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「・・・はぁ」
シェナを見送り、アーシアとディーノもその場を離れる。
借家への帰り路を歩きながら、小さくため息を吐くアーシア。
「わざとでしょう」
「ん?なにが?」
「とぼけないで。
貴方、シェナが絡まれるのを見て、わざと仲裁したようなフリをして、あのジョニーと言った新人シェナに嗾けたんでしょう」
隣で佇む夫を横目で見る。
「アラ、バレた?」
夫はイタズラを成功させた子供みたいに笑っている。
「なにがバレたよ」
呆れるアーシア。
「喧嘩をして負傷者が出れば、ギルドは暴力事件として処理する。不用意に暴力事件を起こしたギルドメンバーは軽くて降格処分、最悪の場合、強制脱退になるのよ」
アーシアが咎めるようにディーノを睨む。
元々王都から離れ荒くれ者が多いこの街。大きいなり小さいなりのイザコザが起こる。
「けど、公然前での善良的な賭け『バトル』なら、ギルドは咎めない」
アーシアの睨みに怯まずに飄々と笑うディーノ。
そう、ギルドはイザコザで起きる喧嘩や暴動を敢えて賭けを公認化させることで街の治安を保っている。
ただの暴力なら咎められるが、賭けごとにすれば街の一種の娯楽になる。
ギルドで定められた規定はあるが、実際、力試しとして『バトル』の賭けを副業にしている者は少なくない。
「まあ、多分シェナは勘付いていたでしょうね。あの子聡いから」
「だろうねー。・・・・気が付いていた?」
「あの雑な気配?」
ディーノが言っているのは先程感じ取った視線。
シェナとジョニーの『バトル』が始まってからずっと感じていた殺意に似た視線。
「あんまりにも散漫とした殺気だったから誰のモノかは判らなかったけど、明らかにシェナに向けられていた。心当たりある?」
「・・・・シェナは恨みを買う事はしないけど敵を作りやすい子だから」
深くため息をつくアーシア。
シェナはその生い立ちと性格故に何かとからまれる事が多々ある。
シェナを妹のように思っているだからこそ、シェナの性格は理解している。
しかも、シェナはそれを自覚してる上で発言行動している。
小生意気で可愛く思う反面、アーシアは姉心で心配が絶えない。
「君、本当にシェナの事大好きだね」
そう言って、さり気なくアーシアの肩に片腕をまわし肩を抱き歩くディーノ。
「少なくとも、貴方よりもシェナの方が大好きよ」
「ヒドイな」
苦笑するディーノ。
眉をひそめ、不機嫌そうな顔をするがさっきよりも人の姿が見えないのでディーノの腕を振り払わず、一緒に寄り添って歩くアーシア。
「ちょっと妬けちゃうな。折角、君の大好きなシェナを助けたのに少しは褒めてくれてもいいんじゃない?」
「やり方が強引なのよ」
「でも、あの場で俺があからさまにシェナの味方に着いたら色々面倒だったからね。ほら、俺も色々と敵を作るタイプだから」
「性格が悪いからでしょ、ッ!」
言葉の途中でアーシアの声が途切れる。
ディーノが、アーシアの三角の右側の獣耳にそっと口を寄せたからだ。
微かに右耳に感じるディーノの吐息にアーシアの獣耳がビクビクと震える。
「そんな、性格の悪い男の奥さんは、誰だ?」
普段より低く艶のある夫の声に思わず顔を赤らめる。
「・・・・馬鹿」
顔を赤し、不機嫌そうに悪態をつきながらペシっと、尻尾で夫の脚を叩く。
「・・・・ククク」
そんな愛妻にディーノは声に出さないように笑う。
嫁の尻に敷かれてはいるが、たまに主導権を握っている夫だった。
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