入学ですよ蝿の王
力を取り戻すとは言ったが方法が分からない。どうしたものか。
「力を取り戻す方法なのだが何か思いつかないかメイドール?」
「ドール・バアルです」
何を言っているんだこいつは
「じゃあ...ドール、何か良い方法はないだろうか」
「学園に行くのはいかがでしょうか?」
勝ち誇ったような顔をしてこちらを見る、またグーでいってやろうか
「ベールゼ様を打ち取った勇者の功績の内の1つに学校を建てたという話があるのですが、丁度こちらの街にその学園がございます。」
勇者の建てた学園、なんとも心が踊るではないか。
「良いな、それにしよう」
「ですがこちら基本的に15歳以上が通う学園ですが大丈夫でしょうか?」
15歳?そういえば我の肉体は今人間換算で8歳位であったな。
「問題ないであろう、飛び級という物だ。入学試験さえ突破すればよいであろう。」
「ではその様に。」
勇者の建てた学園、期待に胸が膨らみその日は一日中小躍りしていたらしい。
そして迎えた試験日、ワクワクしながら待っている我を周りがジロジロと見てくる。
羽も触角も魔術で隠しているから問題ないはずだが
「おいあれって」「どうみても10歳以下だよな」
あぁ、そう言うことか。人間は見た目で全てを決めるのが悪い所だな。
そう感じていると試験官と思わしき人物が前に立つ。
「諸君!今日はよくぞ集まってくれた!我が偉大なる学園[アースカディア学園]へ!」
随分と物々しい話し方をするものだ、見てて爽快だな。
「ここでお喋りを続けても良いのだが、諸君はそれでは退屈だろう!早速だが実技試験から行う!」
実技試験?そういえばドールからは何も聞いていない。
「ベールゼ様なら問題ございません」などと言っていたか。
そんなこんなで会場まで連れてこられたが何をするのか分からん。
「では、前の者から順に始めるように!」
始まった、何をするのかすら分からずに
列の先頭に立っていた少年が前に出て杖を構える
「火の精霊よ、我に力を!その業火にて汝敵を打ち払わん!初級炎魔術[火球]!」
杖から発生した魔方陣から炎が飛び出し10m先の的に命中した。
「合格だ!次!」
なるほど的当てか、確かに魔法の精密制を計るならこれが一番良い。だが的が近くないか?
それよりも皆持っている杖が小さい、まるで小枝ではないか。これでは1人だけ大きな杖を持ってきた我が馬鹿みたいだ。
「おい次のあいつって...」「あの賢者の子孫の...」
ん?どうやら有名人のようだ。
そこには金髪の美しい女性が立っていた。
「氷の精霊よ、契約に基づきその力をここに示せ!上級氷魔法[氷の槍]!」
詠唱と共に現れた巨大な魔方陣から氷の槍が飛び出し的を貫いた。
「合格だ!流石勇者パーティーの賢者の孫だな!」
「いえ、私はあくまで全力を尽くしただけです」
勇者パーティーだと!?一瞬驚いたが周りに人がいる、グッと堪えた。それにしてもあの賢者の孫とは、それに将来性もありそうだ。
周りからも歓声が上がる、自分とは関係ない筈なのに少しだけ嬉しい気分になるぞ。
そんなことを考えてニマニマしていたら
「次!そこの小さいの!お前だ!」おっと自分の番だ。
周りの目が痛い、クスクスと笑われている。呼ばれているのに気付かなかっただけでこの仕打ちとは...
「おい!的をもっと近くに持ってきてやろうか!」
何処からヤジが飛ぶ、そして大勢の笑い声、どうやら馬鹿にされているらしい。
とりあえず先ほどの賢者の孫と同じ上級魔法で良いだろう、我の力を少しだけ見せてやる。
「詠唱破棄、上級蟲魔法[蠍の尾]」
魔方陣から蠍の尻尾が伸びてきて辺りの的を凪払う。
シーンと辺りが静まった、全員がこちらを見ている、何故だ?賢者の孫と同じ上級魔法だっただろう。
「...はっ!?ぁあ、合格だ!次!」
とりあえずは合格らしい、周りがこっちを見ている、流石に気まずい。
どうやら入学書類ば後日自宅に届くそうなので誰とも会話をせずに足早に帰路についた。