8話
登場人物
姫琳/ヂェン・リン
国で最も優れており、信仰されている仙人。
風仙/フォン・シエン
姫琳の弟子であり養子。
花園/ファー・ユェン
姫琳の側近。
李誠/リー・チェン
姫琳の師匠。
8話
「犯人がわかったのか?」
後ろから高圧的な声が姫琳に向けられる。震える身体で後ろを振り返るとそこには後宮の主がいた。
「姫琳。私だ。」
「師匠!どうしてここに!?」
後宮の主はなんと元仙人で姫琳の師匠だった。名は李誠という。
「久しぶりだな姫琳。もう犯人がわかったとは本当に優秀だな。さすが私の弟子だ。」
「し、しかし!」
「なんだ?」
「いえ……。」
姫琳はまだ風仙が犯人だとは認めたくなかった。彼は少しわがままなところがあり怒られるとすぐに逃げ出す。だけどこんなことをする子じゃない。だとしたら……。
「あなたが風仙を攫ってなにかしたんですよね。」
先程まで嘔吐し怯え、震えていたとは思えないほど、姫琳は恐ろしく冷たい目つきで視線を向け李誠を睨みつける。
「私を疑うのか?私よりも優秀な仙人になり弟子も信者も奪っていき、調子に乗っているのか?たしかにお前は優秀な仙人だよ。だが育てた恩は忘れてしまったようだ。お前の師匠は私だが?悪いガキになってしまったな姫琳!捨てられたお前を育て、仙人にまでしてやったのは誰だ!?」
「……っ!!」
李誠は姫琳の首元をつかみ怒鳴りつける。姫琳は首を締め付けられ呼吸がだんだんとしづらくなっていく。そして反対の手で殴りかかろうとすると花園が李誠を床に押さえつけた。
「やめるんだ。」
「ちっ!覚えていろ…。」
李誠は舌打ちし広間から出て行った。
「大丈夫ですか!」
先程の騒ぎで後宮の娘(女装した風仙)が広間へ駆けつけた。
「風仙!!」
「ほら!彼が風仙だよ花園!!」
花園は驚いたがすぐに彼だと気づき叱る。
「本当に君は!!姫琳様を見てください!君がいなくなってからなかなか眠れず痩せてしまったのです!でも本当に見つかって良かった。」
「花園、ごめんなさい。事件が解決したらうちへ帰るよ。もう出ていかないし師匠の言うことちゃんと聞く。」
「当たり前だ。姫琳様や私、それから君の弟弟子も心配していたんだぞ!」
そう言って花園は風仙を抱きしめた。風仙と花園が抱き合う中、姫琳は1人無言で身体を震わせていた。先程の調査で風仙が容疑者になってしまい姫琳はどうすればいいのか分からなかった。事件が終わったら一緒に帰ろうと言ったのだがもしも本当に犯人だったら……。
姫琳は震える身体で何とか口を開く。
「……さっき被害者の死因を調べていてね。術の痕跡を調べたら君のだったのだけど……。」
風仙は少し黙り込んでまわりに他に人が居ないのを確認すると口を開く。
「実は……。」