表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

クチナシの芳る海岸で

作者: 若槻未来

 その日僕は、クチナシのようなその少女に出逢ったんだ。

 麦わら帽に白いワンピースのその少女は、黒い髪をなびかせながらこう言った。


「あなた、神様って信じる?」


 突然のその言葉、僕は彼女が何を言っているのか分からなかったけれど、何とか答えを絞り出した。


「信じない。科学的に存在が証明できないじゃないか」


「……月並みな答えね」


 彼女は退屈そうに淡いくちびるを尖らせる。


「はあ?」

「近頃は本当、そんな面白くない人間ばっかり。やれ理屈がどうの、科学がどうの、ご都合がどうのってさ。もっとロマンを求めなよ、人なら」

「しかし、現実問題そうじゃないか。理屈で証明出来ることが認められるのが人の社会だ」

「ええ、確かにそうね。だけど神様だの妖怪だのにも理屈はあるの。それは、あなたたちがまだ『理解できない』理屈なのよ。観測しえないものを『ありえない』としているだけ」

「……」


 だったら君には分かるのか、と聞きたかったが、何となくそれは辞めておいた。

 しかし彼女はつまさき立ちになり、僕の顔を覗き込んでこう言った。


「だったら君には分かるのか、って顔ね?」

「……なぜそれを」

「分かるよ。だってあたし、神様だから」


 そう言って彼女はにかっ、と口の端を上げる。


 突然、彼女の翼に真っ白な羽が生えた。彼女はその大きな翼を羽ばたかせ、「うふふ、うふふふ」と笑いながら、遠い空に飛び立って行った。


「……いるとこには、いるもんだな」


 腰を抜かした僕は、雲の先に見えなくなった彼女の影をいつまでも眺めていた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ