6話
登場人物
姫琳/ヂェン・リン
国で最も優れており、信仰されている仙人。
風仙/フォン・シエン
姫琳の弟子であり養子。
花園/ファー・ユェン
姫琳の側近。
李誠/リー・チェン
姫琳の師匠。
6話
――現在。風仙が失踪する少し前。
風仙は18歳の誕生日を迎える。
「誕生日おめでとう。」
「おめでとうございます!」
「ありがとう!!」
姫琳や使用人で風仙の誕生日をお祝いする。姫琳は風仙の元へ行き、自分よりもずっと高い位置にある頭を優しく撫でた。
「ずいぶん成長したな風仙。立派になったな。」
と言うと風仙は頬を染めて少し恥ずかしそうに笑顔を見せた。
その日の夜。風仙は姫琳の部屋で術の書物を読みながら勉強を教わっていた。
「今日は誕生日だからなんでも好きなことをしよう!」という姫琳の言葉に風仙はなんと「師匠の部屋で勉強がしたい。」と言ってきたのだ。
「誕生日なのに勉強とはなんていい子なんだ。」
と姫琳は瞳を潤ませ感動していた。
「今日はここまでにしてもう寝ようか。」
「師匠ありがとう。それと、今日は一緒に寝てもいいかな?」
そう言って姫琳の肩にもたれかかり甘えてくる。
「あれ?風仙は甘えたさんかな?今日で何歳だっけ?18歳じゃなくて1歳だ!いいよ。一緒に寝ようか。」
「そうだよ〜。おれは1歳の赤ん坊だ。おとうさん〜!!布団かけて〜!」
「ふふっ。風仙ったら」
そして姫琳は風仙を自分の隣に寝かせ掛け布団をそっとかけてやる。
「おやすみ。」
翌日。姫琳の邸宅は巳の刻(朝9時頃)に起床し起床後、朝食前に自習をするのが決まりとなっている。自習が終わった者から朝食をとることが出来る。弟子たちは皆自習を終わらせさらに朝食も済ませた。しかし今日は一向に風仙が起きてくる気配がない!!
「風仙!起きるんだ!!」
姫琳は彼の寝ている部屋へ駆け込み、風仙をたたき起こす。しかし彼は呑気に大きなあくびをしながら「やだ。」と一言。そしてそのまま再び布団に入り眠り始めた。
「…っ!!!!」
姫琳はとうとう怒り、眠りこけている風仙の頬を思いっきり叩く。その痛々しい音は部屋中に響き渡り、それと同時に彼は目覚めた。
「いてっ!!」
「昨日は誕生日だったから勉強や起床時間は好きにしてもいいと言った。でも今日はいつも通りに生活してもらわないと困る!弟子全員揃わないと指導できないんだ。君が来ないとみんなを待たせてしまう!さっさと起きるんだ!」
突然声を荒らげた姫琳に風仙は驚きすぐに起き上がる。しかし師匠の怒りは収まらない。
「出ていきなさい!!」
風仙は邸宅を追い出されてしまった。これは初めてのこと。風仙は幼い頃から何かと叱られていたが追い出されることは無かったのだ。そしてそのまま風仙は邸宅へ戻ることができなかった。