる。
庭に小鳥の亡骸を埋めに行った。
その翌日の夜もゼインが来た。
良かった、今日は何も持っていない。
そう思ったのも束の間、ベッドの方へ歩き出す。
え……待って、そこは……
ベッドの上にミルクが寝ている。
「だめ!!いや!触らないで!!」
慌ててゼインの方へ行こうとするが、向こうの動きが明らかに速い。
寝ているミルクを手荒く掴み剣を向ける。
「お願い!!やめて!!」
ゼインの腕にしがみつく。
手を伸ばすがあと少しのところで届かなかった。
ミルクの体が突き抜かれた。剣を伝って血がしたたり落ちている。
ミルクは鳴く時間すら与えられなかった。
一気に身体が熱くなる。左手があの時のように熱を帯びてくる。
……暴走する……!?
呼吸が荒くなり苦しくなってくる。目がぼやける。手が痺れる。
ああ過呼吸か……
そのまま意識が遠のいていくのを感じた。
次に目を覚ました時、ベッドの上だった。
全部夢なのかとも思ったが、ミルクの亡骸が目に入り現実に戻される。
ベッドにうずくまって泣いているとゼインが入って来た。
微笑を浮かべている。
「次は何を殺そうか」
私の顔を見て呆れた顔をする。
「なんだ泣いているのか。あんな猫ぐらいで。
欲しいならまた持って来てやる」
「猫じゃない!!ミルクよ!!
ミルクはこの世に一匹しかいないのに……!!」
翌朝、ミルクの亡骸を小鳥の墓の隣に埋めに行った。綺麗な白い毛は血で汚れその血も固まり黒くなっている。
その時、ルナが現れる。
「ルナ!!」
ルナを両手で包み込む。
そして、今までの事を聞いてもらった。
「もう逃げた方がいいんじゃない?」
「でも国が……」
「ここにいつまで閉じ込められるかもわからないし、命の保障もないでしょ。死んだら意味ないよ」
「そうだね……心も壊れてしまいそうだし」
「あたし、どこか逃げる場所ないか探してくるから」
その夜、ルナと話しているとゼインが扉を開けた。
ルナはさっと私の後ろに身を隠す。
「お前の大切なの者の名前を言え」
言うわけない。どうせ殺すんだろ。
睨みながら無言を貫いていると、何かに気づいたようで私の髪に手を伸ばした。
「いいのがいるじゃないか」
と嬉しそうに笑う。
「そうか、お前は妖精がついているのか」
ルナの羽根を掴んで私に見せてくる。
「やめてください!!!それは私のフェアリーです!!」
「案ずるな。人が死ぬと妖精も死ぬが、妖精が死んでも人は死なん」
「そんなのどうでもいい!!返して!!!」
私の声に耳を貸さず剣をルナに向ける。
「やめて!!!もうやめて!!!」
左手を伸ばした途端、その手から火柱が上がる。
……熱い!!痛い!!ルナは!?
「ワハハハ……!!」
ゼインが高らかに笑い出す。
驚いてゼインの方を見る。
「これだ!!これだ!!これを待ってた!!」
目を見開いて炎を喜んでいる。




