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梟屋

アーシアと別れ、シェナは熱くなった顔を夜風に冷ましながらロベルトが手配した貸部屋『梟屋』に向かう。

街はずれの林の入り口に一軒家がポツリと明かりを灯している。


「あれか」


思ったより、時間が過ぎたため急ぎ足になるシェナ。

近くと、軒下に丸い二羽の鳥が寄り添う木の看板が見える。

明かりに照らされているドアを開けるとカランカランとベルの音が鳴る。


「あら、いらっしゃい」


出迎えてくれたのは、ふっくらとした体の初老の女性。鳶色の瞳、白髪混じりの茶髪を三つ編みにしている。

その彼女の背には白と茶色の羽根の翼。

鳥人か。

よく見ると、首の周りにもフワフワモコモコとした羽毛を纏っている。


「あなたが、シェナちゃんね」

「え、あ、はい。すみません遅くなってしまって」


初対面でちゃん付けは少し気にかかったが、深夜近くに尋ねて来たことを詫びるシェナ。


「あら、大丈夫よ。ロベルトさんから話を聞いていますから。それより外寒かったでしょ?さぁ、中にどうぞ。今温かい飲み物でも」

「あ、お構いなく、大丈夫です」

「あらあら、若い子が遠慮しちゃダメよ?」


パタパタとシェナの元へ歩み寄りシェナを『梟屋』に招き入れ、椅子に座らせる。

中は暖炉の炎で暖めてられ、肌寒い夜の風で冷えていた体をじんわり暖めていく。


「はい」


そっと湯気が立ち上るマグカップをシェナに差し出す女性。


「あ、いただきます」


反射的にマグカップを受け取るシェナ。

マグカップの中身は温めたミルクだった。

折角なので一口飲むと、暖かく少しトロッとした口当たりにほんのりハチミツの甘さ、そして微かな香辛料の香りが身体中に染み渡る。

ホッと息をつく。


「美味しい?」

「はい」

「そう、良かった。私はこの『梟屋』の主人の妻でココロって言います。よろしくね。シェナちゃん」


目尻を下げふんわりと朗らかに笑うココロさん。

主人の妻と言うことは家族で経営しているのかな?

そんな事を考えながらもう一口ミルクに口をつけていると、


「ココロ」

「あ、はーい」


部屋の奥から男の人の声が聞こえココロさんを呼んだと思ったら、ココロさんの首が、


ぐりん。


と180度半回転した。


「ブッ、ファ!?」


いきなり目の前で体は正面なのに笑顔の顔が半回転し後頭部に変わった事に口をつけたミルクを吹き出しそうになるシェナ。


「部屋の準備出来たぞ」

「あら、アナタ。ありがとうございます。こちらも、もう来てますよ」

「ああ。それと、ココロ。初対面でいきなりソレはやめろ。住居者、咽せてるぞ」

「え?あ、あら、ごめんなさい!シェナちゃん」


咽せるシェナを見て慌てて介抱するココロ。


「い、いぇ。ケホッ、大丈夫、です」

「本当にごめんなさい。シェナちゃん。私、梟の鳥人だから、たまに癖で首を回しちゃうの」


ココロの後ろで呆れ顔の初老の男性。


「家内が済まなかった」


大分、落ち着いて来たところで、初老の男性が話しかけきた。

ガッシリとした筋肉質な体に金色の瞳の鋭い眼。白髪混じりの短髪黒髪。

そして、背には黒色の翼。

だが、よく見ると、左の翼が真ん中辺りで切れている。

首の周りの羽根もまるで鎧を思わせるような鈍い光沢を放っている。

フワフワした雰囲気のココロさんとはまるで真逆な雰囲気の人だ。

なんか、威圧感がある人だ。


「私が、この『梟屋』の主人、ゼノン・クロッカスだ」

「シェナ・ミツキです」


『梟屋』の主人のゼノンに頭を下げる。


「・・・話はギルドのロベルトから聞いている。すぐにでも、部屋に入れる」

「あ、はい」

「ココロ、案内を」

「ハイハイ。さぁ、シェナちゃん。こっちよ」

「え?あ、お世話になります」


さっさと部屋から出て行こうとするゼノンに不信感を抱きながらももう一度頭を下げるシェナ。


「ん」


ゼノンはそれだけ言って部屋を出た。


「ごめんなさいね。シェナちゃん」


部屋を出たゼノンを見送って、ため息をつきながら、申し訳なさそうな顔をするココロ。


「いえ。大丈夫です」


こちとらギルドから謹慎を受けた身。

無条件に受け入れられるとは期待していない。


「じゃあ、行きましょうか」

「はい」


ココロについて行くシェナ。


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