盗賊とハイムリック
「さあ、どっちの嬢ちゃんから売ろうかな」
油断してた。ミアと盗賊に捕まってしまった。
数時間前……
体調も戻ったので、ミアとまたメイド服を着て街へ出掛けることに。
病舎に必要な物などないか見に行かないと。
騎士団はまた遠くへ演習に行くらしいので二日は戻らない。
警備の兵士はいるが、メイド服を着ているとすんなり外に出る事が出来た。
「やっぱ外はいいね〜のびのび出来る〜」
「メアリー様、絶対に目立つ行動はしないでくださいよ!」
「わかってるって〜」
色々な店を見て回る。
やっぱ革の手袋くらいかな使えるのは。革生地のマントもいいな。
食料ももっと栄養のある物を届けさせないと。あとは寝具とか。衣服もか。
まずは環境だろうな。考えれば考えるほど問題山積みだ。
革の手袋を数枚、マントを数枚購入し帰ることにした。
林に差し掛かった時、背後に気配を感じ少し早歩きをすることにした。
もう少しで城が見えそうな所で前の茂みからザザッと男達が現れる。
急いで引き返そうとするも背後にも男たち。
絶体絶命である。
私とミアは縄で両手を縛られ、古びた小屋の中へ通される。
数人の男たちがテーブルを囲んで食事をしていた。
その中でも一際目立つ、巨漢で黒ひげの男が頭のようだ。
「おお、いいの見つけてきたじゃねえか。
おもちゃにしてもよし、売るにしても良さそうだな」
ミアは怯えて声も出ない。震えているのが伝わってくる。
どうする。ルナに助けを呼んできてもらうか。でもどうやってルナを呼び出す?
その時、突然、頭が苦しみだし、首をおさえながら倒れ込んだ。
「お頭!!」
「誰だ!毒を盛ったのは!!」
急いで男の元へ駆け寄る。
違う!これは……!!
顔面から唇まで紫に変わり、指先までも変色し始めている。首元を抑えるチョークサイン。
「縄を切れ!私が助ける!!」
そうでも言わないと切ってもらえないだろう。
その言葉を聞いて子分が急いで縄を切る。
男の上体を起こし背後に回り手で胃を押さえようと腕を前へ回すが、大きすぎて届かない。
仕方ないので背中を思いっきり叩く。力を込めて何度も何度も。
そのうち、ゴボッという音が聞こえ肉片が飛び出す。
すると顔色が一気に赤みを取り戻していった。
荒くハアハアと呼吸が始まる。
子分たちがわあっと盛り上がる。
「あんたすげえよ!!」
「お頭助けてくれてありがとう!!」
頭もゆっくりと起き上がり、
「命の恩人だ」とつぶやいた。
助かったな、お互いに。
これで助けることが出来なければ、死んでいる頭を思いっきり傷つけた、とかで即殺されていたかもしれない。考えるだけで恐ろしい。
ミアも縄を切られ、小屋から解放された。
申し訳なかったと、たくさん果物や宝石をくれようとしたので、私にではなく病舎の前に食べ物を置くよう伝えた。
何度も何度もお礼を言われ、頭自らが城まで送ってくれた。
「今度から街に買い物に行く時は俺が同行しよう」
お頭は忙しいんじゃないかと言ったが、仕事は部下にやらせるから暇なんだと言われた。
名前はブッチというらしい。
新しいボディーガードが出来た。
部屋に戻りミアに言われた。
「先日の舞踏会といい、今回もなぜあのような事が出来るようになったのですか?」
なんと答えよう……看護師って言っても転生って言っても伝わらないだろうし……
「本を読んで……」
これだ!ベストの答え!!
「ああ!本ですね。書庫にはたくさん本が置いてありますもんね。
今度何か面白い情報があったら教えてくださいね」
何とか逃げ切れたな。
そしてミアには今日の出来事はトニーたちに言わないよう念を押した。
心配されて街に出歩けないよう警護を増やされては大変だ。




