お姉さまに拾われてものの5分で激旨メシに懐柔された私のその後の話 ~後編~
数ある作品の中から、私の作品を見つけてくださり、ありがとうございます。
読んでいただける方に楽しんでもらえるよう頑張りますので、どうぞよろしくお願いします。
当作品は、私のオリジナル連載作品である【異世界に転生したらものの5分で最強種にエンカウントした俺のその後の話】と言う作品のスピンオフとして、登場人物であるケイラ視点での物語を書いてみました。
本編の厚みを増すとともに、語られなかった話なども盛り込んでいきたいと思いますので、今後もこのような形で、短編をいくつか書こうと思っています。
本編も含めてよろしくお願いします。
お姉さまに拾われてものの5分で激旨メシに懐柔された私のその後の話 後編
~異世界に転生してものの5分で最強種にエンカウントした俺のその後の話スピンオフ~
「師団長、パトラム辺境伯様より親書が届いております。」
「ありがとう、スコット大佐。」
シェラ・パラディオール・パトラム辺境伯。
私の血のつながっていない姉の名だ。
私たちの長姉が嘗て滅ぼした国々があった地域を“パトラム領”とし、その領主を拝命したのがシェラだ。
「シェラが親書なんて、めずらしいわね、何かあったのかしら。」
私は姉からの手紙を開封し、内容を確かめる。
彼女からの手紙には、久しぶりに時間を作って、長姉の思い出話でもしながら、食事でもとのお誘いの手紙だった。
とはいえ、そんな事が本当の目的とは思えないので、きっと別の目論見があるのだろう。
私とシェラを拾って育ててくれたお姉さまが、私たちの元からいなくなって、もうどのくらいになるのだろう。
私達三姉妹の長姉で、現代社会の創造主であり、後に神となってこの世から去ったキラ・パラディオール。
彼女が残した功績は、計り知れないものがあり、現在、かろうじて存在している他国についても、ヤーパニ皇国の庇護無くしては、一冬を超すこともままならないとさえ言われている。
嘗て人は、魔物の脅威に怯え、その脅威から身を守るために、お互いの身を寄せ合い、ただ生き残るためにのみ働き、子を残し、そして、死んでいった。
厳しい冬の寒さに耐えるための魔石を求め、人々は軍を起こし、強大な魔物に立ち向かい、多くの犠牲を出しながらも、何とか生存競争の中、生きながらえてきた。
しかし、キラ・パラディオールは、突然現れ、いとも簡単に人類の脅威を取り払い、人々の生活にゆとりを齎し、ただ死に向かって生きるのではなく、生きる意味と喜びを与えた。
そんな偉大な姉の背中を見て育った私達二人も、シェラは、魔法の分野において、彼女の右に出る者は、今後千年は現れないだろうと噂され、私も、竜化に至った竜人族の中では、群を抜いていると云われていて、表向きのあだ名は“竜姫”だが、裏では“血祭姫”と呼ばれているらしい……。
話がそれたが、彼女からの親書には、明日の夜にでも、久しぶりにムーシルトの屋敷で会えないだろうかといった趣旨の内容が書かれていて、私もその時間帯であれば、特に差し支えることも無いので、承知する旨の返事をしたためることにした。
この世界では、というか、この国では、各主要都市に転移魔法陣が設置されていて、例えばこの中央大陸からシェラが治めるパトラムまでを、何らかの交通手段を用いて移動するとなると、数日から一週間はかかるだろうが、転移魔法陣を使うと一瞬で移動できる。
当然人だけではなく、荷物も一瞬で移動が可能なので、手紙なんかも一瞬で送ることが出来る。
なので、このシェラから届いた親書のように、封蝋が乾ききっていないなんてこともたまにある。
私は、今日中にどうしても終わらせる必要がある仕事のみを片付けて、早々にムーシルトへと移動した。
ムーシルト城の城下町は、昔と変わらず、人の往来が盛んで、商店街も活気があり、町全体が賑わっているようだった。
「懐かしい……。昔と変わらぬ活気があって、良きかな良きかな。」
「あれ、ケイラちゃんじゃないかい?」
「あぁ!もしかして、メラねえちゃん?」
「やだよ、こんなお婆さん捕まえて。そういや、ケイラちゃんも立派になったんだっけか、ケイラちゃんなんて呼んだら怒られちゃうね、ゴメン、ゴメン。それにしても、昔と全然変わらないね。すぐにケイラちゃんだってわかったよ。」
「メラねえちゃんこそ、やめてよね、昔のままケイラちゃんで良いに決まってるじゃん。それにしても、お店続けてくれてたんだ。嬉しい。一つ貰おうかな。」
「何味にする?ピンクかい?」
「うん、やっぱりピンクでしょ!」
「はいよ、お待ちどう様。2ミルね。」
「はい、ありがとう。値段昔のままなんだねw」
「良くも悪くも、物価が安定してるからね。また顔見せておくれよ!」
「うん、またね!ありがと~!!」
私達姉妹は子供の頃、よくここの商店街に連れてきてもらっては、メラさんのお店で売っている、ミックスフルーツジュースを買ってもらって飲んでいた。
“ピンク”とは、子供の私が名前を覚えられなかったので、色で注文していた名残と思ってもらえれば良いかと思う。
ちなみに、長姉であるキラお姉さまは、ここから2ブロック先のジェラード屋さんを激推ししていて、よくこっそり一人で通っていたらしい。
懐かしのピンクに舌鼓を打ちながら、商店街を抜けて貴族街を通り、目の前のムーシルト城を迂回して、城の裏手にある、かつて私達が生活していた屋敷を目指した。
屋敷に着くと、イチカが出迎えてくれた。
イチカはお姉さまの元で仕事をしていたメンバーの一人で、現在は空席となっているパラディオール領の領主代理を務めてくれている。
何れ私が騎士団を退くことになるまでは、彼女にこの領地を切り盛りしてもらうことになっている。
「ただいま。」
「おかえりなさいませケイラ様。シェラ様からお話は伺っております、夕食の準備も整っておりますが、まだシェラ様はお見えにはなっておりませんので、リビングでおくつろぎくださいませ。」
「ありがとう、でも、飲み物はいいわ。ほら、商店街を通ってきたから、久しぶりにピンク買っちゃった。」
「あら、懐かしゅうございますね、ケイラ様が幼い頃には、よく街でお飲みになっておられましたものね。」
「こっちは変わりない?」
「はい、万事滞りなく。」
「だよね。」
「それではごゆっくりと、お寛ぎくださいませ。」
「ありがと~♪」
嘗て私達がこの屋敷に住んでいた頃、私達は、表向きの立派で広い、いかにも貴族が住んでますみたいなお部屋は居心地が悪いと、奥にある使用人達が利用していた宿舎の一室をそれぞれ好きに使っていたので、この部屋のように表向きの屋敷エリアにある部屋は、ほとんど入ったことが無く、かえって物珍しいとさえ感じてしまう。
私がピンクを片手に室内の調度品や絵画などを眺めていると、部屋の外で、イチカの「お帰りなさいませ。」という声が聞こえたので、部屋から出ると、相変わらずの美少女がこちらを見て微笑んだ。
「あら、ケイラ、早かったのね。お久しぶり。」
私は、挨拶を返そうと口を開きかけると、シェラが続けて言った。
「さぁ、どうぞお入りになって、懐かしいでしょう。」
と言って、誰かを屋敷に招き入れようと、横に一歩ずれて体を開いた。
すると、その後ろから、壮年の女性が「お邪魔いたします。」と言いながら入ってきた。
「え?もしかして、マリアさん……?」
「ケイラお嬢様、お久しぶりでございます。お変わりなく、いえ、一段とお美しくなられまして……。」
「マリアさ~~~~~ん!!!」
私は感極まってマリアさんに飛びつこうとすると、シェラの魔法でがっちりと拘束されてしまった。
「あなた、マリアさんはヒュームですのよ。そんな勢いで飛びついたら、大怪我をさせてしまいますわよ。」
「あぁ、ゴメン、ゴメン……。」
私は気を取り直して、マリアさんをそっと、優しく、ハグした。
「また会えて嬉しいよマリアさん。でも、これはいったい、どういうこと?」
「私は、こちらでお暇をいただいた後は、ハーコッテの児童施設に籍を置いていて……。」
するとシェラがマリアさんの話を遮って言った。
「少々お待ちいただけますか?玄関先で立ち話もなんでしょう。さぁ、マリアさんどうぞこちらへ。また昔のように皆でお食事をいたしましょう。」
「あぁ、そうね、ごめんなさい。ついつい嬉しくてw」
私達は、イチカに案内されて、以前も使っていた、大きな食堂に入り、来客用の大きなダイニングテーブルの横を素通りして、嘗て私達三姉妹に使用人の皆で食卓を囲んだ、部屋の隅にある小さい方のダイニングテーブルに座った。
「マリアさんに会えるとは思ってなかったから、すごく嬉しい。そうそう、見てみて、コレ。」
「あ、もしかして、それは。」
「そうそう、ピンク!」
「やっぱり!」
「あなたは幾つになっても、まったく……。」
「そんなこと言うけど、シェラだってメラねえちゃんに会ったら絶対買うでしょ。パイン&オレンジ。」
「メラさん、まだジュース屋さんやっておられたのですか?今度お邪魔しなくてはなりませんね。」
「ほらやっぱりw」
「私はジュースではありませんわよ、メラさんにご挨拶したいと思っただけですわ。」
「よく三人で買いに行きましたね。メラさんのフレッシュジュース屋さんに。」
「マリアさん、今日は泊っていける?」
「えぇ、大丈夫ですが。」
「シェラは?」
「私も、明日の午後の会議に間に合えば、問題ありませんわ。」
「じゃあさ、今日はここに泊まって、明日の朝、皆でメラねえちゃんのお店に行こうよ!」
「それは良い考えね。マリアさんはどうです?」
「はい、楽しみですね。」
「ところでマリアさん、さっきちらっと言ってたけど、ハーコッテで児童施設にいたの?」
「えぇ、こちらを辞めた後は、特に理由があったわけではないのですが、なんとなく懐かしくなってハーコッテに流れ着き、そこで偶然、児童福祉施設でお勤めになられている方と、お知り合いになる機会がありまして、その方のお誘いに応じて、その施設で働くことになりました。」
「そうだったんだ、そういえばミラさんは?元気にしてる?」
「えぇ、元気です。姉も一緒にハーコッテに行ったんですが、彼女はすぐにとある商家の跡取り息子と結婚しまして、今は二人の子供も手を離れて、商家の奥様として悠々自適に暮らしております。」
「そうだったんだ、ミラさんならね、しっかりしてるし、優しいし、きっと良いお母さんしたり、奥様したりしてるんでしょ。今度ハーコッテにも遊びに行きたいな。ね、シェラ。」
「そうですわね、ルドルフ様ともご無沙汰しておりますし、一度お邪魔するのも良いかもしれませんね。ところで、マリアさんは、ご結婚は?」
「はい、私も、勤めていた児童養護施設を運営なさっている、とある貴族のご子息に求婚されまして、御受けしたのがもう27年前になります。娘が一人生まれましたが、娘ももう嫁いでいったので、今はなんだか、気が抜けてしまったような、そんなところです。お二人はご結婚はなされたのですか?」
「私は、ねぇ……。こんな性格だし、少なくとも自分より頑丈な人でもいない限り、なかなか、ねぇ……。」
「それに、私達もなかなかどうして忙しいと言いますか、普通に領主や騎士団長等を務めるだけでも、職務に忙殺される毎日でしょうが、それに加えて、私達姉妹には神獣対策もありますので。些事に捕らわれることが、面倒になってしまいますの……。」
「あぁ、拝見させていただきました、先日の新聞記事。ケイラ様とシェラ様の勇姿。あんなに大きな魔物に、たったお二人で立ち向かう姿、感動いたしました。」
「新聞に載った大きい神獣といったら、アレか、キプロスだっけ。白いサルのお化けみたいなの。」
「そうでしたわね、あれは大きいだけで、大したものではありませんでしたが。」
「そうなんですか?私はあの新聞を見た時、見出しに【剣聖・賢者姉妹またも神獣撃破】って書いてあるのに、もう心配で心配で、気が気じゃありませんでした。」
「あはははは、マリアさん優しい、ありがとうね。」
「私としては、快活ではありましたが、あんなにご本が大好きで、いつもマリアさん、マリアさんと言って、本を読み聞かせることをせがんでいた、理知的なケイラ様が、まさか剣を握って、世界を守る英雄になられるなどと、想像もつきませんでしたけど。」
「あぁ、でもね、確かに剣を握って戦うだけならバカでも出来るかもしれないけど、そのうえで生き残って行くには、多少頭も使えないと、なかなか難しいんだよね。」
「そうですわね、私、他の方と共闘などしたことは御座いませんが、ケイラの理路整然とした立ち回りでないのならば、使う魔法やタイミングも限られてくるでしょうね。」
「お二人とも、とてもご立派になられて、マリアは大変嬉しゅうございますが、あの頃と変わらず、キラ様を大好きな仲良し姉妹のままでおられることに、尊さすら感じます。」
「やだ、もうマリアさん、泣かないでよ。こっちまで貰い泣きしちゃうじゃない。」
「私は別に、この程度の事では動じませんし、ケイラとも仲良しだからではなくて、長い付き合いだから、動きが読みやすいと言っているだけすわ。」
「もう、シェラのツンデレ!」
「ツンデレ!」
「ちょっと、マリアさんまで!?」
「「あははははははははははは。」」
この、楽しい夕食会の後も、話が尽きることはなく、嘗て皆がこの屋敷で生活していた頃は、誰も使うことのなかった、キラが見栄えの為に作った大きな寝室の、大人が4~5人は寝られそうな大きなベッドで、夜更けまで続いた語らいは、笑い声と涙を交えながら、
もう戻らぬ姉の面影を重ねるように、静かに屋敷に響いていた。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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