治癒魔法
「そうなんだ……」
申し訳ないが、見たこともない人が死んだと聞いても全く悲しみが沸いてこない。それが親だと言われてもだ。
なんと答えたら……
「バッカじゃない!?記憶喪失とか言ってぶりっ子しちゃって!男の気ぃ引きたいだけでしょ!!」
甲高い声が聞こえてきた!!
キタキター!悪役令嬢的なアレだよね!?やっぱいるのね、そういういかにもって子が!!
少しワクワクしながら辺りを見回すが、それらしい姿は見えない。
……と思ったら、いた!!!!
くるくるのピンクの巻き髪、同じくピンクのミニのドレス、右手にステッキ、背中には羽根……
しかも、ちっさい!!!
私の右肩に乗ってる!!!
妖精さんだ!!!!
……あれ?あれあれ??
勝手に思ってた。タイムスリップして中世ヨーロッパの令嬢に生まれ変わり。
じゃなかった!!!
もうアレじゃん!妖精出ちゃったら異世界的なアレじゃん!!!
「可愛い……」
ボソッとつぶやいた。
めっちゃくちゃ可愛い!!この小さい手!足!指なんて小さすぎてよく見えん!たまらん!触りたい触りたい!でも小さくて壊れそう!尊い!!
「な、なによ、可愛いとか言っちゃって。いつも見てるくせに……」
照れてる!!照れてもじもじしてる!
「ルナ、今日もやってくれるか?」
トニーが静かに妖精さんに話し掛ける。
ルナは「わかってるわよ!」と言ってステッキを持った手を上にかざした。
何やら呪文を唱え始める。
ステッキの先がポゥと明るくなり、私の身体全体を緑色の光が明るく照らし出す。明るくなった部分の痛みが消えていく。
「え……なにこれ……」
ミアがそばに来て教えてくれる。
「治癒の魔法ですよ。この一週間、毎日ルナがやってくれました」
数分後にすっと光が消え、ルナが膝の上に寝転がる。
「あ〜もう疲れた〜〜」
「一週間……」
と、つぶやいたのをルナは聞き逃さない。
ゆっくりあぐらをかいて睨んでくる。
「どうせ遅いって言いたいんでしょ!他のフェアリーなら三日で出来るでしょうけど、私は出来損ないだから出来ないのよ!!」
自然と涙があふれてくる。
フランが慌てる。
「大丈夫!大丈夫!泣かないで!
もう〜ルナ言い過ぎだよ〜」
ルナも少し申し訳なさそうな顔だが、フンとそっぽを向く。
「違うの、違うの!一週間も私の為に……」
いや、この子の為にか。この体の子とルナの絆があるのだろう。こんな小さな身体で毎日毎日。
自分に自信がないのなら、治せるか、目を覚ますか不安だったろうに……
手のひらに乗せて顔の近くに連れて行く。
「ありがとう。本当にありがとう。今、私が目を覚ましているのは全部あなたのお陰だよ」
涙声で震えてうまく言えない。ちゃんと伝わっただろうか。
ルナが両手で顔を覆い、わっと泣き出した。
「メアリー全然全然起きないんだもん!三日経ってダメでどうしようって思って、五日経ってもうダメなのかもって思ったの、止めようかって……」
しゃくり上げながら続ける。
「でも会いたいと思ったの!またメアリーの笑顔見たいって思ったの!だから命が尽きるまで毎日するって決めて今日までやって来たの!!」
「ああ……本当にありがとう。」
私も涙が止まらない。抱きしめたいが小さいので頬を近づける。ルナは頬にほおずりをしている。
ああ、なんてこの子はみんなに愛されていることか。
きっとこの子がみんなを愛している子だったんだろうな。




