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目覚めました蝿の王

それは死闘だった、互いの全力をぶつけ命を削り心から本気になった。

そして我は敗れた、我[魔王ベルゼブブ]は敗れたのだ。

「あぁ...体が動かない、体力が尽きたか...」

勇者がこちらを見ている。

「悔しいな、最後に立っているのは我だと思っていたのだが...」

意識が薄れる、音も聞こえない、だが心は何故か晴れやかだった。

そして暗闇、我は死んだのか。

「魔王様、起きて下さい」

聞き覚えのある幻聴が聞こえる、体が揺さぶられる。これが走馬灯と言うものか。

いや待て、体が揺さぶられる?走馬灯とは触覚に反応するものか?

「魔王様!魔王ベルゼブブ様!」

名を呼ばれる、体を強く揺すられる、断言できる、これは夢でも走馬灯でもない!

とっさに目を開け体を起こす

「何が起こっている?」

目に飛び込んできたのは民家の中でこちらを見ているメイド服の女だった。

「おはようございます魔王様。随分とお寝坊でしたね。」

訳が分からない、だが目の前の女には見覚えがある。

「貴様、もしかして[メイドール]か?」

「はい、メイドールでございます。」

驚いた、メイドールとは我が魔王の頃の側近である。

「再開を祝したい所だが、まずは状況確認を...」

小さな手、見覚えのない手、これは誰の手だ???

「メイドール!鏡を持ってこい!」

慌ててメイドールへ指示を出す。

「そう言われると思い用意しております」

なんと優秀な部下だろうか、急いで鏡に自身の姿を映す。

「なんだ...これは...」

そこに映っていたのは少女だった。紫色の髪、そこから生えた2本の触角、背中には小さな蝿の羽。

「メイドール!どうなっている!」

「はい、お可愛いと感じております」

違うそうじゃない、ふざけているのかこいつは。

「説明しろ、メイドール」

「承知しました」

とりあえず先ほどまで横になっていたベッドに腰を下ろす、まずこのベッドがなにかすら分からないのだが

「魔王様は勇者との戦いに敗れ、息を引き取りました。それはご存じですね?」

「ですが魔王様の魂は消えなかった、あくまでも肉体が死しただけだったのです。」

「ですので魔王様が復活を遂げるまで側で見守っておりました。」

ふむふむなるほど、いやまて分からん。

「復活と言ったか?我が?」

「だとしたらこの体はなんだ?そしてここは何処だ?我の根差していた城ではなかろう。」

「そちらの体は私が用意させていただきました。魔王様の魂は酷く弱っていた為に適合する体はそちらの少女の姿しかなく...」

なるほど、それなら納得がいく。1つの謎を残して

「だが何故少女なのだ?我に性別など無かったはずだが。」

「そちらは私の趣味でございます。」

部屋が揺れる、思わずグーで殴ってしまった。

「姿に関してはそれでいい、だが...」

「分かっております、ここの所在ですよね?」

遮られてしまった。

「ここはレインタウン、かつて勇者が旅立った街にございます。」

は?意味が分からない、何故そんなところに我はいるのだ?

説明を受けた筈なのに謎は深まるばかりだった。

「ところで魔王様。」

「なんだ?」

「復活を成された今、どの様に致しましょうか。」

そういえば目的がはっきりしていない。

魔王としての復活?いや、我は敗れたのだ。敗れたにも関わらず復活など無様にも程がある。

ならばこのままなにもしない?まあ無様を晒すよりかはマシだろう。だが

「力を取り戻す、この姿のままでは流石に恥だからな」

「では魔王としての復活は?」

「しない、魔王ベルゼブブは敗れたのだ。復活して死んでないから無効だと宣うなど恥でしかない。」

「左様でございますか」

今一瞬メイドールが微笑んだ気がした。

「ならば魔王ベルゼブブ様とお呼びするのは不味いですね。なんとお呼びしましょうか?」

確かにそうだ、だが元の名とかけ離れては自分の名だと気付かない、下手に記憶があると厄介だな。

「ベールゼ...」

「はい?」

「ベールゼだ、我が名は[ベールゼ・バアル]!」

名も決まった、目的も立てた、ここから我の新たなる世界が始まるのだ。

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