特技、男装。
橋本さんね。甘え上手な子だったと印象はあるけれど。
「どう思う?これ。」
事務所内にいたスタッフにパソコンの画面を見せる。
「まじ!A◯Bじゃん!すごいチャンスですよ!これ!是非受けてほしいです!」
「チャンスだと思うし、新しいファンも増やせる可能性もあるんだけど、ねぇ…。」
気が進まなかった。でもグループの知名度を上げる絶好のチャンスを逃すわけにはいかなかった。
「慎重に社内で話を進めさせていただくので、お時間いただけますでしょうか。」
正直男装企画はたびたびSNSで話題になっているけれど、そこまで大きくは取り上げられないだろうし、男装のクオリティよりもメンバー間の間接的な百合を求めているファンも多いだろうと思う。
自分たちがやってることは本物の男性よりもかっこいい男性を演じて、ファンの人たちを元気付けることだから、A◯Bの人らと考え方は合わない。
自分たちのパフォーマンスのクオリティやファンに寄り添うという面ではどこの事務所にも負けないと思うし、唯一無二だと思うけれど、どうやったって使えるお金や業界のつながりが少ないうちの事務所。
A◯Bがみたいな大手が男装の界隈に入ってきて潰そうと思えばうちなんか余裕で潰せる。
下手に関わって後で矛先がうちに向いたら、私はメンバーやグループを守っていける自信がなかった。