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~本音~

作者: チャロたん2

数えきれないほど悩んだ。

光を宿さないその瞳にうつりたくて、必死に言葉でひきとめた。

だけど、私はどうすればあなたを救えるのか、答えはまだみつからないままだ。


私は高校二年生、中学三年生の弟がいるお姉ちゃんだ。

普通なら学校や部活から帰ってきて、習い事に行ったり、課題にとりくんだりするのがたいていの学生の放課後だと思う。

そう、普通なら。

「ただいまー」

「おかえり」

家へ帰ってくると、真っ先に出迎えてくれるのは猫と私の弟。

弟が不登校になって、もう少しで四か月がたつ。

私の弟は、中学一年のころからクラス内のいじめに始まり、今や学年ほとんどの人に嫌われるほどにまで達してしまっていた。

私自身も小学生のころにいじめを受けたことがあり、それがきっかけで中学受験をして、今に至るのだが。

約二年半、心に傷を抱えた弟と過ごすうちに、私の考えもだいぶ変わった。

最初こそ、弟には良い高校に行ってほしくて出席日数ばかり気にするようになり、ほぼ口論になっていた。

だって、本人が高校に行くと言っているのだから。

受験をするのなら、内申点は必要不可欠。それをこいつはわかってないんだ、と。

だけど、弟はある日からぱたんと学校に行かなくなった。

たくさんたくさん、弱音を聞いた。

その中に明るい言葉なんて、一言もなかった。

友達なんていらない。人間が怖い。男も、女も全員。

彼がつらそうに吐く言葉は、いつも同じ内容だった。

そして、お母さんは私によく言う言葉があった。

『小学生のときは明るくて友達も多かったのになあ。本当は、本人もそうやって青春謳歌したいはずやのになあ。私の叔父さんが亡くなったんは、自殺なんよ。私は実際に首をつった現場をみてしまったからなあ…いつかあのこもそうなってしまいそうで、怖いんよなあ…』

そうつぶやくお母さんの顔もまた悲しそうで、なんだか泣いてしまいそうだった。

笑顔が家族のなかで減っていく中、私は決心した。

私まで暗くなってどうする、と。

一番つらいのは弟で、それを金銭面てきにサポートするのは親。

なら私は、精神面でサポートする。

だって、私は家族の笑顔がいちばん大好きなのだ。

その日から、明るくてスキンシップの多い、今までの私とは少し違った姉になった。

必要もないのに、だきついたり手を握ったり。

会話も増やした。その内容は明るい、未来のもの。

一週間後でも、一か月後でもいい。とにかく前のことに意識を向けさせた。

今までと少し違うとはいえ、もとから私の性分にあっていたみたいで、さほど無理をしているという自覚はなかった。

そんな日々が続く中、弟と二人きりで話していたとき。

「俺ほんまは命絶とうとしたことあるんよ」

恐れていた言葉を言われた。

「へえ」

ここで変に反応してしまってはだめだと、本能が思った。

「ロープ使おうと思ったけど、身近になかったからあきらめた」

そのとき私は初めて、弟がそこまで追い詰められていたのだと自覚したのだった。

最近になって笑顔が増えてきたから、安心してしまっていた。

だって精神病患者がきれいさっぱり心の病を忘れるなんてこと、ありえないのだから。

「…今は?」

「今、は」

まだ生きようかな。

その言葉をきいたときに、はからずも涙があふれてしまいそうになった。

誰よりも怖がりで、傷つくことを誰よりも恐れるような、根は優しい弟。

そんな彼が、自ら傷つくことまでも考えていたのだ。

その事実が悲しくて苦しくて、だけどぎりぎりでふみとどまってくれたことが嬉しくて。

最近の私なりの態度が、報われたようなきがした。

ここで泣いたらだめだ。そうしたら、私が築き上げてきたものが、壊れてしまう。

「あんたは悪口言わんよな、暴力もせんし」

「え、そうかな」

たしかに友達にも家族にも、悪口を言ったことはあまりない。

悪口は自分が言われるのが嫌だから言わないだけであって、愚痴はよく言うけれど。

「人間ほとんど悪口言うやつらやから、あんたはそういうとこ誇った方がええと思うよ」

弟の中で、私が大嫌いな人間の範囲内に入っていなかった。

私のことは、信用してくれている。

人間不信の弟にそう言われたことが無性に嬉しくて、自然と私の口角は上がっていた。


学校の休み時間。

おふざけ男子グループが、私の席の後ろで円になってしゃべっていた。

私が友達と話していると、聞き捨てならない言葉が聞こえてきた。

「つーかさあ、いじめっていじめられる側にもそれ相応の理由があったからいじめられたんだろ?ならいじめられる側も悪いやん」

「それな。なんで言ったほうが悪いってなるんやろ」

「そういや○○、あっちの学校でも元気にしとんかな」

「いや、また不登校になってんじゃね?」

ギャハハと汚い笑い声が響いた。

はあ?

私はというと、もうほぼぶちきれる寸前だった。

なんにも。なんっにも知らないくせに!

人間関係と勉強と受験と将来と。

悩むことはたっくさんあるけれど、それでも自分なりに学校に行かずに、自分の時間を確保してもがきつつも真剣に今と向き合おうと思っている人だっているのに。

他人と話すだけで手が震えてしまうほど苦しんでいるのに。

なんで?なんでこんなやつらは学校に行けて、授業受けて単位とって、中学校なら大人たちが働いて得たお金の一部を使って給食まで食べれて。

むかつく。むかつく!自分の大切な人がそうなってても、同じこと言えるのかよ!!

がたっと席をたって思いきって後ろを振り向こうとしたとき。

『あんたは悪口言わんよな、暴力もせんし』

弟の、少し光が宿った瞳と、声変わりで変わった低い声を思い出した。

目をみひらき、ぼうぜんと拳をみつめる。

たぶん殴るまではいかなくとも、罵倒をあびせようとはしていたかもしれない。

『あんたはそういうとこ誇った方がええよ』

……うん。そうだね。

ははっと乾いた笑いがでた。

あんたが嫌いな、人を傷つける人になろうとしてた。

「○○ちゃん?」

突然たちあがった私をみて、友達の顔に疑問符が浮かぶ。

「ううん、なんでもないよ」

笑顔を浮かべ、ガタンと椅子に座りなおした。


私は高校二年生、中学三年生の弟がいる。

「ただいまー」

「おかえり」

今日も今日とて、私の大好きな人たちが出迎えてくれる。

私が、スキンシップも増やした、大きな理由。

もしもまた、弟が自分の命を絶とうとして。

冷たい無機物を手にとったそのときに、人肌のあたたかさを思い出してほしい。

そして、はっと気づいてほしい。

死ぬということは、もうあたたかさを知れないのだということを。

「わーあったかー暖房でもつけよったん?」

「んなわけないやろ」

今日も今日とて、年甲斐もなく弟に抱きつく姉を、弟はどんなふうにみているのだろう。

くっついた背中が、あたたかい。

もうそれだけで嬉しくって、密かに笑顔になる私の顔を、弟は知らないだろう。

知らなくっていい。きづかなくっていい。

だからどうか、幸せになって、生きてね。

私の大好きな弟。



こんにちは!

いや~小説家になろうは小説をかくところなんですけれども、おもいっきりブログみたいになってしまったな。。。

この物語はノンフィクションです。主人公は私。

ずっと胸の内で思っていたことを、いつか形にしてまとめたいなと思っていたので、いい機会になりました。

よんでくださったみなさん、ありがとう!

私も私なりに、いろいろ考えてはいるんです(笑)

でも、私の弟のような人たちも、社会にはいっぱいいるんだということを知ってもらいたいです。

その内容に悲惨さの違いはあれど、本人が傷ついているなら、もうそれはどっちのほうがつらいだとか、そういうのを比べるのは意味がないと思います。

ひきつづき小説のほうも執筆していくので、そちらもぜひ読んでくれたらうれしいです!

ではまた!

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