表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

黒い安息が如く

プールに浮かぶ原罪

作者: かぐつち・マナぱ(原案)黒い安息日(執筆)


母はよくうなされていた

寝言で叫び

飛び起きることもしばしばあった

父の死と、その罪を知った日から


父は詐欺師だった

逃げ足は速かったらしい

その遺伝だろうか

娘の私はプールで速さを証明した


スポーツ推薦で

全寮制高校に通う私は

授業料が免除され

充実した学生生活を送ることができた


私は卒業後も実家には帰らない

トレーニング設備が整った

海外の大学へ留学することになっている

母をひとり、この国に残して


私は残酷だ


父の罪でいまだマスコミに囲まれる家を捨て

ひとりで残る母を生贄に逃げようとしている


父は残酷だ


多くの人を詐欺で騙し逃げようとした罰を受け

海で浮かんでいる所を散歩中の人に発見された


母は残酷だ


父の残した保険金を被害者の弁済にあてず

その全てを娘である私の未来につぎ込んだ



私は知っている


母は罪を犯し、罰を受けようとしている

私のために

私の未来のために

だから家を出ないのだ

あえて世間の冷たい視線に耐え

夜はうなされ叫ぶのだ


父は知っていた


関わってはならない人を陥れ

報復される未来を

生命保険の契約書を紙飛行機に折り

ひとこと残したメッセージが遺書となった


「お前たちはこの金で飛べ、すまん、さよなら」



寮のカレンダーで卒業までの日数を数えていると

ルームメイトが私にお弁当と手紙を手渡した


母が来ていたらしい

私はベランダに身を乗り出し、その姿を探したが

走り去るタクシーが見えただけだった


手紙に添えられた写真

観覧車の前、父が写した母と幼い私


そして、こう書かれていた



「泳ぎなさい、浮かびなさい、それがあなたの罰です」



挿絵(By みてみん)

AI illustration by かぐつち・マナぱ

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
【任侠兄弟盃編】の作品とはそういう繋がりがあるのですね。 シリーズで拝読すると趣が異なるように感じます。 700文字に満たない物語の中に「生きる」ことの奥深さを感じました。 タイトルも秀逸ですね! 自…
これは名作ですね! サラッと読むには味わい深すぎます(*´艸`*)
私はラジオ大賞の全キーワードと、安息日様の前作からイメージしただけで、やはり素晴らしいのは根源たる安息日様ですわ!(*´▽`*)<私ではこの説得力が無理ですもん♪ 特に母親が罰を受けようとする描写に…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ