わたしはだあれ?
全身の痛みで目が覚めた。
知らない天井。手も足も、頭でさえ動かそうとすると電気が走るように痛む。
「痛い……」
思わず口から出てしまう。
「メアリー!!目が覚めたか!?」
長髪で金髪の長身男性。なんだろこの格好?昔の貴族みたいな格好。外国人?日本語うまいな……
一直線に私の寝ているベッドへ走ってくる。
え?何なに?なんで近づいてくるの!?こわいこわい……痛くて身体動かせないのに!!
ぐっと顔を近づけられる。
「どうした??なんでそんな変な顔してる?
傷がそんなに痛いのか?」
え?私?誰かと間違ってる??
一旦落ち着こう……。
私何してたっけ……?
昨日夜勤してたよね……夜勤明けで運転して帰ってたら……いきなり対向車線から大きなトラックが突っ込んできた……
……で?
全然この状況になる理由じゃないんだけど。
死んだの?死んで生まれ変わった??
生まれ変わったと仮定して、この子は?この子の魂か意識かはどこに行ったの?
死んだ私の方に行ったとしたら、この子はもう……
「メアリーちゃん!!!」
今度はさっきの人と違うタイプの男性。
肩までのフワフワな金の髪、格好はさっきの人と似てる。
やはり私の元に駆け足でやってくる。
泣き出しそうな顔をして私の目をみつめる。
かっ……可愛い!!めっちゃ美形じゃん!!青い瞳に引き込まれそう!!
私が何も言わずにいると、ぱっと最初の男性を助けを求めるような目で見上げた。
「トニーさん!!なんで!?なんでメアリーちゃん何もしゃべらないの!?」
やっとのことで口を開く。
「だれ……?」
長身の男性が意地悪そうに笑う。
「ほら、お前のこと忘れたってよ」
「そんなぁ〜」
フワフワの髪を揺らしながら泣きそうな顔を見せる。
「いや……私、だれ?」
驚いた二人が慌てて呼びに行ったようで、続々と人が集まってきた。メイド服や騎士?や執事?みたいな服装で仮装パーティーのようだ。
「先生!」
長髪の男性が先生という白髪の老人に駆け寄り、私の状況を説明している。
先生が近づいてきて、顔を見る。手や足の包帯を眺めている。
周りは言葉も発さずその光景を見守っている。何人かは祈るようなポーズをしている。
痛みが強いのに触られたらどんなに痛いか……
と構えていると、
老人は私に触れることなく皆の方を振り返り、
「わかりませんな」
と首を振った。
周りがわっと落胆の声を漏らす。
そりゃそうだろ!!アンタは医者か!?医者なのか!?聴診器はどうした!?ライトはどうした!?瞳孔は見ないのか!?麻痺があるのか調べないのか!?
百歩譲って道具がないなら問診で会話して症状聞くべきだろ!!そもそも脈は測れるだろ!!
長身の男性は「ありがとうございました」と頭を深々と下げている。
そんなやつに頭下げんでいい!!
こんなのが医者なんて先が思いやられる。
老人は偉そうにゆっくりと歩いて部屋を出て行った。
「トニーさん、どうしましょう」
栗色髪のメイド服の子がすがるように言葉を発した。
なるほど長身はトニーというのか。
私はメアリーと呼ばれているからそうなのだろう。
この女の子小さくて可愛いな。メイド服も似合ってる。
「いつもどおりコイツの世話してやってくれ。
しばらくはミアだけで接してもらう。」
ミアはこくんと頷きながら心配そうに私の方をている。
トニーとフランは集まった使用人達へ部屋から出るよう促し始めた。
「お姉さまッ!!!」
使用人達と入れ替わりに女性が走って来た。
後ろに束ねた金の髪がゆらゆら揺れる。
ベッドサイドに来るなり抱きつかれる。
「痛っ!!」
思わず口に出た。
その子は驚いてパッと手を離した。
「ごめんなさい!!でも本当に何もわからないの!?アーシュだよ!?みんなはわからなくてもアーシュのことはわかるでしょ!?」
全然わからん。記憶を探ってもかすりもしない。
お姉さま?妹か?
そういや親が来ないな。こんなに周りが集まるのに親は?
「お父さんとお母さんは?」
一瞬にして部屋が静まり返る。
あまりにも静かになったので外の風の音がよく聞こえ、風が吹いていたことに気づかされる。
トニーとフラン、ミアとアーシュはお互い目を合わせて動揺している。
なんだろう。言ってはいけない雰囲気が漂っている。
トニーが腹を決めたような表情になり静寂を破る。
「亡くなったんだ、二人とも」




