1話
登場人物
姫琳/ヂェン・リン
国で最も優れており、信仰されている仙人。
風仙/フォン・シエン
姫琳の弟子であり養子。
花園/ファー・ユェン
姫琳の側近。
李誠/リー・チェン
姫琳の師匠。
1話
国で最も信仰されている仙人、姫琳という者がいた。彼は当時最も信仰されていた李誠という仙人のもとで修行をし、わずか15歳で仙人になった。生まれ持って仙力を身に宿していたのもあるがあまりにも早すぎる。仙人になれるのは早くて30代ぐらいだったため、姫琳は国中を驚かせた。そして姫琳は仙人として多くの民を救ってきた。
姫琳は現在金風山という山で多くの弟子とともに暮らしている。山の山頂にはそれほど大きくはないが美しい邸宅が建っている。彼は国で起こる様々な事件を解決したり、妖魔の退治を行っている。今日は金風山の麓にある村がイノシシなどの動物に荒らされてしまった為村に動物避けの結界を張るために村を訪れていた。
「この結界は人間は通れるが動物は通れないようになっている。効果が切れたらまた伝えてください。すぐに参ります。」
「本当にありがとうございます仙人様。」
村人達が姫琳にお礼を言う。村人達にお辞儀をし村を去る。
山頂の邸宅に戻るとたくさんの弟子と使用人、そして姫琳の側近である花園が笑顔で出迎えてくれた。
「姫琳様。おかえりなさいませ。」
「みんなただいま。」
「さあ、こちらへ」
「ありがとう。」
花園が自室まで付き添う。
「花園、風仙はまだ見つからないのか?」
風仙とは姫琳の一番弟子であり血の繋がらない息子だ。赤子の頃に金風山で捨てられているのを姫琳が見つけ、育てた。少し前に邸宅を飛び出して以来戻って来なく使用人や弟子全員で町や山に探しに行っているが未だに見つからない。
「見つけたらすぐに知らせます。彼は強い子です。心配だとは思いますが待ちましょう」
「そうだな。」
姫琳はここのところ風仙のことが心配でたまらなく、夜も眠れない日が続いている。早く見つかって欲しい。頼む。そうこころの中で叫んだ。
「最近痩せていますし顔色もあまり良くないですね。今日は依頼もありませんし休まれては。」
「そうだね。そうするよ。」
姫琳は自室のベッドに座り目を閉じてため息をつく。しばらくすると部屋の外が騒がしいことに気づく。部屋を出ると町の人々が邸宅に押し寄せていた。押されて転ぶ者もいる。
「皆さんどうしましたか。落ち着いてください。」
花園が必死で声を張るが大勢の人々の声にかき消される。人々は大声で叫ぶが大勢で喋っているため声が重なり合い何を言っているのかよく聞こえない。花園は困り果ててその場で頭を抱えながら立ち尽くしてしていた。その様子に耐えられず姫琳は花園のもとへ駆け寄ると深く深呼吸をし、声を張り上げる。
「皆さん、すみません。1人ずつお願いします。よく聞こえません!」
普段めったに大きな声を発しない姫琳が声を張ると皆驚いて一斉に黙る。先頭にいた男性が叫んだ。
「仙李邸で女性が殺されたんだ!」
――殺人事件!
姫琳は目を見開きすぐに叫ぶ。
「花園すぐに向かうよ!」
「はい!」
姫琳と花園は弟子を数人連れて仙李邸へ向かった。仙李邸とは後宮のことだ。