ドミナー王国へ
その数週間後、再びドミナー王国から呼び出しが来た。
みんなが怖い。ピリピリしている。
フランはわかりやすくイライラしているし、トニーは顔に出さないが雰囲気が冷えている感じ。
アーシュはウロウロするし、ミアはオロオロしている。
でも行くしかない。
前回行った時、身体的には傷つけられていない。
身体的には。
心は、ぐっちゃぐちゃになるほど傷ついたけど。
ここで私が行かないと言えば、みんな優しいから同意してくれる。もし、戦争が起こっても仕方なかったと慰めてくれるだろう。
……そんなんじゃダメだ。
王女として国の為になる選択をしなくては。
自分の気持ちに蓋するくらい簡単だ。
一人で考えているとルナが来た。
「聞いたよ、前回のこと。」
「うん……」
力なく頷く。
「今度はさ、あたしがこっそり来てあげるから」
「え!?大丈夫なの!?」
「まあ、あたし小さいし簡単に見つからないでしょ」
フフと笑う。
その一言でどんなに心が和らいだことか。
ルナ本当に大好き。
「ありがとう」と言って頭を撫でてあげる。
ルナがニコニコしてくれるので私もつられて顔が緩む。
その夜、なかなか眠れないので城内を歩くことにした。夜も廊下には所々に明かりが置かれている。
バルコニーに出て夜風に当たる。少しひんやりする。
空は無数の星が輝いていた。何も考えたくないので星を数えることにした。
いち、に、さん、し、ご……
音がしたので振り返るとトニーが立っていた。
マジで恥ずかしい。いつの間にか口に出して数えていたみたいだ。またバカにされる!と思って構えたが、
「朝まで数えるつもりかよ」
と、笑っている。
どっちみち恥ずかしい。
トニーもバルコニーへ出て来た。
「眠れないのか?」
「うん……」
「別に行かなくても……」
私だって行きたくない。でも仕方ないじゃない。
……でも言えない。
ムッとした表情でトニーを見上げる。
が、トニーは悲しい顔をしていた。
ずるい。そんな顔されたら文句も言えないし八つ当たりも出来ないじゃない。
いたたまれなくなり目線を外し庭へ目をやる。
「ごめんな……」
トニーが小さくつぶやいた。
頭に手を乗せられる。
「お前にはつらいことばっかりさせて」
頭に置かれた手だけでも手が大きいことがわかる。
言いたい。行きたくないって。怖いって。不安って。そばにいてって。
でも一つ言ったら次から次に言葉があふれて止まらないし、絶対泣く。
そうなれば自分はスッキリするだろうけど、代わりにトニーは今より重い罪悪感を感じることになる。
涙で景色がにじむ。ダメだ。泣いたら不安にさせる。困らせてしまう。
トニーの手をとり、ぐっと握った。
トニーも優しく握り返してくれた。あったかくてゴツゴツしてる。
何も言えず精一杯できることがそれだけだった。
涙が引くまで遠くを見ていよう。
きっとそのうち止まるだろう。
トニーはそれから何も言わなかった。
風の音や木の葉の擦れる音、虫の鳴き声が響いていた。とても静かな時間が流れた。
それを遠くから見てる残り三人。入るタイミングを逃してしまったようだ。
翌朝、皆に会うとそれぞれ目が腫れていたり、クマが出来てたり、充血していたり。
眠れなかったことが見てすぐにわかった。
私たちはお互い目が合うと照れ笑いを浮かべ目を逸らした。
なんて優しい仲間たちなんだろう。
ここにずっといたい。
すごくあったかい。ずっとここにいたい。
心配してくれる仲間がいて本当に嬉しい。
みんな大好きだ。




