9話
9話
「実は、犯人は李誠です。」
風仙はここに来るまでに何があったのか話してくれた。
――風仙が邸宅を飛び出して1週間後
「そろそろ師匠のところに帰って謝らないと。」
金風山にある邸宅に向かっている途中、後ろから声をかけられた。
「うちへ帰ろう。」
「は?おれはあんたのとこの子じゃないけど。」
「赤子の時にここで拾われただろう?姫琳という男に。実はお前をここに捨てたのは俺だ。当時子供は必要なくてな。だが今お前が必要になった。やって欲しいことがある。うちへ来てくれ。」
李誠は高圧的で気の強い成人の男性でも怯むほどだった。
――何を言っているんだ?この人が血の繋がった親なのか?そんなわけない。怖い。早く師匠の所へ戻らないと。
その場から逃げようと走り出そうとする風仙の首の後ろをつかむ。
「待て。うちへ来ればすぐに姫琳に会えるぞ。お前にはあいつをおびき寄せてもらう。」
断れば殺される。そう思い抵抗せず素直に李誠について行くことにした。
仙李邸という後宮へ連れていかれそこでは娘として過ごすことになった。
李誠は姫琳の師匠だったのだが、自分よりもはるかに優秀な姫琳に嫉妬をしていた。そのため、風仙を攫い利用していたのだ。
そして広間で亡くなった女性は李誠が風仙を脅し殺させたのだった。
「できません。もうやめてください。」
「だったらお前の師匠の姫琳を殺してやろうか。」
李誠のその一言に風仙は怒りと恐怖に震える。ふるふると震えながら目をぎゅっと閉じて女性に術を使った。彼女は喉をおさえて苦しみだす。そしてしばらく床をのたうち回ったあとに息を引き取った。
風仙を犯人に仕立て上げ姫琳を絶望させようという計画だった。
「そんな…。」
「ごめんなさい。こんなことになってしまって。」
姫琳は風仙に真相を聞かされ胸を締め付けられた。何より弟子であり、自分の息子を利用されたことに激怒した。
「許さない。」
ちょうどその時李誠が広間へやってきた。姫琳は李誠を睨みつける。そして床や壁などまわりに火を放った。それはたちまち燃え上がる。
「何をするんだ!」
李誠は必死で水の術で火を消そうとするが火が強く全く歯が立たない。
やがて天井まで燃え始める。
風仙がいる場所が火で囲まれてしまう。
「げほげほっ!」
「風仙!」
風仙は煙で咳き込み床に手をついてしまう。炎が天井を燃やし崩れてくる。姫琳は風仙の元へ走り抱き抱える。
「しっかり反省しなさい。帰るよ。」
「はい、師匠。」
姫琳は風仙を抱え花園とともに仙李邸から去った。