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第1話「無能令嬢の裏の顔」

華やかな王宮の庭園を、誰もが一目で無能だと思う少女が歩いていた。

ファユ・リン・シェン。名門リン家の三女。表向きは何をやらせても中途半端、屋敷でも周囲に頼られることはほとんどない。今日も母親は眉をひそめ、使用人たちは小声でため息をついている。


「まったく、三女様は何もできないのね……」


誰もがそう思っていた。しかし、ファユの手には小さな薬草袋。庭の片隅で見つけた珍しい薬草の根や葉を、彼女はこっそり観察していた。目に見えない毒の兆候も、匂いでほとんど判別できる。これこそ、彼女が現代から持ってきた知識の賜物だ。


そのとき、護衛の青年・リーが駆け寄る。

「お嬢様、大変です。宮廷で高官の側近が倒れました。毒の疑いがあります。」


ファユは静かに眉を上げた。表向きは無力そうな少女だが、心の中で小さく笑った。

「……面白くなりそうね」


現場に駆けつけると、高官は痙攣を起こして床に倒れている。周囲には慌てる侍医たち。

ファユは一歩踏み出し、匂いを嗅ぎ、薬草の知識を駆使して観察を始める。痕跡は微細だが、彼女には見逃せない。


「……これはアカドキソン草の毒です。誤って食した可能性は低く、故意ですね」


侍医も警備も驚き、宮廷の人々はざわめく。だがファユは平然と続ける。


「犯人は、わざと手袋を触れた痕跡を残しました。狙いは高官ではなく……皇帝の側近を通して、間接的に皇帝に圧力をかけるつもりです」


リーは息をのむ。無能令嬢の顔はどこにもない。そこには、冷静で確かな知識を持つ「薬学の令嬢」がいた。


「よし、私が調合した解毒薬で命は助けられます。急いで!」


誰も気づかぬ間に、ファユは宮廷の闇に足を踏み入れた。表向きは「何もできない令嬢」、だがその裏には、王宮を揺るがす毒謀を解く知恵と勇気があった――。

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